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「LJLの地位向上に貢献したい」 不振を乗り越え世界に挑む韓国人選手Harp

昨年末、DetonatioN FocusMe(以下、DFM)からHarpの加入が発表された。

「LCK(韓国リーグ)有望株の電撃移籍」との触れ込みで、国内のみならず韓国でも少なからず話題になった。しかし、話題の渦中にいたHarpは期待と不安が入り混じっていた。

LCKではミスが目立ち始めていたタイミング。新人が陥りがちなスランプと言えばそうかもしれないが、自信を失うには十分な出来事だ。自分のプレイが委縮していることも感じていた。

「それでも、『移籍金を払ってでも来てもらいたい』と言ってくれたDFMに心を打たれました」

初の国際大会「MSI 2022」で初の対面

国内の『リーグ・オブ・レジェンド(以下、LoL)』プロリーグである「League of Legend Japan League(以下、LJL)」 。2022年のSpring Split(春季)では新型コロナウイルス感染症の影響により春季から新規加入した韓国人選手たちは日本への入国ができず、韓国からのオンライン参戦を余儀なくされた。

国内トップのDetonatioN FocusMe(以下、DFM)に今シーズンから加入したHarpも、メンバーと一度も顔を合わせぬままシーズンを終えた。最近になって韓国人選手らの入国許可が下り始め、他チームの韓国人選手が続々と日本入りするなか、HarpはチームメイトのYaharongとともにソウルから釜山へと向かった。LJL優勝チームであるDFMが、釜山で開催される国際大会「The 2022 Mid-Season Invitational(以下、MSI 2022)」に日本代表として出場するためである。Harpは釜山で初めてチームメイトたちとの対面を果たした。

実際に会ってみて、メンバーの雰囲気がほぼ想像どおりだったので違和感なくスムーズに打ち解けることができたというHarp。唯一イメージが違ったのはKazuコーチの身長だけだった。「背が高くて体格も良いのを見て驚きました。もっと小柄な感じを想像していたので」と第一印象について語った。オンラインで1シーズンを過ごした今年ならではの出来事だ。

DFMは現在MSI 2022に向けて最終調整中である。Harpは「初めての国際大会ということで僕にとって非常に意味のある大会になると思いますが、それより韓国で開催される国際大会に日本代表として出場するというちょっと特別な状況なので、より活躍したいという思いが高まっています」と意気込みを述べた。

そもそもLJLの雰囲気がHarpの肌に合っていた。「LCK(韓国リーグ)にいたときより、プレイの多様性が増しましたね」と語るHarp。特にチャンピオンプールの面で、メタから若干外れるようなピックを試合で使わせてもらえたことが印象に残っている。

Harpがジリアンをピック

「LCKより自由度が高くて気持ちの面でも穏やかにプレイできましたし、そういったプレイを通じて勝利を重ねることで失っていた自信を取り戻すことができました」

そして、「LJLで成長した姿を世界の舞台で披露して、LCKでの自分のイメージを払拭したいです」とHarpは続ける。

華々しいLCKデビュー戦からの苦悩

Harpは小学生の頃から、FPSを中心にPCゲームに慣れ親しんできた。6年生の時に初めて『LoL』に触れ、チャレンジャーに到達した高校2年生の時にアマチュア大会に出場し活躍を見せた。それがきっかけでアマチュアチームのメンバーとともに当時の韓国2部リーグ「Challengers Korea」のチームに入り、プロゲーマーのキャリアを歩み始める。その後KT Rolster(以下、KT)に移籍し、しばらく2軍生活を送っていた。

ところが2021年の「LCK Summer」から1軍にコールアップされる。そして、デビュー戦で当時ディフェンディングチャンピオンだったDWG KIA(DK)を破って勝利を飾った。「僕にとってLCKは夢の舞台でした。最初は実感が湧かなかったんですけど、友達からたくさん連絡が来たり、自分でもリプレイで試合を振り返ったりして、やっと実感が湧きました」と当時を振り返る。

デビューしてからしばらくは自信もついて「自分が一番上手い」ぐらいのマインドでプレイしていたHarp。しかし試合を重ねるごとにミスが出始め、フィードバックを受けるたびに委縮していった。「新人選手の典型的なパターンだと言えると思います。委縮したことでプレイが上手くいかなくなったんです」不振に悩まされたHarpは、徐々にほかの選手にスターターの席を譲る日も出始めた。

そんななか、Harpのもとへ日本のDFMからのオファーが届く。もともと移籍をするつもりはなかった。だが、KTのチーム内でポジション争いをするより、日本の強豪チームへ行ったほうが良い経験ができるのではないか。そう考えて、自ら移籍を申し出てDFMに合流した。

KTとの契約が残っていたHarpに「移籍金を払ってでも来てもらいたい」とラブコールを送ったDFMの熱意にも、心を打たれたという。

Yutaponと築いた抜群のコンビネーション

日本語でインゲームのコミュニケーションを取るHarp

弱冠20歳のHarpにとって、DFMは初めての海外チーム。しかもBotレーンの相方は日本人選手のYutaponだ。最初のころはコミュニケーションが上手くいかずにレーン戦でも勝てず、正直「まずいことになった」と思った。ところが練習を重ねるうちに、Yutaponがインゲームの簡単な韓国語を聞き取れていることに気づく。流暢に喋れるわけではないが、韓国語をかなり理解してくれる。もちろんHarpもインゲームの日本語を勉強していたが、プレイが格段に楽になった。

フィードバックにおいても、YutaponはHarpの意見をしっかり受け止めてくれるという。

「Yutaponはもともと色々と話すタイプではないんですけど、僕の話すことはしっかり受け入れてくれるのですごく話しやすいんですよね。フィードバックもすぐに吸収して実行に移してくれるので、僕がプレイしやすい環境をゲーム内でも作ってくれています」

そのうち、多くの言葉を交わさなくても息が合うようになってきた。前に話し合ったことをYutaponがきっちり覚えていて、合わせてくれるからだ。Harpとしても、レーン戦ではあまり話さないほうがむしろプレイに集中しやすい。おかげで、早い段階からチームに馴染むことができた。

プレイ面以外では、笑いのポイントもよく似ている。もともとオンラインでスクリムが終わったときにおやすみの挨拶をしてDiscordを切る習慣がついているのだが、MSI 2022で合流してからもつい癖で「お疲れ~また明日!」と言ってDiscordを切ったことがあった。当然、隣にいるYutaponと目が合ったので「おおYutapon、おはよう!」とボケたら「おはよう!」と笑って返してくれた。他愛ないやりとりでも、ノリが合う人といると居心地が良い。

「日本はレベルが高い」ことを知らしめる選手になりたい

メンバーと実際に会って一緒に練習するようになってから、チームの実力はどんどん伸びている。とくにBot Duoの完成度は明らかに上がっているという。Harpは「最初の頃が10%だとしたら、今は85%ぐらいだと思います。1シーズンしか合わせていないことを考えると、完成度はすごく高いですね」と現状を分析した。

さらにMSI 2022では、「世界におけるDFMやLJLの地位を向上させることにも貢献したいです」との秘めたる思いも打ち明けた。自分が頑張れば、先に述べたような不振のイメージを帳消しにでき、同時にチームやリーグの地位を引き上げることもできるとHarpは考えている。

「日本で応援してくれているファンの皆さんのためにも、僕が頑張って世界の人たちに日本のチームやリーグのレベルが高いことを知らしめたいです」

日本代表としての矜持を持って、Harpは世界のステージへの第一歩を踏み出す。

(取材・文 スイニャン)


DetonatioN FocusMeが日本代表として出場する国際大会「The 2022 Mid-Season Invitational (MSI 2022)」は5月10日から韓国・釜山で開催。大会の模様はTwitchにて配信されます。

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