マガジンのカバー画像

バッハ関連まとめ

10
バッハ関連の記事についてまとめています。
運営しているクリエイター

#オルガン

シャコンヌとフーガ、メヌエット-暗明暗のBACH音楽

 バッハの音楽には、暗-明-暗の三部構成を明確に聞き取れるものがいくつもある。  短調の主題(暗)で始まり、長調の中間部(明)を経て、短調主題の再現(暗)で終わる三部構成は、シンプルながら効果抜群である。  今回は、そのなかでも中間部が圧倒的な存在感を放つ三つの名曲をご紹介。 シャコンヌ 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より、シャコンヌ。    言わずと知れたシャコンヌ。  ここに聞くのは21世紀のシャコンヌ演奏最前線である。  変奏曲の一種としてのシャコン

トロイトマン・オルガンで聞くバッハのオルガンコラール

 ベルリンからハノーファー経由、合計3時間の鉄道の旅を経て、中世以来の鉱業都市であるゴスラーに到着する。  ゴスラー近郊のグラウホーフには聖ゲオルク修道院がひっそりとたたずみ、我々を聖なる時間へと導く。  修道院教会のオルガンはバッハ存命中の1737年にクリストフ=トロイトマンによって製作されたもので、幸いにも、現在に至るまで当時の姿をほぼそのままにとどめている。  ジルバーマン系のオルガンに典型的な、波打つようなファサードが実に美しいが、なにより、オルガンのさまざまの音

なぜバッハとブルックナーは特別なのか-私のクラシック音楽遍歴

 聖地巡礼するほど好きな作曲家というのは、そうそういるものではない。ちなみに私にとってのそれは、バッハとブルックナーである。  バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)は言わずと知れたドイツ東部で活躍したバロック時代の音楽家であり、ブルックナー(Joseph Anton Bruckner, 1824-1896)はウィーンで活躍した後期ロマン派時代の音楽家である。 1.音楽との出会いと別れ 今でこそガチガチのクラシック音楽ファン(それもドイツ

オルガンコラール史におけるバッハ-自由奔放な最終相続人

 オルガンコラールというジャンルにおいて、バッハはどのように位置付けられるのか。  同一コラール旋律に対する複数人の作品の聞き比べを通じて明らかになるのは、このジャンルの「最終相続人」としてのバッハである。 1.オルガンコラール聞き比べ 今回はお題(コラール)はこちら。  マルティン・ルターが作詞したコラール《Komm, heiliger Geist, Herre Gott》(来たれ、精霊、主なる神よ)である。ルター本人が手がけたということもあって多くの音楽家がこのコラー

BACH音楽の精髄としてのコラール-ライプニッツとオルガニスト・バッハ

 16世紀から17世紀にかけて、ドイツ・ルター派系の職業音楽家の重要な仕事は「コラール系楽曲の新作アレンジの提供」であった。バッハにおいても事情は異ならない。むしろ彼の場合、就職先の都合上、仕事のほとんどがコラール系楽曲の新作アレンジであったとも言える。 1.コラールとは? ドイツのルター派におけるコラールは、教会に集う会衆のための教会歌である。歌詞は母語であるドイツ語で書かれてあり、旋律は平易で歌いやすい。  当時のカトリックは、そうではなかった。讃美歌(ラテン語)は特権