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【映画考察 シャッターアイランド】

この考察はネタバレを含むので、映画鑑賞後に読むことをおすすめします。

 映画の考察をするにあたり、なぜこの作品を選んだのか。それはこの作品がきっかけで映画を好きになったからです。映画に対する評価基準は人それぞれ。でも僕は映画を評価する際には、映画にしかできないことをしているかどうか、ということを最重視します。
そういった意味でこの作品は、映画ならではのギミックや伏線が盛りだくさんで、素晴らしい映画の1つであると評価できます。

 簡単にあらすじを書きます。
保安官である男2人がある島に向かいます。その島は精神病患者の収容所となっており、島には医師がいます。その島で1人の精神病院患者が失踪したことで、男2人が派遣されました。男2人は聞き込み調査や現場検証などを進め、やがて真相に近づきます。
その真相とは、実は男2人のうちの1人は精神病患者で、自分が保安官であると思い込んでいるということ。相棒はその患者の担当医であること。そして、失踪事件を解いていく最中に、なんとか精神病患者が自分で、自分は患者であるということに気付くように、何回かこのロールプレイを行っているということ。
そして、今回のロールプレイで自分の状況に気づくことができなかった場合、治療は中止され、ロボトミー手術(脳を直接イジリ、もしくは一部を取り除き、感情等がなくなる、廃人にする治療法)を受けることになるということ。

 ここからは伏線回収をメインに映画の初めから考察を進めていきます。

◯船酔いするテディ(主人公・患者)
 映画の冒頭、船が島に向かいますが、テディは船酔いしています。実はこれは船酔いではなく、水が苦手だから吐き気がするということ。水が嫌いな理由は、かつて妻が自分の子供たちを湖で溺死させたから。
◯鋭い視線を向ける警備員
 船が島に着くと、警備員たちはテディと相棒(テディの担当医)に鋭い視線を向け、警戒しているカットが挟まれます。これはテディという患者に対しての警戒心。
◯フェンスの電流
 島の港から病院(収容施設)に向かう車に乗っている際、テディが「フェンスに電流が流れてる」といいます。これは、このロールプレイが何回も繰り返されているからこそ知っているということ。
銃を携帯していないテディ
 施設に着くと、銃を預けるシーンがありますが、テディは銃を持っていません。患者なので当然ですね。
◯我が子3人を殺したレイチェル
 施設で院長と会話する中で、失踪者レイチェルがどんな人物か明かされます。レイチェルは子供3人を殺したと明かされますが、それはテディの妻が行った殺人。院長と相棒はこのようにロールプレイの中でテディが真相に気づくようにヒントを与えます。
 また、院長は現在の精神治療法に疑問を抱き、なんとか患者を更生させる、無理ならせめて安らかな人生を送ることができるような先進的な医療を行っていることを明かしています。
◯戦争の描写
 時折、テディが戦争に行った描写が挟まれます。この経験がテディの精神病発症の一端となっていることがわかります。もちろん直接的な原因は妻が子供たちをころしたことです。
 また、テディが急に感情を爆発させるシーンもありますが、これはテディが精神的に不安定なことを示しています。
◯妻との描写
 途中、妻との描写が挟まれますが、これはテディが妻に対する愛情、妻が起こした殺人から逃れられていないことを描写しています。
◯鉛筆をこするテディ
 施設の患者に聞き込みをしている際、テディが鉛筆をこするシーンがあります。この時話していたのはレイチェルが子供3人を溺死させたこと。テディはその話を受け入れられなかったのでしょう。
◯消えるコップ、タバコの煙
 女性患者と話している時、コップが消えるシーンがあります。これはこの捜査自体が虚空であることの証明でしょう。後にタバコの煙が逆に流れるシーンも同様です。
◯4の法則と67番目の患者
 4の法則とはアナグラムで、テディの名前の順番を入れ替えるとレディスという患者の名前になるということで、テディが作り出した妄想です。
 当然67番目の患者とはテディのこと。
◯頭痛と光に対する敏感
 これは単純にテディが精神病患者であることを描写しています。
◯なぜ真相を知る場所が灯台なのか
 ラストシーン直前、医師からテディに真実を告げられるシーンがあります。なぜ灯台という場所なのか。テディが灯台にたどり着いた時、灯台の螺旋階段を駆け登るシーンがあります。この螺旋階段は今までのテディの治療が何回も繰り返されていることを暗示しているのです。
◯ラストシーン
 「こんな所にいると考えちまう。怪物として生きるのと、いい人間として死ぬこと」
 このセリフはテディが、レディスとして自分を受け入れているという証拠。だが、彼は自らいい人間として死ぬことを選び、あえてまた保安官のフリをして、ロボトミー手術を受ける選択をした。
 このラストシーンはミスト、インセプションと並んでかなりいいラストだと思います。そして、この作品は2回以上見るとさらに面白い作品です。皆さんもぜひ。


 以上、初めての映画考察でした。またたまに投稿します。

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