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遺言証書を残しておきましょう。

私には財産などないので、遺言証書なんて。。
とお考えではないでしょうか。

ところが、実際には僅かな財産で相続人が揉めるケースは
少なくありません。
特に、子供のいない(子供が死亡している等)ご夫婦は注意が必要です。


なぜかと言うと

子どものいないご夫婦の財産は、

誰が受け取るのでしょう?


法律で

 配偶者
 相続人
  第1順位:子
  第2順位:直系尊属(両親、祖父母等)
  第3順位:兄弟姉妹

決められています。

これは、遺言書があることを前提としています。

遺言書がない場合は、
法律に従って財産は、
配偶者と直系尊属、又は、配偶者と兄弟姉妹
で分配することになります。


そして、

遺言証書を残しておかないと
法定相続分は、
① 配偶者3分の2、直系尊属3分の1
② 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1


せっかく、夫婦二人で築き上げた財産を
ほとんど疎遠である兄弟姉妹(又はその子供)に
分けなければならなくなってしまう場合もあるのです。



私が経験した事例では、

子どものいない夫婦で、
また、被相続人(亡くなった人)に兄弟もおりませんでした。
被相続人の両親ともに既に他界していました。

財産:土地家屋(10坪ほど)と預金200万円

この場合は、両親の兄弟姉妹に分配されることになります。
両親の兄弟も亡くなっておられる方が大半で
この場合、代襲相続といって、その子供が財産を受け取ることになります。
ご両親の兄弟は8名だったことから、
その子供(姪・甥)の数(30名)も多く
戸籍をたどるのも一苦労でした。
また、遺産分割協議により財産のすべてを
配偶者に分配することになりました。
さて、遺産分割協議書に押印すべき
相続人全員の実印をそろえるのに、

ナント。

3年の歳月を要したのでした。


その間、預金を引き出すことができませんので
配偶者の方は、気の毒でした。

このようなことにならないために

遺言証書の作成をお薦めします。


🖋 遺言書証書の種類


遺言書は法律で規定されています。
一生懸命に書き残しても、
法律通りに書かれていなければ

遺言書にはなりません。


1⃣ 自筆証書遺言(民法968条)


ご自身で書かれたものをいいます。

第九百六十八条 
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これにを押さなければならない。
 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、を押さなければならない。
 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

この条文にあるように、
遺言書が、日付氏名自分で書いて(pc等で作成したものは不可
印(認印可・花押不可)を押さなければなりません。
この条件を満たすものだけが、遺言書と認められています。


2⃣ 公正証書遺言(民法969条)


公証人による遺言証書を作成することをいいます。
遺言者・公証人・証人2人の立ち合いで、成立します。


第九百六十九条 
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 証人二人以上の立会いがあること。
 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九条の二 
口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。

この条文にもあるように、目が見えない方の遺言書は作成できません。
作成した遺言書を本人が確認できないからだと思います。


3⃣ 秘密証書遺言(民法970条)


ご自身が作成して、公証人と証人2人の立ち合いをもって
成立します。
ただし、遺言の内容は遺言者のみが知っています。
秘密遺言証書を作成した事実について
公証人と証人が確認するものです。
内容に不備があると、遺言書と認められない場合があるので
注意が必要です。



第九百七十条 
秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。
(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)
第九百七十一条
秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第九百六十八条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。
(秘密証書遺言の方式の特則)
第九百七十二条 
口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。
 前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
 第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならない。


留意点


* 自筆証書遺言の場所を相続人に明らかにしておかなければならない
  ことです。(貸金庫の鍵や証券の場所も同様に。)
  遺言書が見つからなければ、法定相続になるからです。

* 公正証書遺言・秘密証書遺言は、公証人や証人に費用がかかります。
  保管場所は、公正証書遺言については公証人役場になります。
  秘密証書遺言はご自身で保管しますが、秘密証書遺言をした記録が
  公証人役場に残ります。


自筆証書遺言書保管制度


令和2年7月から、法務局で自筆証書遺言の預かり制度ができました。
(申請できるのは、遺言者本人だけになります。代理人不可)

【1】 あなたの遺言書は,法務局において適正に管理・保管されます!

  • 遺言書の保管申請時には,民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて,遺言書保管官の外形的なチェックが受けられます。

  • 遺言書は,原本に加え,画像データとしても長期間適正に管理されます。(原本:遺言者死亡後50年間,画像データ:同150年間)

    1. そのため,

      • ▶遺言書の紛失・亡失のおそれがありません。

      • ▶相続人等の利害関係者による遺言書の破棄,隠匿,改ざん等を
        防ぐことができます。

<注意事項>

  • ※遺言の内容について相談に応じることはできません

  • ※本制度は,保管された遺言書の有効性を保証するものではありません。

【2】 相続開始後,家庭裁判所における検認が不要です!

【3】 相続開始後,相続人等の方々は,法務局において遺言書を
    閲覧したり,遺言書情報証明書の交付が受けられます!

データでも管理しているため,遺言書の原本が保管されている遺言書保管所にかかわらず,全国どこの法務局においても,データによる遺言書の閲覧や,遺言書情報証明書の交付が受けられます!(遺言書の原本は,原本を保管している遺言書保管所においてしか閲覧できません。)

【4】 通知が届きます!

関係遺言書保管通知相続人のうちのどなたか一人が,遺言書保管所において遺言書の閲覧をしたり,遺言書情報証明書の交付を受けた場合,その他の相続人全員に対して,遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます!死亡時通知遺言者があらかじめこの通知を希望している場合,その通知対象とされた方(遺言者1名につき、お一人のみ)に対しては,遺言書保管所において,法務局の戸籍担当部局との連携により遺言者の死亡の事実が確認できた時に,相続人等の方々の閲覧等を待たずに,遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます! 


詳しくは、






🎈 おまけ




   先日、証人の依頼があり、公証人役場へ行ってきました。
 とても緊張しました。
 ご参考になればと思い、記しておきます。

公証人役場へ行く前は,公証役場の担当書記と事前に連絡を取ります。
証人としての身分確認(免許証等の提示)をしてもらいます。
当日でもいいようです。

 公正証書遺言作成当日


遺言者ご本人とご家族、司法書士の先生と証人の私は待合に
和やかな雰囲気の中で集合しました。

公証人から名前を呼ばれて遺言の作成に入りました。
内容を遺言者と証人と公証人とで確認していく進めていきます。
無事に内容確認後,遺言者本人,証人2名が署名・押印して,
晴れて遺言書が完成です。
ところが、
私の印鑑(認印)が、先に押印した司法書士の先生の印鑑に
少し重なってしまいました。
遺言者本人の実印と重なったら大変なことになるところでした。💦 
大変勉強になりました。


おかげさまで、証人の初仕事が無事に終了したのでした。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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