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あのおいしい瞬間を…また

5年前、大学を卒業して、芸人になるために島根から上京してきた。


芸人養成所のお金が40万円ちょっとかかり、それを一括で払ったり、引越しにかかったお金で、大学4年間バイトでコツコツと貯めていた貯金がほぼ無くなった状態で東京にやってきた。


4月に上京して、すぐにバイトを始めたかったのだが、中々バイトが決まらずに、お金が全く無かった。


だから、実家が農家だった事もあり、送られて来たお米を炊いて、それにこれまた送られて来た梅干し添えてご飯にしていた。


それから2週間、1日1食のお米と梅干しだけの生活が続き、気づけばお米が底を尽きかけていた。


お米と梅干しが食べられるだけ、ありがたいのだが、そろそろタンパク質を取らないとおかしくなりかけた頃、


やっと派遣の引越しのバイトが決まり、日払いで初めて給料を貰った。


バイトが終わり、そのお金を握りしめ、街を歩いてたら、ある中華料理屋さんが目に入った。


"定食500円"の看板に惹かれ、

『20日もお米と梅干し以外食べてないし、500円なら良いよねぇ。』


なんて、自分に言い聞かせて、店に入った。


注文は、レバニラ定食にした。



しばらくすると、外国人の定員さんがテーブルまで料理を運んでくれて、僕の目の前に茶色と緑の塊が、香ばしい匂いを香らせながら現れた。



僕はゆっくりと箸でレバニラを掴み、それを口に運んだ。






急に涙が溢れた。




もう、涙が止まらなくて、止まらなくて、ポロポロと大粒の涙をこぼしながらレバニラを頬張った。


それに気づいた店員さんは引いてたというよりは、やや訝しげな表情を浮かべながらこちらを見ていた。



人生で食べたどんな料理よりも、この時食べた『500円のレバニラ定食』が1番美味しかった。


僕は全て食べ終わって、店を出た。

何とも言えない幸せな気持ちになった。



次の日、日雇いのバイトが終わり、



僕はまたレバニラ定食を食べた。







ただのレバニラ定食だった。


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