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【2019年11月20日・未来のBUTAI #4】大企業向けコンサル経験者と語り尽くす、大企業との事業開発を成功させるためのコツ

浅草橋のインキュベーション&コワーキングスペース『BUTAI(ぶたい)』では、イノベーター同士が出会える場を提供すべく、毎週水曜日の夜にイベントを行っています。

第4回目は「大企業との事業開発」をテーマに、11月20日19時30分よりイベントを開催しました。

近年、グローバルな競争が激化するなか、多くの企業が組織外の知識や技術を積極的に取り込む「オープンイノベーション」の取り組みを進めています。スタートアップ企業にとって、大手企業との協業は様々なビジネスチャンスにつながる可能性がある一方で、実現させるためにはまだまだハードルが高いのが現状です。
お互いwin-winな関係で成功させるために、大企業をどのように”ハック”していけばよいのでしょうか。

ゲストスピーカーには、大企業向けコンサルティングに10年以上携わり、「大企業をどうやって意思決定させるか」に尽力されてきたお二人をご招待。元NRIの弊社CEO小林も交え、ディスカッションしました。

櫻井 亮氏
株式会社tensoX CSO

日本ヒューレッド・パッカード、いくつかの起業支援等の経験を経て、2007年よりNTTデータ経営研究所。デザインコンサルチームのリーダーを努める。
2013年よりデンマークのデザインファーム Designit Tokyoの代表取締役社長に就任。デザイン経営を啓蒙。
2015年1月より独立しGOB-IP社を創業。共同代表としてシリアルアントレプレナーを実践し、後進育成を実施する。
2019年4月デジタル時代の混迷を斬り拓くための企業tensorX(テンソアエックス)社を創業。最高戦略責任者に就任。

新しいコンセプトでの小さな起業を複数経験。また、現在は大企業の変革・デジタルシフトを促進させるリーダーシップ開発に取り組んでいる。

15カ国30都市の企業と交流した経験を活かし、現在もシンガポール、スウェーデン、マレーシアなど複数の先進企業と協業を実施。HyperIsland Master of Arts Digital Management プログラム履行。

寺田 知太氏
インクルージョン・ジャパン株式会社 取締役

1975年生まれ。京都大学工学研究科機械工学修了。野村総合研究所にて、情報通信・メディア領域における戦略立案・新規事業コンサルティングに従事。その後、英オックスフォード大との日本の49%の労働の人工知能による代替可能性の共同研究や、スタートアップとの協業による業務デジタル化支援に従事した後、インクルージョン・ジャパン社に参画。著書『誰が日本の労働力を支えるのか(東洋経済新報社)』、京都大学デザインスクール 非常勤講師(2013~2019)。

■主な実績
2016年4月~:NRIハッカソン、MUFG FinTech Challenge、セブン銀行 ATM Open Innovationなど大企業とスタートアップの連携による事業創造の仕掛けの立案から運営、連携後の導入実務に従事。
2014年10月〜:2030年研究室において、英オックスフォード大学との日本の労働力の人工知能による代替可能性の共同研究や、2030年の未来シナリオプランニングをリード。
2010年10月~:システム開発や新サービス開発に、デザイン思考アプローチを取り入れることによる組織改革のファシリテーター業務を遂行。
2008年6月~:バイサイドでのデューデリジェンス業務、地方企業におけるバランスシート見直しによる事業再生支援業務に従事。
1999年4月~:ブロードバンドインターネット、デジタル放送についての技術・市場調査を通じて、クライアント企業の事業開発を支援。

まずはアイスブレイクとして、3人の自己紹介と馴れ初めが語られました。それぞれが野村総合研究所(NRI)、NTTデータという大企業に属しながら、どのように出会い、仲が深まっていったのか。そして、長く勤めた大企業から転職を決意したタイミングなど。

続いて、参加者からの質問を募る形式でディスカッションが始まりました。

ここでしか聞けないリアルなオフレコトーク満載のイベントとなったため、詳細をレポートできないのが残念ですが、大企業と協業する際に3名が実際に活用しているノウハウ情報を項目ごとにお伝えします!

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1. 情報収集のしかた

まず、新しいクライアントを攻略する場合、情報収集からはじめます。そのやり方として、googleの検索で、次のように進めていきます。
業界キーワード go.jp filetype:pdf
こうすることで、その業界の、現在、最新のまとまったレポートなどがいっきに手に入ります。なぜかというと、政府は白書などその業界の統計や、現状、今後の課題、政府の方針など豊富な資料を公開しているためです。また、filetype:pdfとするのは、PDF化されたファイルだけを絞り込むためです。Webは多種多様なメディアやブログがあることが魅力ですが、一方で、情報発信が簡単になったことで、単純にWebサイトの検索からは質の良い情報を見つけるのは難しくなりました。PDFを見ることで、そこには、一手間加わった、質の良い情報に簡単にアクセスすることができるのです。


2. 競合他社の情報を仕入れておく

大企業にアプローチする際に意識していたこととして、「本命企業には最後にアプローチする」ということでした。例えば、本命の企業の他に同業他社が5社あるとすれば、先にその5社にアプローチしておき、情報を仕入れておく。
企業は競合の動きが知りたいものなので、「そういえば他社はこんなことを言っていましたよ」と本命企業に軽く伝えるだけでも効果があるということでした。

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▲ホワイトボードで説明を始める寺田氏

3. 大企業の組織構造を知っておく

新規事業のタネを探す部署と、本事業の部署があり、前者は新しいものを探しているが予算がなく、後者は予算はあるが新しいものは探していない。そして基本的に、昨年度に決まった予算以外のお金は使えないことを知っておいたほうがよいとのこと。

それらをふまえ、もし最初にコンタクトした担当者が「合わない」と感じても、アプローチ先は事業部だけでも数十もあるので、異なる角度から何回でも攻めていけます。
また、目的をはっきり言うのも効果的です。例えば、「”この企業と組んだ”という実績がほしいので、仕事をください」とお願いするなど。そうすることで、時間を無駄にせず、Win-Winの関係が作りやすくなります。

4. 予算や、社内の稟議のあげかたを知らない担当とは話をしない

時間の無駄にならないよう、早い段階で予算を聞いておくのも大事です。知らない場合は、キーマンではないと考えた方が良いかもしれません。また、担当者が1、2人来るのかと思いきや、多部署からも参加者が加わり、10人近くの人が参加するMTGとなる場合もあります。そういう場合は、それまでのコンタクトしていた人以外に、よく質問してくる人は誰かをウォッチします。課題意識を前から持っている人は、するどい質問が飛んでくるので、その人と継続的にコミュニケーションを取っていれば、道が開けることがあります。また、ミーティングの終わりには(多人数の場合)、今後は誰が窓口になるのかを確認するのも重要です。その窓口の担当者が予算を把握していなかったり、予算を持ちそうな部署ではない場合は、望みは薄いと判断することもできます。

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▲ノウハウをメモする参加者のみなさま

5. 9割は自社でやりたいと思っている

参加者よりこんな質問がありました。「ノウハウを提供していたら、真似をされてしまったことがあった。コアの部分は渡さなかったため、結局は一緒にやれることになったので良かったが...ノウハウを知りたいという大企業側の気持ちが知りたい」。

その回答としては、「大企業側は、9割は自社でやりたいと思っている」ということでした。真似されない程度の情報提供に留めておくことが大事です。例えば、ラーメン屋で例えると、ラーメンの作り方は真似できるくらい簡単なほうがよいが、秘伝の「魔法の粉」は渡さないということです。

6. 大企業側の意思決定を早めるにはどうすればよいか

経営会議など、重要な会議の時期はもともと決まっていることが多いため、その日程を早めてもらうということは難しい。そんな大企業が動きを早めやすいタイミングは、競合が動いたとき。そのため、メディアを動かすことも大事になってきます。メディアと組んでうまく動かし、自分たちに都合の良いタイミングで競合のニュースを出させることもあります。

また、大企業の担当者と組んで、「先方はもう決めたらしいですよ。(うちの判断が遅れて、ネックになってしまうのは避けたいですよね)」と、お互い上司にコッソリ告げるという手もあるとのことでした。

*終わりに

「組織構造を意識する」など、大企業に所属したことがないとわからない視点を得ることができました。また、他の参加者もそれぞれ大企業との付き合い方に悩みを抱えていることを知れ、こうしてノウハウを共有しあうことの大事さを改めて実感しました!

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イベントに参加してくださった皆様、ありがとうございました!

BUTAIでのイベントは12月分まで開催が確定しており、是非多くの方に足を運んでいただきたいと思っています。

▼12月4日開催

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