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2022年12月25日 実は一番嬉しかったこと

三遊亭朝橘年忘れ独演会@かふぇ あたらくしあ

12月25日「かふぇ あたらくしあ」が初めて開催する落語イベントが無事終了した。

私は今年3月まで静岡県のエフエムラジオ局「K-mix」に勤務していたサラリーマンだった。35年在職中のうち33年半を番組編成・制作畑で仕事をしていた。
まぁ、こういうケース=異動もなく、ひとところにずっとい続ける、というのは民放放送局では極めて稀なケースだが、私の場合、様々な事情が絡み合って、結果としてずっと番組を作り、番組編成を考えていた。

そして、そのradioman時代、結果的に私プロデュースの最後の番組となったのが、三遊亭朝橘とそれまでも深いお付き合いをしていた5人組ファンタジーユニット「STARMARIE」のメンバーでもある中根もにゃがパーソナリティを務める「もにゃと朝橘」だ。
幸いなことに私が早期退職した後も、この番組は継続されている。

朝橘師匠との出会いや、何故師匠に番組パーソナリティをお願いしたかについては、楽しくも長い話になってしまうので、今回は端折る。

ただ、私が2020年9月3日に勤務先を早期退職することを決め、翌年春にカフェ経営をするために地下活動をスタートさせたその年の11月ごろ、つまり今から1年くらい前に、師匠には会社を辞めることと、神保町でカフェ経営をするすることを打ち明けていた。
そして、オープンの暁にはいつか絶対店で師匠の独演会をやりましょう、ともお願いをしていた。

25日、それが叶ったわけだ。

今回の独演会では朝橘師匠の2席に加え、店に鎮座する1926年(昭和元年)製大型蓄音機「クレデンザ」が再生するSPレコードで、7代目林家正蔵と24代目昔々亭桃太郎の一席をお客様と朝橘で堪能する、といううちの店らしい落語会に。

結果的にお客様は
1.師匠のご贔屓筋
2.あたらくしあのご常連
3.「もにゃと朝橘」の番組リスナー
と、実に理想的な方々にご参集いただいた。

その中に、前職時代からお世話になっている大手通信会社にお勤めのIさんがいらした。

Iさんはこれまでも3回ほどお運びいただいているが、前回(1週間前ほど前)いらした時に、「妻の都合がつけば独演会に伺いたいので、聞いてみます。」とおっしゃっていた。

その言葉には「あくまでも奥様の都合がついたら二人で来場したい」という意味で「お一人で行くことは考えていない」というニュアンスが含まれているような感じだった。

そして実際、奥様の都合がついて揃ってお越しいただいた。

終演後Iさんは私に「家内は実母の介護で家から出られることが滅多にないんです。今日は稀な外出です。」と。

どうやって外出できるようになられたかについては伺わなかったが、「家内にはとてもいい日になったようです。」と。

お二人は終演後も店に残られて別注文をしていただき、蓄音機で奥様が聴きたいとおっしゃったバッハのブランデンブルク協奏曲を聴かれ、着替えが終わった朝橘師匠、そして私とお話しされて、その時間を楽しんでいらっしゃるようだった。

Iさんが「いつまでもいたらご迷惑だから、そろそろ失礼しよう。」と奥様に諭していらしたが、「気になさらずゆっくりしていってください。」と私と家人。

老々介護。

そんな厳しい環境の中で、貴重な時間をこの会に充てていただいた。

そして、束の間ではあるけれど心に潤いを充していただいたのであれば、これほど嬉しいことはない。

人それぞれに心を豊かにする「場所」と「時間」があればいい、と思う。

「あたらくしあ(Ἀταραξία)」という言葉の意味は「心が平静な状態にあること」という意味。
そして古代ギリシャ・ストア哲学の巨星、エピクロスは「アタラクシアが本当の快楽」と説いた。

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