馬楽の時間 86

 リラックスは体の一部分と言うことはありません。
 頭頸、特に顎の部分がリラックスすると屈撓しやすくなります。
 歯を食いしばるのと真逆です。リラックスした状態なら手綱を引くと、「ン?」とちょっと間がありますが、顎を引いてくれます。
 屈撓とは要するに顎を引くと言うことです。
 人間世界のスポーツでも、顎を引けと言われますよね。昨日マラソンを見ましたが、顎を上げている人はいませんでした。疲れてくると顎が上がるようですが。
 馬も顎を引くと頭から後躯至る靭帯に張りが生まれ、力が無駄なく前へと向かいます。無駄がないと無理なく力を発揮できます。よりリラックスし、より滑らかないい動きになります。馬も気分が良くなり「まだまだいけますぜ!」と自分からどんどん動いてくれます。
 背中を凹ますのと対比すると分かると思います。
 いわゆる良いフォームになるとリラックスするとずっと考えていましたが、10年ほど前から、学生さんとやりとりしていると「先生は最初ただのんびり歩いているようですが、いつの間にか固さがとれ、馬が自分でフォームを良くし、気持ち良さそうに大きく動き出します」と言ってくれました。
 自分を客観的に見る機会はそうはありません。学生さんに言ってもらって初めて「あっ、俺はそうやってるのか」と気づきました。
 それで、リラックスが先で、うまくリラックスしてもらえれば、フォームづくりは難しくないと考えるようになりました。


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