テキトーに語る経済思想のお話
今日は経済思想史のお話でもしてみようと思います。経済分野は門外漢ですのでテキトーです。まぁ、哲学のお話もテキトーに語っているのですが。
では、経済思想史ってなんじゃらほい?っというと、簡単に言えばみんなが大好きなお金の話です。もっと言えばどうやったらお金が増えるの?ってお話です。みんな好きでしょう? お金儲けの話。
1.重商主義
まず、はじめに紹介するのは重商主義です。重商主義は大航海時代に貿易による経済活動の拡大によって生まれた思想です。重商主義を一言で表すならば「富=金」というところでしょうか。
「重商主義者に聞きました。どうやったらお金が増えるの?」
「お金を増やすためにはお金を増やせばいいのだ!」
はい。何を言っているのか分かりませんね。でも、これが重商主義者の考え方なんです。重商主義者は「富とはお金から生まれるものだ」と考えていました。だから富を増やしたかったらとにかく手元にお金を集めればいいのです。
だから、重商主義者にとって経済活動というのは、金を奪うか奪われるか。文字通り”勝つか負けるか”の勝負でした。だから、この時代の経済活動は奴隷船貿易などに代表されるように、勝利者が富を根こそぎ持っていきます。
現代でも「お金はお金のあるところに集まってくるように出来ている」なんて聞きますけれど、これは重商主義的な考え方ですね。 ちょっと前に”勝ち組・負け組”なんて言葉が流行りましたが、これも同じような思考かもしれません。
あなたの周りにもいるでしょう? お金が大好きな人たち。彼らは現代における重商主義者なのかもしれません。彼らは言います。「人生勝つか負けるか」とか「経済は戦争だ!」とか。彼らにとっては「お金こそが”富を産むもの”」なのです。
だから、そんな人たちを相手にするときは、ちょっと気を付けなければいけません。先にあげたように重商主義者にとって経済とは勝つか負けるか、奪うか奪われるかの勝負です。ちょっとでも隙を見せると彼らは富も名誉も根こそぎ持っていこうとします。
実は現代日本人って重商主義的な考え方を持っている人が多い気がします。”富=お金”、”お金=力”と思っていませんか? 「経済は勝ち負けだ」とか「これが資本主義だから」と言いながら富を一人いじめしてませんか? 資本主義と言いながら重商主義の考え方に染まってません? それ400年ぐらい前の考え方なんですよ。
2.重農主義
重商主義が貿易によって生まれた新しい思想だとすれば、重農主義は古来から大地に根付いた思想です。重農主義を一言で表すと「土地=富」です。
「重農主義者に聞きました。どうやったらお金が増えるの?」
「お金を増やすためには土地を増やせばいいのだ!」
はい。お金を増やしたかったら土地を買いましょう。これが重農主義者の考え方です。重農主義者は「富とは土地から生じるものだ」と考えていました。我々の富はどこからやってくるのか? それは自然エネルギーを取り込んで富に変換しているのだ。
では、どうやって自然エネルギーを取り込むのか? 大地の自然エネルギーを作物化して人間的な富に変換しているのだ。だから、自然エネルギーを変換する場所である土地こそが富を生産する唯一のものである。というわけです。
だから、 重農主義者は土地が大好きです。領土を拡大するために何でもします。彼らにとって”富=土地の大きさ”と言えるのですから。大きいことはいいことだ。というわけですね。
また、彼らは商工業に興味がありません。彼らにとって商工業とは労力や材料を消費するだけの富を生まない産業なのです。ちょっと現代では信じられない考え方ですね。でも、笑ってばかりもいられません。日本も江戸時代までは完璧な重農主義国家でしたから。ほんの150年前の話です。
それに現代でも土地が大好きな不動産関係の方々とか「都会人の俺たちは何も生産していない」とおっしゃるサラリーマンとか。とにかく領土を求めて画策するお国とか。チラホラ重農主義者の片りんを見かけます。
最近TPPの問題などで農業への影響などが懸念されています。国の根幹は農業にあり。まさにその通りとも思いますが、この考え方も重農主義的な思考なのかもしれません。
3.マルクス主義
はたしてこれをマルクス主義と言ってよいものか? ちょっと意見の分かれるところではありますが、適当な言葉が思いつかないのでここではマルクス主義としてしまいます。このマルクス主義を一言で表すならば「労働=富」となります。
「マルクス主義者に聞きました。どうやったらお金が増えるの?」
「お金を増やすためには労働をすればいいのだ!」
はい。お金を増やしたかったら働きましょう。身も蓋もありませんがこれがマルクス主義者の考え方です。マルクス主義は重農主義の発展形といっていいでしょう。彼らはこう言いました「富を生むのは土地じゃない! そこで働いている俺たちだ!!」
そこで「その通りだ!労働者よ今こそ立ち上がれ!」っといったかどうかはわかりませんが、重農主義で無視されていた商工業が発展し、多数の労働者が必要とされた結果生まれたのが経済的マルクス主義です。
マルクス主義者は「人間の富は人間の労働によって生産されているのだ」と主張します。これまでは金や土地といった財産が富を生むと考えられてきました。でも、そうじゃない。人間こそが人間の富を生むのである。というわけです。
だから、マルクス主義者は人間が大好きです。人間が労働者となり、労働者がたくさん働くことで富を大きくなるのですから。彼らにとって労働人口=富=パワーです。労働者をたくさん集められるものがパワーを持っていることになります。
案外現代の私たちの理屈もこのようなマルクス主義の基に成り立っています。「なんで大企業が偉いのか?」労働者をたくさん所持しているからです。「なんで働かなきゃいけないのか?」人が労働しないと富を生産できないからです。
働くことにより富が生まれその対価としてお金を得る。今では当たり前のことに思えますが、これマルクス主義的な考え方です。マルクス主義の前までは「金から富が生まれるのだ」「土地から富が生まれるのだ」って考えていたんですから。
今でこそ響きだけで敬遠されがちなマルクス主義ですが、現代の日本人ってこんな考え方を持っている人がほとんどじゃないでしょうか? その思考の割合は次にあげる資本主義よりも多いんじゃないかなぁ。
4.資本主義
さて、いよいよみんな大好き資本主義のお話です。みんな「資本主義の勝利!」とか「資本主義サイコー!!」とか言ってますが、はたして資本主義ってどんな経済思想なんでしょう? 資本主義を一言で言い表すと「交換=富」です。
「資本主義者に聞きました。どうやったらお金が増えるの?」
「お金を増やすためには交換をすればいいのだ!」
はい。お金を増やしたかったら交換をしましょう。どういうことかわかりますか? 要するに「お金を使え!」ということです。お金を使って商品を購入する。つまり、お金と商品を交換している。富はこの交換の際に生まれるのである。これが資本主義の考え方です。
資本主義は重商主義の発展形といっていいでしょう。重商主義者は富を得るために金の奪い合いという略奪的経済活動をしていました。でも、略奪には限界があります。奪うものがなくなると富は増えません。
それでも、富を増やし続ける人間がいました。彼らはお金を一人イジメすることなく、運用し続けることによって富を築いていたのです。それを見て重商主義者は考えました。「富は金から生まれているんじゃなくて、金を運用したときに発生しているんじゃないか?」って。
お金を運用したとき。つまり、お金と商品を交換したときに富が発生するのです。これはお金でなくても大丈夫です。「ものを交換したときにその交換によって富が発生するのだ」資本主義者はこう考えます。だから、彼らは交換が大好きです。
お金をどんなにたくさん持っていても一円の得にもなりません。お金は使うことによって富を生じるのです。交換によって富がたくさん生じれば、お金も必然的に増えていきます。だから、お金がたくさん欲しかったらたくさん物を交換すればよいのです。
たくさん物を交換するためにはたくさん物を生産しなければいけません。だから資本主義経済の下では、商品が溢れ、あらゆるものが交換の対象になります。何でもいいんです何でも。交換すればするほど富が増えるのですから。
資本主義経済は回してこそ意味があるのです。だから資本主義者は貯金をすることを認めません。堅実な経営よりも自転車操業でどんどん交換し続けるのが正しい資本主義者の姿です。ある意味ホリエモンは正しい資本主義者であったのです。
例えば「お金で幸せは買えますか?」なんて馬鹿げた設問も資本主義経済の下では「YES!」です。幸せはお金と交換できるのです。交換すればみんなの富が増えるのですから。
だから資本主義は人々にものを交換することを強要します。所持し続けることを許しません。交換できるものを交換しないなんて大損だからです。資本主義者は今どんなにあなたが幸せであっても「その幸せを何かと交換しましょう! さらなる富のために!」と言ってきます。
なんだか悪口ばかり書いてしまいましたが、資本主義経済ではうまくすれば富が無限に爆発し物が溢れます。みんな豊かになるといってもいいかもしれません。でも、走り続けないといけないのが資本主義です。脱落するとシンドイのが資本主義です。
5.総括
これまで簡単に経済思想史を追いかけてみました。資本主義より先の経済思想はまだ歴史になっていないので言及しません。ってか私もよくわかりません。でも、専門的な議論に参加でもしない限り、重商主義、重農主義、マルクス主義、資本主義の4つの概念が分かれば、現状を理解するのに問題はないかなと思います。
ここでは総括としてこれらの概念をおさらいしながら、それぞれの経済思想がたどってきた歴史を振り返ってみることにしましょう。
1.重商主義(お金=富)
お金が富を生むのだ。だから、お金を持てば持つほど豊かになれる。だから、お金があるところから奪って来い! このような略奪的経済思考が重商主義です。程度の差こそありますが、「相手よりできるだけ多くとってこい!」というビジネススタンスは変わりません。
重商主義の世界では富の集中によって一時的に経済活動が活発化するのですが、略奪先が痩せてくると富の循環が発生せず、経済活動は先細りとなってしまいます。結果として、新たに資本主義が生まれ重商主義は覇権を譲る形になりました。
2.重農主義(土地=富)
土地が富を生むのだ。だから一次産業を振興して豊かな土地を増やせば、われわれの生活はより豊かになる。このような豊穣の大地的な経済思考が重農主義です。理論としては間違いがないように思えます。
しかし、堅実であるがゆえに富の生産力に乏しく、外部との交易により経済を荒らされてしまいます。外部からもたらされる爆発的富の前にもろく崩れやすいのが重農主義の欠点です。
3.マルクス主義(労働=富)
労働こそが富を生むのだ。だから、より効率的な労働環境を整えてやることが豊かな生活に繋がるのだ。このような労働主義の経済思考がマルクス主義です。重農主義の土地を人に変えただけあって、こちらも理論上は問題がないように思えます。
しかし、重農主義と同様に外部との交易により経済を荒らされるともろく崩れやすい欠点を持っています。富の生産力が外部を上回っていればよいのですが、ひとたび負け始めるとバランスをとるのに非常に苦労することになります。
4.資本主義(交換=富)
交換こそが富を生むのだ。だから交換を促進し、どんどん富を生産することで豊かな生活を実現するのだ。このような交換至上主義の経済思考が資本主義です。資本主義は交換という行為が富を生むため、理論上は無限に富を生産することが可能です。
また、資本主義は重農主義を「土地生産物とお金の交換」マルクス主義を「労働力とお金の交換」というようにその理論内に組み込むことができ、理想的な思想に思えます。
しかしながら、「交換によって富が発生する」と考える資本主義経済は、「金の所持こそが富を得る方法である」と考える重商主義と非常に相性が悪いのです。重商主義者は金の所持を望むため、重商主義が力を持っている資本主義経済下では交換が発生せず有効に機能しません。
一時は略奪先の先細りによって破たんした重商主義経済ですが、資本主義が台頭したことで新たな略奪先を獲得しました。皮肉なことに無限の富を生む資本主義経済下では重商主義の略奪的経済が有効に機能するのです。大きく見れば現在の経済は重商主義と資本主義が引っ張り合っているといえるのかもしれません。
・まとめ
なんだか重商主義を悪者にしてしまいましたが、基本的に思想に良い悪いはありません。すべては推論なのです。重商主義者にしてみれば「バッキャロー! ”土地”や”労働”や”交換”が富を生むわけねーだろ!! その考え方は間違っている。正しくは金が富を生むんだよ!!」と理論を主張しているだけですから。
結局はバランスなのだと思います。みんないろいろな思想を織り交ぜて自分の主張としています。おそらく100%純粋な○○主義者というのはいないでしょう。同様に国家が100%○○主義の政策をとることもできません。仮にやったとしても機能しないでしょう。
重要なのはそれぞれの考え方がどのような考え方なのかを理解することだと思います。今行われようとしている経済政策がどちらを向いているのかがわかれば、多少は経済を身近に感じるのではないでしょうか。
また、案外自分が思っていた考え方と世間一般に言われている経済思想がズレていたということがあるのではないでしょうか。興味本位で手を付けた経済思想史が目から鱗だった私のように「なんとなく資本主義が一番強いんでしょ?」と思っていた方が少しでも「あれ?私って案外マルクス?」とでも思って頂けたら幸いです。
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