デザインとは何か

デザインの誤解

みなさんは「デザイン」という言葉を聞いて何を思い浮かべるでしょうか。

Webやアプリなどの画面上に映るようなデジタルな物だけではなく、洋服や家具、建築においても「デザイン」という言葉を使いますが、特に日本では、「デザイン=見た目をオシャレにするためのもの」と誤解されがちです。

デザインは、アートのような自己表現としての役割とは違います。

たしかに、見た目をよくすることこそがデザインに対する一番分かりやすい価値ですが、デザインは、特定の問題を解決する目的を持った行動であり、その手段として活用するものと解釈すると、デザインに対する、何となく漠然としていたイメージが払拭されて、「デザインとは何か」の答えに辿り着けるのではないかと考えています。

デザインの考え方というと、どうしてもイデオロギー論争になりがちですが、このNoteでは、デザイナーである私が考える「デザインの役割」の中で、より本質的で重要だと思えるものを紹介します。


デザインの役割 1 -可視化

デザインによる「可視化」は、見えるようにするという意味であり、皆さんが想像しやすいデザインの代表的な役割です。

逆にいえば、目に見えているものほとんどの物が、誰かがデザインした物であり、見せている物でもありますので、それらを注意深く観察ことで、見た目の美しさ以上に、そのデザインの重要な意味や意図を理解する機会になるかもしれません。

以下に、デザインによって可視化できるものをいくつか挙げていきます。

1.情報の可視化

世の中はさまざまな情報で溢れていますが、そういった複雑な情報を構造的に整理し、直感的にわかりやすく表示することで、情報伝達にかかるコミュニケーションコストを減らすことができます。

例えば、文章をグラフやアイコンに変換したり、本棚を五十音順に陳列することや、色別やラベル別に仕分けすることなども、情報をわかりやすくする行為ですので、デザインによる情報の可視化を行っていると言えます。

情報の可視化とは、非デザイナーにとっても最も日常的に馴染みのあるデザイン思考かもしれません。

また、現代では情報化社会の加速に伴う情報の混沌化が原因で、いわゆるUI/UXデザインによる情報処理の役割も拡大しているとも言えます。

2.意味の可視化

デザインは、単なる情報処理のための可視化だけではなく、私たちの思考・感情などの思念レベルの情報を可視化することができます。

デザインの構成要素である色や形や配置などを使って、何かに見立てたり、抽象化することで、その意味を伝えます。

例えば、企業のブランドが作り出すロゴやカラー、商品やWebサイトのデザインなども、企業や製品に対する理念やビジョンが形作るものであり、意味の可視化そのものとも言えます。

私たちが普段から使ってる物やサービスは、誰かが込めた意味や想いが信頼を作り、私たちはそこに込められた意味や想いにもさりげなくお金を払って生活しているのです。

3.体験の可視化

体験の可視化とは、製品やサービスの利用体験を視覚化し、ユーザーにわかりやすく伝えることを指します。

体験とは、人間が体や心で経験した記憶や脳内で具体化できる感覚的情報です。

それを「可視化する」というとモヤモヤしますが、それの最も身近な例が広告で、TVCM、WEB、SNS、ポスター、街中の屋外広告など、あらゆる広告媒体にその性質が利用されています。

それらは、色や形、レイアウト、フォントなどのデザインにより可視化する要素から、利用者の体験を通じたコミュニケーションを行うことで、人間の感情や心理・感覚に作用し、商品の購買意欲の向上などに貢献しています。


デザインの役割 2 - 最適化

デザインには、特定の目的に対して効果的に機能するようにプロダクトやサービスを最適化するという役割があります。

1.機能性の最適化

機能性の最適化は、クリエイティブの本質であり、デザインが担う最も重要な役割だと言えます。

例えば、もしあなたが飲み物を注ぐための器を作るなら、どんな機能が必要だと考えるでしょうか。

お湯のような熱いものを注ぐなら、持ち手が熱くなるため、厚口にするか、取っ手が必要かもしれません。
子供が使うことを想定するのであれば、サイズや重量を気にして小さくしたり、両手で持てるような形がいいでしょう。
あるいは、保温性に特化するならば、真空断熱のステンレス製にしてしまおう、など。

このように、前提にこだわり、デザインされる対象が本来どういう目的を持って誰のために存在しているか、抱える問題は何かを把握し、解決するために工夫する行為がデザイン思考と呼ばれる物です。

わかりやすくするために、器のデザインを例に出していますが、プロダクトデザインだけではなく、サービスやブランドなどの無形の物も含めて、あらゆる物事をデザイン思考によって良くしようと考えれば、デザインの力を最大限活かしたグッドデザインが完成するかもしれません。

2.効率性の最適化

効率化の基本は、最も重要ではない箇所を削りシンプルにすることです。

必要でなければしないこと、必要がないことこそが、物事にとって無駄がなく一番効率が良い状態です。

構成する要素が少なければ、そこに割く工数や製造・運用のコストの他に、それを管理する難易度も必然的に低くなり、故障や不具合の可能性も減るため、耐久力を向上させるという効果もあります。

デザインが担うべき最重要項目を定め、それ以外の副次的な要素は極限まで取り除き、極限まで削り洗練されたアウトプットこそ、デザインにおいては完成品だと言えます。

複雑なプロセスや構造をよりシンプルにすることは、品質を向上させる上でデザイナーが担う役割の一つです。

3.持続可能性の最適化

最適なデザインを考える際に、持続可能な方法で繰り返し長く利用することを前提とされているかは重要です。

使い捨てを想定された物であったとしても、環境の配慮がされているか、
住居や家具、プロダクトなどの有形の商材ならば、壊れにくく耐久性のある素材や製造方法を選択しているか、経済的にそれは維持できるか、
ブランドやサービスのデザインであれば、それが社会に与える影響は考慮されているかなど、設計、製造、運用の段階においてデザインの持続性も設計者は考慮しなければなりません。


良いデザインとは何か?

最後に、「良いデザインとは何か」について考えてみます。

私の中では、良いデザインとは上記でご紹介したような「デザインの役割」を上手に発揮できているものだと考えています。また、逆に悪いデザインは、工夫したものの、残念ながらその力を発揮できていないものです。

しかしながら、「2-1:機能性の最適化」でもお伝えしたとおり、デザインは前提があってこそ機能します。
子供用に最適化した器であっても、大人には使いづらいように、たとえ一方で良いデザインだったとしても、前提が変われば、それが悪いデザインになる場合もあります。

本来、デザインにおける考えなければいけない前提というものは無数にあります。良いデザインとは、表面的な見た目の良し悪し・好き嫌いではなく、そこに至る過程と前提を知ることで定義できるものだと考えています。


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弊社では、企業の根幹にある価値観を軸にしたブランド開発やデジタル領域のデザインの開発を行なっています。ブランドやデザインの活用にご興味をお持ちでしたら、弊社までお問い合わせいただけますと幸いです。

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