見出し画像

#18 2つのBA -DX推進の実際⑧-    【ビジネスの現状把握】

-PR-

前回は
 
DX推進のために必要な考え方と構想指針を示す「DX推進戦略」の策定について考える最終回でした。DX推進ではアジャイル的なマインドセットと行動を促すことが重要であると以前述べました。これは、現在ではビジネス環境の変化が激しいため、時の流れに従って目的を達成するため取り得る最適な選択も変化するということ、目的達成の途中であっても何らかの成果を現実化し、関係者が評価できることが重要であること、そのために常に活動を可視化することを可能にすること、を考慮した結果となります。
 したがって、DX推進の戦略策定では、このような変化があることを前提にその活動のあり方を明確にする必要があります。

今回から
 
次のプロセスである「ビジネスの現状を知る」における具体的な活動をご紹介します。計画策定>戦略策定と続いてきたDX推進のプロセスですが、次は「ビジネスの現状を知る」となります。

「ビジネスの現状」には大きく2つの要素があります。一つは、現在の自社ビジネスの遂行を担っているビジネスモデルや組織構造などのビジネスの姿を知ることです。もう一つは、現状のビジネスが抱える問題や課題を知ることです。これらを正しく把握することで、現状のビジネスの改善や新しいビジネスの展開で想定される問題を明確に知ることができます。これが、DX推進活動の実質的なスタートとなります。

ビジネスの現状を知る
 
このために必要な行動は3つのカテゴリーで考えられます。1つ目は、既存の情報から必要な知識を得ること。2つ目は、ビジネスの当事者から現状を聞くこと。3つ目は、公開情報や一般的な知識から類推することとなります。もちろん、この「知る」ための活動には様々な手法があり、それらをうまく活用して効率よく必要な情報を収集することが必要になります。

さらに、収集した情報を整理し、目的に沿って活用できるように加工する必要があります。このことをビジネスアーキテクチャでは「モデリング」と呼んでいます。

ビジネスアーキテクチャのモデリング
 
ビジネスアーキテクチャですから、ビジネスの構造を明らかにし、複数存在するビジネス要素間の関係をモデルとして示すことで、ビジネスを理解しようとすることを考えます。

 ではここで言うビジネス要素とは何でしょうか?ビジネスの構造を考えた時、大きく2つの種類があることに気が付きます。ビジネスを続けて行く上で基本的に変化することが少ないものと、ビジネス環境に依存し、環境の変化に伴って変化するものです。

 前者は中核となるビジネス要素で、次に挙げるものとなります。「ビジネス能力・機能(Capabilities)」「ビジネス活動による価値の創出(Value Streams)」「ビジネス遂行の組織形態(Organization)」「ビジネスの要素概念(Information)」です。

 後者には、「ビジネスに関わる人(Stakeholders)」「方針(Policies)」「戦略(Strategies)」「製品・サービス(Products)」「施策・活動(Initiatives)」「指標(Metrics)」があります。

重要なビジネス要素
 
中核となるビジネス要素はどれも重要なものですが、特に注目すべきは「ビジネス能力・機能(Capabilities)」「ビジネス活動による価値の創出(Value Streams)」の2つです。「組織形態」は企業がどのような組織構造で成り立っているのかを表し、「要素概念」は組織内で様々なビジネス要素をどのように表現しているかを明確にするものです。

 これに関しては分かりにくいので、具体的な例を挙げて説明してみます。例えば「売上管理」というビジネスの概念があり、その中には「顧客」「商品」「請求」「支払」「督促」「入金」などの言語で表される個々の概念を含みます。これが「情報」というビジネス要素を構成するものとなります。注意が必要なのは、ITでいう情報とは異なるものであるということです。あくまでビジネス視点で言うものとなります。

次回は
 
今回のコアとなるビジネス要素の内、「ビジネス能力・機能(Capabilities)」「ビジネス活動による価値の創出(Value Streams)」の2つについて説明していくことにします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?