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【書評】利得よりも名誉と誇り「武士道」by 新渡戸稲造

紹介文

この本は、封建制の時代より台頭してきた侍たちが独自に形成した「武士道」という道徳観念に関して、その起源と源泉、特徴と教義、市民へ与えた影響、その持続性と永続性を説明している本です。作者は新渡戸稲造で、原本は英語にて執筆されています。時を経て形成されていった不文法で、辞書だったり教本が存在しないため、当時得体の知れないものとされていた「武士道」という日本人の精神を外国人向けに分かりやすく解説されています。武士道は単に闘いの場におけるルールではなく、日常生活における規範までも網羅している考え方であり、私たちの日常生活にも非常に役に立つ教えが盛りだくさんです。

内容

武士道の発祥

武士道は源頼朝が支配権を確立した時代から台頭してきた武士によって確立された不文法のことです。

宗教からの影響

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武士道は仏教と神道の影響を強く受けています。仏教は「禅」の教えから、死への親近感だったり、生への執着心に対する侮蔑などが影響を受けていました。神道はご先祖様への崇敬だったり、主君への忠誠心へ影響を与えています。

武士道とは?

武士道の構成要素たちをいくつかピックして説明します。

正直さや誠実さのこと。覚悟をもって行動し、自分自身の言動に責任を持つことです。この言葉から派生した「義理」という言葉は往々にして詭弁や偽善を含んだ行いの説明として使われていて、義とは全く違ったものと説明されています。義理とは自分の利得のために行動することで、武士道はこれを詭弁と表現しています。道理や節義に従って、正しく誠実に行動することで、義を実践したことになります。

勇猛さのこと。何事にも心の平静さを失うことのない強い精神力を指します。ある逸話では、武士が戦場で槍に突き刺されたとき、相手が詠んだ詩に返答する詩を詠んだと語られています。これは武士道の勇に該当することで、修行や鍛錬を重ね、いかに過酷な状況でもパニックにならずに冷静に思考することが美しいものとして定義されていました。

忠義

主君に対する従順な忠誠心。武士道の名誉の規範において、この忠誠心は非常に重要なものとなっています。武士道においては個人は国のためにあるもので、国の構成部分として生まれ、死んでいくものとされています。ただ、武士道は主君の気まぐれや酔狂のために自己を犠牲にすることを愚かなこととしています。時には主君の主張を正すために、自らの血を流すこともあったそうです。嘘や無節操なへつらいをして主君の機嫌を取るものは愚か者とされていました。この意味では、単に個を殺すのではなく、個を組織のために全力で捧げるというのが武士道における忠義になっているのではないでしょうか。


衒学的知識への侮蔑(衒学的とは、、?)

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武士道はまた、衒学的な知識の会得を侮蔑していました。衒学的とは、必要以上に持っている知識を見せびらかし、あたかも自分が博識で、重要な人物あるように振る舞うことを言います。武士道をただ覚えるのではなく、それを自身の心に同化させ、行動することによってのみ武士道は真価を発揮するものであると述べられています。これって「無知の知」で有名なソクラテスの考え方と非常に近い気がします。ソクラテスの残した言葉の中に「汝自身を知れ」というものがあります。自分が何も知らないことを自覚し、その自覚をもって真の知識を探求しろといったような意味なのですが、非常に近しい意味なのではと思っています。学びに対する非常に謙虚な姿勢が素敵だなと思っていました。中世の日本がギリシャの哲学者から影響を受けていたとは考え難いので、知を探求するとこのような結論に達するということなのかもしれないですね。

やがて、このような武士道に従い行動する侍たちは、一般民衆にとってあこがれの存在となっていきました。のちに大和魂と呼ばれ、民衆にもこの精神は引き継がれていきました。

所感

衒学的な知識を侮蔑するという精神は、すぐにでも意識していこうと思いました。何かを学習するとき、知識の取得自体が目的になってしまうといくらたくさんの本を読んだり、資格を取ったりしても器用貧乏になるだけでうまく活用できないわけで、知識の取得を通じてどんなスキルを身に着け、何を体現していくのかを大切にしたほうがいいと思いました。私も1年前くらいから本を読むときは、この本からどんなことを学んで、どんな風になりたいかをノートに書くようにしています。そうすることによって、「あ、これ俺が知りたい内容とはちょっと脱線しているんな」と思った時に読むのを止めて、時間の浪費を防ぐこともできるし、最終的なゴールをあらかじめ設定してから取り組むと、長続きします。

また、読んだ本は今やっているように内容を文章にまとめて、より頭に残るようにしています。新しく頭に入った知識はすぐに取り出せるように移動中とかにノートを見返したりしています。学んだことが身につけば身につくほど学ぶことが楽しくなり、正のスパイラルが発生します。非公開でもよいと思うので、学んだことを文章化して、たまに見返すことを強くお勧めします。

また、中世からの日本を支えた侍たちの高潔な精神は現代の私たちでも学ぶことはたくさんあることを実感しました。仕事や私生活でも闘いの場から生まれた武士道は有効な道徳観念だと思います。武士の潔さや誠実さを見習って生活し、日本人としての誇りをもって生きていこうと思います。自分の与えられたことに対しては強く責任感をもって取り組んでいきます。切腹するまではいかないですが笑

今日はちょっと堅めの本を読み返しました。実はこれ半年前くらいに一回読んでいるのですが、古典はやっぱりいつ読んでも楽しいですね。

次はちょっと柔らかめの本にします。

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