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#6 2つのBAーDX推進の計画➀ー

前回はIPAが提唱する「DX推進スキル標準」において、その中核となるスキルである「ビジネスアーキテクト」が具体的にどの様にDX推進を実践していくのかを考えようとチャレンジしました。そこでDX実行のスタートの段階である「DX実行計画策定」のうち「ステークホルダーエンゲージメント」について掘り下げました。

ここで、なぜ真っ先に「ステークホルダーエンゲージメント」について取り上げたのか、少しだけ説明したいと思います。
論理的にも直感的にも、非常に重要な仕事だと皆さんお感じになるのが「ステークホルダーエンゲージメント」活動です。ただそれを実行に移すのは簡単ではありません。
理由の一つに、社内の人物を”DX推進”という目線で評価する必要があるからです。筆者のように外部からコンサルタントとして参加した人間は、ついロジックで対応しようとしますが、実際に組織で働く人たちにとって評価するのは、同僚だったり、上役であったり、部下だったり、他部署のメンバーだったりするわけですから、かなりセンシティブになります。ロジックだけでは割り切れません。さらに、それほど付き合いの無い人や逆に日ごろ親しく付き合っている人もいますから、「ステークホルダーエンゲージメント活動」を計画しようとすると、どうしてもコアメンバーの気持ち的には最初から乗り越えるべきハードルが存在することになります。
それに対応するために、対象に対して類型的な表現を行い、匿名性を高くして、DX推進コアチーム以外には漏れないようにする、などといった工夫が必要になる場合もあります。それやこれやで、いつの間にかステークホルダーリストはメンテナンスされなくなり、そのうちメンテナンスも有耶無耶になってしまうということになりがちです。どこまでしっかり管理するか、誰も傷つかないようにするにはどうしたら良いか、前もってよく考えておく必要があります。
ステークホルダーリストを最後までちゃんと管理するということは、個人のステークホルダーエンゲージメントの変遷を記録すると言うことです。DX推進を継続してく上でこの記録は成功のための大きなツールとなります。

さて次に取り上げる「DX実行計画」のポイントです。当然ですがDXを進めるためには目的と目標を明確にすることが重要です。これ以上重要なものはないと言えるほど重要です。DX推進の幾つかの失敗事例を見ると、DXを推進する目的が明確に示されていなかったり、途中で変化したりすることがあります。そんなバカな!とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、関係者のDX推進に対する認識の差によって様々なことが起こり得ます。ですから組織にとってのDX推進の意義、ビジネスの目的と目標に対する理解を深める「ステークホルダーエンゲージメント」活動が重要になるわけです。この活動の中にはDX推進に関する講習会などの学習の機会を含みます。気を付けないといけないのはこの講習会も、経営陣、中間管理職、一般職員とそれぞれの役割に基づいた内容が必要になるということです。

DX推進の目的や目標を決めるには幾つかのアプローチがあります。最初にやらないといけないのは、企業理念、経営戦略、事業戦略の確認です。この3つが整合性を持っているということを確認します。万一これらのいずれかが明文化されていない場合、ビジネスアーキテクトはそれを作成します。

ここでさらにDX推進は2つのパターンに分かれます。一つはこれまでになかった新しいビジネスやビジネスモデルを構築しようする場合。もう一つは、既存のビジネスを改善、改良して新しいユーザー価値を創生する場合です。
前者の場合、ビジネスのアイデアを出すというかなり難しいステップに直面することになります。今どこの企業もこの段階を乗り切るためにさまざまな努力をしています。その一つに「共創」というキーワードで、社外の知見を取り入れようとしています。
つまり「0」から「1」を創り出すわけですから、大変な仕事であるのは明白です。この部分に言及したDX推進に関する書籍は多くはありません。それだけ難しいということです。

次回はこの難しい問題について掘り下げて行くことにします。







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