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シャーマ二スティック リアリティ ウチナワ魔術考

沖縄において「魔術」を展開するにあたり
①沖縄の霊的世界観
②魔術とは
③沖縄にて魔術を展開するには 
以上3項目に分けて考察したいとおもう。

①沖縄の霊的背景 シャーマニスティック リアリティ
(巫覡的世界)

 その地の霊的世界観を図り知るには、神話や伝承を考察するのがよいので、本土と沖縄を対比しながら考察してみる。

 ギライカナイオボツカグラ、沖縄の霊的異界のことである。
ギライカナイは東方の海の彼方、もしくは海の底にある死者が還っていく場所とされている。七代後には死者は祖霊神として、子孫の守護神となって帰ってくるとも言われている。
一方、オボツカグラは天上に存在する神界で、死者ではなく神々が住む場所とされていて、天帝、キンマモン、キミテズリなどが住むとされている。
 キンマモン、キミテズリ、東方大主、アマミキヨ、シネリキヨ、ヒヌカンなど、琉球の神々は人格神でありながら、像、絵など有形のものがあまり残されておらず、具体、生命体としての存在というよりは、霊体、意識体として無形のものと認知されている。特にオボツカグラから降臨する神々は石、木、御嶽などの依代が必要とされている。

記紀との対比
 古事記、日本書紀などの日本神話の神々は、姿形が描かれており、沖縄の無形の神々とは対照的である。

日本神話は、時の権力者達の争いを寓話化したもので、天地、上下などの権威思考が元となっており、天界は異国のメタファとして表現され、異国からの侵略を天界からの降臨して表現されている。
神を人格化したのではなく、権威者を神格化しているのだ。

 一方、沖縄はギライカナイなど、地続きに異界が存在する並行宇宙的世界観で、異界からの介入は、日常の出来事であり、霊界、冥界、魔界、実体界は表裏一体で、マジムンやユーリなどの霊的存在には姿形が与えられる。また死者、先祖は神として来訪神として帰ってくるとされたり、女兄妹をおなり神と呼び守護神としている。
 神が実在界に介入することは「降臨」であり、特定の時期や特定の事柄(王位継承まど)に対して来訪する存在で、神の日常が語らることは少なく、神話でなはく、怪異談が多く伝承されている。
死者、兄妹などが人が守護神になり、神は超自然的存在のまま無形であり、
霊的存在は魔物、精霊、幽霊として、日常に溶け込んでいる。

まとめ
 沖縄も本土も霊的世界観の基本はアニミズムであるが、本土の神話には、為政者の権威づけの要素が強いため、神が人として表現され、沖縄は、より信仰面が強い民間伝承であり、神は超自然的存在として表現されている。

沖縄でのアミニズムは、マジムンや精霊、ユーリとして表現され、島そのものにシャーマン的世界観が日常として根付いていて、実際、ユタやセジ高の人も多い。

参考チャート
ギライカナイ 黄泉の国

・水平線上の庶民的な異界(民間信仰)
・方向性 東西
     東は神界 西は魔界 並行宇宙的(マルチバース) 三千世
     転生は、並行宇宙の時間軸移動
最高神 アガリカタオフヌシ
来訪神 客人 アマミキヨ キライカナイノキンマンモン  
守護神 祖霊
オボツカグラ 天界
垂直にある権威的な異界(王朝信仰)
方向性 天地
    天から降臨してくる
最高神 天帝
降臨神 オホツカケラクノキンマンモン 
守護神 キミテズリ
依り代 実体がないので依代がいる 磐座 御神木 受肉しない

②魔術とは 混沌魔術

魔術とは 
自然摂理の応用や変性意識の使用による現実変化、変容を起こす技芸。
 ➡自然摂理を用いた術 科学・実証的展開 占術 治癒 降雨など
 ➡意識変容を用いた術 超自然的展開 降霊術

自然への介入 実用性 自然摂理を用いた術 「力」の拡張「自」の強化
 ➡観察 ➡ 学問 理論 思想 
 ➡操作 ➡ 技術 テクノロジー
  
自然との一体感 霊性 意識変容を用いた術「感」拡張 「自」の明け渡し
 
➡降霊 ➡ 自の変容 ➡ シャーマニズム ➡ 預言者 
  ➡ 祭事と統治 ➡ 権威
魔術の種類

意識変容を用いた術 ➡ 降神術 召喚魔術/喚起魔術
          ➡ 交霊術 死霊術
自然摂理を用いた術 ➡ 占 術
          ➡ 呪 術 類感魔術/感染魔術

1降神術
*召喚魔術 呼び入れる 内に入れる 上位 請願召喚と憑依召喚
      ➡神的存在

  召喚では霊的存在に呼びかけ、その来臨を請い、魔術師の内側に入れる 
  神々や天使など、ヒエラルキーにおいて上位の存在が対象となる
喚起魔術 呼び出し 外に呼び出し 下位 命令➡悪魔的存在
  喚起では霊的存在に命令して呼びつけ、魔術師の外側に呼び出される。
  四大元素の精霊や悪魔など、ヒエラルキーにおいて人間と同格か、それ
  より下位の存在が対象となるのが普通である
沖縄的例)ノロ カミダーリ
2交霊術 死霊術
死者の霊と交信、もしくは憑依される
沖縄例)ユタ ➡ 守護神(祖先)
3占 術
沖縄例)トキ草紙 あまり発展していない
沖縄的展開)琉球古字を使ったルーン ヒジュル
4呪 術 
*類感呪術
類似の原理に基づく呪術である。求める結果を模倣する行為により目的を達成しようとする呪術などがこれに含まれる。雨乞いのために水を撒いたり、太鼓を叩くなどして、自然現象を模倣する形式をとる。
沖縄的展開)呪術に使う素材、道具を琉球的なものを使う
*感染呪術 量子もつれ
接触の原理に基づく呪術である。狩の獲物の足跡に槍を突き刺すと、その影響が獲物に及んで逃げ足が鈍るとするような行為や、日本での藁人形に釘を打ち込む呪術などがこれに含まれる。感染呪術には、類感呪術を含んだものも存在する。呪術を行使したい対象が接触していた物や、爪・髪の毛など身体の一部だった物に対し、類感呪術を施すような場合などである。


参考資料
①「魔術は自分自身とその状態を理解する〈科学〉である。行為においてその理解を応用する〈技芸〉である」
「自分が誰であり、何であり、なぜ存在しているのかを自分で見出し、確信しなければならない……そのように追い求めるべき進路を自覚したら、次はそれを遂行するための条件を理解することである。しかる後に、成功にとって異質もしくは邪魔なあらゆる要素を自分自身から取り除き、前述の条件を制するのに特に必要な自分の中の部分を発達させなければならない。(Crowley, Magick, Book 4 p.134)」アレイスター クロウリー

②人類学者ジェームズ・フレイザーは、『金枝篇』において、文化進化主義の観点から[14]、呪術と宗教を切り分け、呪術には行為と結果の因果関係や観念の合理的体系が存在し、呪術を宗教ではなく科学の前段階として捉えた。しばしば依存的態度が強い宗教に対し、因果律に基づく操作的な態度をもつ点を差異として捉える。

沖縄でも「混沌魔術」の展開 ウチナワ魔術

魔術的観点からすると、沖縄では、自然摂理を用いた術(占術、治癒など)があまり発展していない。暦を読むトキという存在はいたが、現在ではほぼ皆無であり、沖縄独自の医学があるという話も聞かない。一方、変性意識を用いた術(ユタ)などが、民間に深く根付いる。
これは諸問題の解決策や治療法などを、ユタが交霊によって個別に解決していくので、体系だった専門知識として蓄積されことがなかったからだと思われる。
 このことから、沖縄で魔術を展開するにあたり「セジ(霊力)」があること、霊界と交信できることが必須であり、その上で自然摂理の応用を探求し、自然摂理と霊力の調和をとることが望ましく思われる。

追記 悪魔召喚について
 西洋魔術における「悪魔」は人の負の欲、感情が具象化されたものである、ゆえに「欲」を媒介に人との契約が成立する。
 一方、沖縄の「マジㇺン」はアニミズムに由来のものが多く、人との契約は困難であり、「悪魔」と「マジムン」は別物の「魔物」といえる。



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