マガジンのカバー画像

ブルックナー関連まとめ

8
ブルックナー関連の記事についてまとめています。
運営しているクリエイター

2021年4月の記事一覧

なぜバッハとブルックナーは特別なのか-私のクラシック音楽遍歴

 聖地巡礼するほど好きな作曲家というのは、そうそういるものではない。ちなみに私にとってのそれは、バッハとブルックナーである。  バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)は言わずと知れたドイツ東部で活躍したバロック時代の音楽家であり、ブルックナー(Joseph Anton Bruckner, 1824-1896)はウィーンで活躍した後期ロマン派時代の音楽家である。 1.音楽との出会いと別れ 今でこそガチガチのクラシック音楽ファン(それもドイツ

ブルックナーの交響曲ジャンルを超コンパクト概説

 通し番号がないものも含めて全11曲にも及ぶブルックナーの交響曲ジャンルの全体像をできるだけ簡潔に見ていきたい。  ポイントは「ウィーン移住」と「第一次改訂期」である。 1.交響曲全11曲の概要2.交響曲第2番ハ短調で独自様式を確立 1868年の秋、ブルックナーは故郷のリンツ地方から帝都ウィーンへ移り住む。  ウィーンは音楽の都。  自作発表のチャンスも多い。意気込んで取り組んだニ短調交響曲は、しかし最終的に日の目を見ることもなくボツ[無効]に。  それから丸二年が経過し

ブルックナーの交響曲聞き方ガイド(初級編)

 第4番《ロマンティック》や第7番の次に聞くべき交響曲はどれだろうか?  実は、それは第1番ではない。 1.ブルックナーの交響曲第1番はマニア向け 有名どころの第4番や第7番に慣れ親しんだからといって、第1番から順に聞いていくのはおススメしない。  第1番や第2番は、はっきり言って地味である。  交響曲ジャンルにおけるブルックナー独自様式の確立を歴史的に見ていくという点ではいずれも重要な作品(第二交響曲においてブルックナーは交響曲ジャンルにおける自己のスタイルを確立した)

ブルックナーの交響曲は本当にアルプス的かという問いから見えてくるもの

 ブルックナーの交響曲が語られるとき、しばしば「アルプス」という固有名詞が持ち出されることがある。これは日本に限った話ではない。ヨーロッパにおいてもそのような認識が一部にはあるようだ。  しかし、これは本当なのだろうか。ブルックナーの交響曲はアルプス的だと言ってしまっていいのだろうか? 1.ブルックナーとアルプスが結びつけられるワケ前提となる地理的条件  ひとくちにヨーロッパと言っても、たとえば北大西洋や北海の沿岸国の人々(フランスやイギリス、オランダの人々、いわゆる西欧