ICTを活用した授業アイディアを100個出すチャレンジをしたら、79個目で不思議な世界を体験した話
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ICTを活用した授業アイディアを100個出すチャレンジをしたら、79個目で不思議な世界を体験した話

尾崎えり子

通っていたお笑い養成所で放送作家の先生からこんなアドバイスをもらった。
「私たち放送作家は一つの番組の小さなコーナー企画にだいたい100以上の企画書を出します。なぜか。まず、半分くらいまでは自分の今までの経験や知識から生み出せる。次に今まで出したものの掛け算で生み出せる。その後、しばらくすると、もう今の自分からは何も出ないという状態になります。空っぽになって初めて、新しい情報がきちんと入り、自分が考えもしなかったアイディアが出せるものです。まずは空っぽにしてください。」

私が一番怖いのは野心とアイディアの枯渇なのだが、ふと知りたくなった。
アイディアの枯渇の先になにがあるのか?

誰からも「100個出してほしい」と依頼されたわけではないが、今回は数にこだわってICT活用した授業アイディアをテーマに出してみた。

100個に至るまでの経緯を説明していきたい。

①まず、キーワード出しフェーズ

マンダラフォーマットを活用。
ど真ん中のキーワードを変えたものを合計3枚作った。
1枚当たり出てくるキーワードは9×8=72。
これを3枚で72×3=216。

「読書」「グローバル」「人権」「チャレンジ」「珍しい」など水準はバラバラだが、まずは216個のキーワードを机の上に並べた。

②50個まではイケイケウェイウェイフェーズ。

とにかくクオリティより、数。
思いつくものをどんどん、どんどん、とりあえず紙に書いていく。

「情報の味覚化」「別人になりきる」「ハッシュタグで情報収集」などコンセプトと簡単な概要50個までは、ほぼ2日でいけた。
いいねーイケてるねーという感じ。
私天才だねーというイケイケフェーズ。

③61個あたりのグルグルフェーズ

同じようなアイディアしか出てこなくなる。
「あら、これ32個目で出した『壊れたパソコンを解体する』とほぼ変わらないよね」と思っては捨て、また数分後に「あ、これ32個目のやつと一緒だ」と、ひたすら同じところをグルグルし始める。

ちょっとしか違わないものでも、とにかくどんどん付箋に書いて捨てていく。空っぽにするんだ。捨てた付箋は45枚。
ICTが絡まないが良いアイディア付箋は保存35枚。

④67個で完全にパタッと止まって一歩も動けないフェーズ

絞りだして数個は出たが、もう出ない。
似たようなアイディアすら、もう出ない。
一応寝る時は枕元に紙とノートを置いていたが、寝ても何も思いつかない。

⑤70個目からはドラえもんに頼るフェーズ

ドラえもんの秘密道具から「何かICTで実現できないか」と考えた。ガリバートンネルはウェブカメラの位置を変えたら体験できるんじゃないか、とか。好きなテレビ番組のコーナーから「このコンセプトを授業で実現できないか」と考えたり。
ネットで探して、面白そうなコンテンツに頼り始める。
それでも10個も出せない。苦しすぎて、似顔絵かきに逃げ始める。

⑥79個目で人生初体験の不思議な世界へトリップ

もう、検索ワードすら思いつかなくなる。
パソコンの前に座っても、全く手が動かない。
寝てみたけど、やはり何も思いつかない。
空っぽや。もう何も残ってない。。あとまだ21個考えないかんのに。
リフレッシュがてら夜、図書館に行く。

なんということだろうか。
本棚に並ぶすべてのタイトルがすごい勢いで私の頭に文字としてダイレクトに入ってくるではないか。
こんな感覚初めてだ。なんだ、この世界。
普段、興味がなくて絶対に読まない本も、私にアピールしてくる。
「俺にヒント詰まってるぜ」「私を開いてみなさいよ」

おいおい、本が私に話しかけてきてる。冗談だろ。
声が聞こえる本を片っ端から開いていく。
漫画みたいに本のタワーを横につくり、貪る。
「この本の内容を子どもたちに伝えるとしたらどんな授業が良いか?」
どんどん思いついたまま、本に促されるまま書きなぐっていく。

空っぽの頭がものすごい勢いで情報を吸収していく。
追いつかない、待ってくれ。もう少し、ゆっくり。
夜の図書館だったこともあり、静かな中で感覚が研ぎ澄まされている。
入ってくる情報が痛かったり、甘かったり、柔らかかったり。

介護の本も、医療の本も、ロゴデザインの本も、建築の本も、色の本も、レシピ本も芥川龍之介の本も。谷川俊太郎さんの詩も。日本の歴史も。

私の頭の中で飛び跳ね、くっつき、弾けて、消えていく。

ああ、、空っぽにするとは、こういうことなのか。
先生が言っていたことは、こういうことなのか。

3時間くらいほぼランナーズハイのような状態だった。

トンネルの向こうは、本が話しかけてくる不思議な世界でした。

⑦残り3個は当事者たちに相談フェーズ

不思議ゾーンが終了し、残り3個。

生駒で朝7時半から「子どもたちが大人の相談に乗ってくれる」春休みイベントが開催されていた。
すぐに申し込み、小学生や中学生に相談をさせてもらった。

「学校や授業を楽しくするアイディアが出なくて困っている。20個ほしい」と少し欲張り目に書いてみた。

そしたら、小学2年生の女の子から「学校をおもしろくするなら、『じぶん達で考えること』を大切にすれば良いのでは?」という、このアイディア100個の集大成のような答えをもらった。
やっぱり新たな人と話すのも大切。


「授業作家」という肩書をしばらく名刺に書いてみよう。

約1ヵ月かかった旅はようやく終着点へ。
ICTを活用した授業アイディア100が完成。
「毎日ちょっとずつ」「新しいツール」「イベント」などなど幾つかに分類。

放送作家がテレビの企画を考える人なら、私は「授業作家」という肩書で楽しく面白くできる授業を裏側で先生と一緒に考える人になりたい。

実は今、授業アイディアは112個くらいになっている。
先日、ほぼ日のアースボール開発チームの皆さんとお話をする機会をいただいた。「アースボールを授業でどう使うか?」を実践し、レポートしていくことになった。動かしていると、どんどん授業アイディアが浮かび、12個増えている。こういう面白いツールは授業作家の腕がなる。

アイディアは実践して初めて価値を持つ。
今回思いついた100のアイディアの種は先生たちと相談しながら、アップデートし、実践し、どんどんシェアしていきたい。


補足:去年出した授業アイデアの中から実践した授業はこちらに簡単にまとめている。
授業作家として一番おすすめ作品は「SNSの使い方授業」。


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尾崎えり子
ICT授業作家。 株式会社新閃力代表取締役社長。(株)市進ラボ社外取締役。奈良県生駒市教育指導課教育改革担当。千葉県流山市ICT教育推進顧問。 社長兼公務員として、子ども教育をさまざまな側面から「面白くする」ことがしたい。