情報から知識へ：イノベーションの基礎と核心能力

私たちは子供の頃から、教科書を読み、国語の文を暗記し、数学の公式を覚えるという経験を積んできました。大人になっても、法律を学ぶ人は条文を覚え、医学を学ぶ人は全身の神経や血管の構造を丸暗記し、生化学を学ぶ人は数々の化学式や反応式を頭に叩き込まなければなりません。創新（イノベーション）は確かに価値がありますが、知識自体が無価値だなんてことはないのです。何故なら「創新」は「知識」を基盤として初めて成し遂げられるものだからです。

実のところ、これら一つひとつの暗記した事柄は、厳密に言えば「情報」に過ぎません。それは多くの問題を解決するための基礎的な「情報」であり、この基礎的な情報があるからこそ、私たちの脳は問題に直面したときに既知の情報を利用できるのです。しかし、これだけでは最初に述べた問題、つまり本当に直面する「問題」を解決することはできません。理由は、意識的な練習や自己反省を経ずに「情報」を「知識」と見なしてしまうと、宿題をうまくこなせても、期末試験で別の形式の問題に出会うと対応できません。大学入試でも異なる問題を出されると解決できず、創新に至ってはなおさらです。

だからこそ、私は『ブログを始めよう！マーケティングの世界で実力をつけたいなら書くことから始めるべき理由』で、マーケティング担当者が継続的に情報を知識に転換し、ブログなどで発信し続けることを推奨しています。

知識経済の時代、さらにはAIの時代に突入した今日、真に価値のあるものは何なのでしょうか？私の視点から見ると、真に価値のあるものは次の三つです。

1. 多方面から正確な情報を集める能力

2. 集めた情報を統合し、自身の知識として頭の中にデータベースを構築し、実践する能力

3. 情報と知識を活用してノウハウを作り出し、創新の方向性を発展させる能力

このようにして、私たちは情報を単なる「情報」として留めず、真の価値ある「知識」へと昇華させることができ、イノベーションへとつなげていくことができるのです。

情報不安症候群への対策：疑いと批判的思考

私たちは日々膨大な情報に囲まれていますが、その情報の海から真に価値あるものを見つけ出し、活用するためにはただ単に読むだけでは不十分です。「収集、転化実践、活用と創新」の三段階こそが重要なのです。単純に情報を読み、翻訳するだけでは意味がありません。まず、情報の正確性を判断する能力が求められます。そして、仕事や事業に適用し、さらにそこから自己のパフォーマンスを向上させるための新しい方法を見つけ出すことが重要です。

ところが、現代の知識経済の時代には情報の爆発が伴います。本を出版したり、新聞や雑誌に記事を載せたりするのが簡単になり、極端に言えばお金を払えば何でもできる時代です。そのため、多くの人が「情報不安症候群」に悩まされています。この病気に対して、私が提案する解決策は「常に疑いの心を持って情報を読むこと」です。

例えば、かつての事例です。ゼネラルモーターズ（GM）が Facebook 広告から撤退し、同時期に多くの「メディア」が「Facebook 広告は効果がない」との記事や議論を展開しました。あなたはその情報を鵜呑みにして「Facebook 広告は効果がない」と結論づけるでしょうか？（この結果、実際には1年も経たないうちに GM は再び Facebook 広告に戻ってきました。）

それとも他の情報を集め、例えばフォードが「Facebook 広告は非常に効果的だ。ただし GM は使い方を知らないだけだ」と言っていることを知り、なぜフォードがそう言ったのかを考えますか？ただ「収集」するだけではなく、「転化実践」に移ることが重要です。「Facebook 広告は本当に効果がないのか（それともあるのか）？一度試してみよう」という実行に移す過程こそ転化実践です。

しかし、ある人は「予算がないから試せない」と言うかもしれません。その場合、私は「実行できる環境を見つけることが最も重要だ」と主張します。言い訳をするよりも、自分が実践できる環境を整える勇気と行動力が必要です。

私たちは情報の海に溺れず、情報を疑い、批判的に考え、実践し、そこから新しい価値を見つけ出す力を身につけることが大切です。これが情報不安症候群への最良の対策です。

実践を通じた学び：情報を知識に変えるプロセス

かつて、私はマーケティングを学びたいと強烈に思っていました。しかし、学歴や経験が不足しており、厳しい選考基準を持つ4A（四大広告代理店）のオグルヴィに入るのは難しいと悟りました。そこで、思考を切り替え、「展示会のアルバイトとして潜り込む」という手段を選びました。こうして現場での経験を通じて、彼らの仕事の指示やイベントの流れからマーケティングの考え方を学び取ろうと考えました。

もしあなたが同じような決心を持たず、情報を分析せず真偽を見極めないままでいると、Facebook広告とGoogle広告の違いを理解せず、誤った比較をすることになります。結果として、他人の意見にただ流されるだけのオウムのような存在になってしまうでしょう。

もちろん、提供される「情報」の質も重要です。また、情報の背後に隠された商業的な意図も見逃せません。有名なブロガーやインフルエンサー、業界の権威者の意見だからといって無条件に信じ込むのではなく、彼らの言っていることの意味を自分で考えることが重要です。なぜなら、人間は全知ではありません。ただし、これらの人物（私を除いて）は正しいことを言う確率が高いに過ぎません。

ある有名な人物が書いた「情報」を目にしたとき、まず最初にすべきことは、その情報を確認して考えることです。彼らが述べていることの意義は何か？盲信せずに、情報に懐疑的な眼差しを向けることが、情報不安症候群を治療するための第一歩です。Googleを使って調べることで、考えるためのさらなる情報を得ることができます。このプロセスを経て消化吸収されたものこそ、最も価値のある「知識」となります。

誰が知識は価値がないと言ったのでしょうか？知識は、自分のものです。そして、情報は他人のものです。情報を自分の知識として転換することで、初めてそれが価値を持ちます。そして忘れてはならないのは、情報と知識がなければ、イノベーションは絶対に生まれないということです。