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クレデンザ1926×78rpmの邂逅 #07~ヴァイオリンの貴婦人あるいは求道者?G.d.ヴィート モーツァルト『ヴァイオリン協奏曲第3番』

ジョコンダ・デ・ヴィート(Gioconda de Vito, 1907年7月26日 - 1994年10月14日)
私は彼女の熱心なファンではないが、彼女のヴァイオリン、というより彼女の演奏家としての佇まいに、何となくいいイメージを持ってきた。
若くしてデビューしたものの、調子に乗ることなく勉強に励み、演奏家としてよりも早く、なんと17歳で音楽院の教員になる、という不可思議とも思える身の振り方。
そして、1948年にレコード・レーベルEMIの重役との出会い、録音を開始。51年に彼と結婚、62年には演奏活動から身を引き、その後一切ヴァイオリンを手にすることはなかった・・・、といった話を聞くにつれ、彼女の本心がどこにあったかは知る由もないが、一本筋の通った美学のようなものを感ぜずにはいられない。

レパートリーも限定的であったが、バッハモーツァルトブラームスは残された数少ない録音からも立派だったことがよく分かる。

イタリアのヴァイオリニストと言えば、「カンタービレ」というステレオ・タイプなイメージで語ってしまうことも多いが、デ・ヴィートのヴァイオリンは、もちろん歌心はあるが、決して上滑りせず、内へ内へと迫っていくような「歌」だ。
むしろ、ヨーゼフ・シゲティのそれに近い。
だからこそ、上に挙げた作曲家の作品を、彼女が好んで取り上げたこともよく分かる。

【ターンテーブル動画】

このモーツァルト『ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216』1949年の録音。

サー・トーマス・ビーチャムロイヤル・フィルハーモニーとの共演だが、「エレガント」の代名詞のようなビーチャムの作る音楽に乗りながらも、そのペースにはまりすぎることなく、自分の信じる道をまっすぐ進み、その上でオーケストラとの調和、ちょっとした「遊び」のあるやり取り(特に第3楽章)が素敵なところだ。

ほぼ同世代で、その清新さではどこか似たところのあるエリカ・モリーニ(1904年-1995年)と共に、ジネット・ヌヴーイダ・ヘンデルとは異なる道を歩んだデ・ヴィートの思い出をクレテンザ蓄音機で。


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