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The SUICIDE of RACHEL FOSTERまとめ考察

以下The SUICIDE of RACHEL FOSTERのネタバレ・憶測を含む内容となっております。
閲覧は自己責任でお願いします。

オープニング


1993年12月
モンタナ州ルイスアンドクラーク郡の山間にあるホテル「Timberline」を10年振りに訪れたニコル・ウィルソン。

ニコルにとって、かつての生家でもあるそのホテルは、父レナード・マクグラスが自身の同級生であるレイチェル・フォスターと不倫関係を結んでいた忌まわしき場所でもあった。

10年前の12月27日。
レイチェルが自殺を図ったその日、母クレア・ウィルソンと共にホテルを出てから遠く離れたポートランドで生活していたニコルだが、一年前にクレアが、続けてレナードが亡くなったため、ホテルを相続することに。

母の遺言に従ってホテルを売却するため、査定を行うつもりでホテルに一人足を踏み入れたニコル。
弁護士ジェンキンスの留守番電話に従い、かつての自室で「管理者用の鍵」を手に入れる。

しかし、そこへ専用回線を通じてかかってきたFEMA(ヘレナ連邦緊急事態管理局)のアーヴィン・クロフォードからの電話で、天候悪化により外は危険であることから、ホテルでの滞在を勧められる。

ホテルに滞在する気はないニコルは踵を返して車へ戻るが、車のシートに置いたはずの車の鍵がなくなっていることに気付く。
結果的にニコルはホテルでの滞在を余儀なくされた。

※留守番電話

「回線が止められた後にジェンキンスが電話をしてきていること」これ自体がおかしいが、この時のニコルは疑問にも思っていない。
電話回線が本当に止められているのなら、これは電話の音からジェンキンスの留守録まで全て録音テープによるものだったと思われる。

※専用回線

アーヴィンの部屋に「無線送受信機」があったことから、携帯電話というよりはトランシーバーに近いものだろう。
ラストシーンでジェンキンスが「やっと繋がった」と言っていることから、元々ホテルの緊急用無線で、アーヴィンがそれまで他の無線機からの受信ができないように、妨害電波等を飛ばしていた可能性がある。

※車の鍵

アーヴィンの部屋にニコルの車のエンジンについて詳細に調べたものがある。
今回はニコルが車の鍵をシートに置いていってくれたおかげで鍵を盗むだけで済んだが、それがなければ故障に見せかけて壊す等の措置を取るつもりでいたんだろう。

1日目〜2日目


アーヴィンの助けもあり、ホテルでライフラインを確保できたニコルは査定の続きを始める。
ホテルは至る所に老朽化のあとが見られ、2階に至っては修繕もされず放置されていた。

そんな中、ニコルに「ホテルの売却はするな。レイチェルは生きている」という警告の電話がかかってくる。

※ホテルの現状

レナードに修繕の意志はあったようだが、支出管理表に赤が立っていることや見積書の「CANCELLED」を見るに、経済的にできなかったのだろう。
レナードとレイチェルの不倫は郡中を騒がす大スキャンダルであり、更にホテルにはレイチェルの霊が出ると噂まで立っていた。
実際ホテルには脅迫文まで届いている。
経済面を担当していたクレアが去ったことも重なって、Timberlineが経営難に陥ったのは言うまでもない。

※警告電話

これもアーヴィンの手によるものだろう。
おそらく内線機能のようなものを使ったのではないだろうか?

3日目


送電線が切れたことで不安定になった電力を回復するため、非常用発電機を起動させることになったニコル。
電力の回復は成功したが、そこには今は存在しないブランドの口紅が置かれていた。

4日目


何者かの作為を感じたニコルは、レナードが残したレイチェルとその周辺の情報をかき集める。
これにより、

  • レイチェルはミズーラ群のウィッシャード・クリークで投身自殺を図ったこと

  • レイチェルは妊娠9週目だったこと

  • レイチェルは遺書を残していたが、その信憑性に疑問があること

  • レイチェルの死後もレナードやニコルの友人がレイチェルの姿を目撃していること

  • フォスター牧師は厳格で、レイチェルにも厳しかったこと

…などがわかる。

5日目


父の夢を見るニコル。
彼の口から語られる愛の言葉は、自身に向けてではなくレイチェルへのものだった。

6日目


アーヴィンが入手したという、レイチェルの霊について探りに来たTVクルー達の会話音声を聞いたニコル。
スタッフ達が宿泊した117号室を訪れると室内はそのままになっており、そこで実際に録画された映像を見る。
幽霊が出るなんて噂を立てられ、「変人レナード」などと揶揄するスタッフの姿を見て、かつての生家が廃れていくことに失意の念を覚えるニコル。

※レイチェルの霊

テープはその殆どが霊を見たと騒ぐスタッフの姿だが、最後に誰もいない筈のドアが勝手に閉まっている。

アーヴィンの部屋に「GHOST SIGHTING(幽霊目撃)?」と書かれ、集められた心霊写真があることから、レイチェルの霊は本当にいたんだろう。

7日目


クリスマス・イヴ。
レイチェルが自殺を図った83年より一年前のクリスマス、母と叔母の家に遊びに行っている間にレナードとレイチェルはここで愛を育んでいたという事実に失望するニコル。
そんな彼女の耳に突如「Clinky(チャリンチャリン)」の音が響く。

アーヴィンには聞こえないというその音を辿ったニコルは、その音が舞踏場に吊るされていたシャンデリアのチェーンの音であったことを思い出す。
そして、かつてホテルが賑わっていた頃に撮られた「舞踏場の写真」に行き着いたニコル。

12月23日はいつもホテルで盛大なパーティーを開いていたこと、クレアの視線の先にいたレナードがレイチェルを見つめていたこと、そんなレイチェルに嫉妬心を抱いていたことを思い出す。

※謎の音

アーヴィンの部屋「CLINKY CHRISTMAS 」のカセットテープがあることから、この音はアーヴィンが出していたことがわかる。

8日目


教会で目覚めたニコル。
彼女はかつて「夢遊病」を抱えていたことを思い出し怯えるも、教会で目覚めたのは何か理由があるのかもしれないと思い立ち、教会を探索する。

そこで彼女は「秘密の倉庫」の存在を思い出す。
かつてレナードに出されたなぞなぞを頼りに「秘密の倉庫」に辿り着いたニコル。
しかし、そこは倉庫ではなく「レイチェルの部屋のレプリカ」と化していた。

レイチェルの部屋で見つけた「アイスホッケーのオルゴールの鍵」を使って、オルゴールの中身を出したニコル。
そこにはレナードが入れたと思われる、ニコルのアイスホッケーの金メダルが入っていた。

83年12月27日。
ミズーラ郡でアイスホッケーの試合に勝利したニコル。
喜びに満ちて帰宅した彼女だったが、父と母が喧嘩を始め、何も知らされぬまま母と家を出ることになった。

※レイチェルの部屋のレプリカ

結局この部屋を誰が作ったのかは明言されていないが、ニコルの記憶を呼び覚ますためにアーヴィンが用意した説の方が濃厚。

この部屋にレナードの屋根裏部屋の時計の音が聞こえていることから、まだここを倉庫として使用していた頃、クレアはここでレナードとレイチェルの声を聞き、彼らが不倫関係であることを知ったのだと考えられる。

9日目


レイチェルが亡くなった日、クレアに「中2階の物置の扉を閉めて」と言われたことを思い出したニコルは物置へ向かう。

そこには自身のホッケースティックでレイチェルを殺害する様子を模したマネキンが置かれていた。
予想外の光景に怯え、アーヴィンに連絡するニコル。
しかし、電話の奥にいつもの優しいアーヴィンはいなかった。
冷たい声で「探索を続けろ」とニコルを促すアーヴィン。

言われるがまま封鎖された扉の向こうへ進んだニコルが目にしたのは、ホテルについてからの出来事が全て仕組まれたものであったという痕跡の数々だった。

アーヴィンはFEMAの局員などではなく、レイチェルの弟だったのだ。
フォスター牧師の元、抑圧されて育った彼の唯一の光であったレイチェル。
その彼女の死の真相を突き止めるべく、ニコルをおびき出し、真相を探るよう仕向けたのだ。

更に先へ進むように言われたニコルは、父の屋根裏部屋でレナードが残した遺書とも言えるビデオテープを見る。
そして、その部屋に置かれていた「クレアの車の鍵」を手に取るニコル。

アーヴィンは「僕が真相について教えられるのはここまでだ」とニコルにいう。

クレアの車の鍵を使い、ボンネットから毛布を取り出したニコル。
それを水につけると染みこんだ血が滲み出し、更に中からレイチェルの歯の矯正器具が出てきた。

あの83年の12月27日。
ホテルではフォスター牧師による貧しい人への炊き出しが行われており、そこにはレイチェルもいた。
クレアはその時、炊き出しの準備の合間を縫ってレイチェルをニコルのホッケースティックを使用し撲殺。
毛布に包んだレイチェルの遺体と共にクレアをホッケーの試合会場へ送り、試合中抜けだして遺体をウィッシャード・クリークの谷底へ投げ捨てたのだった。

真相を知り、満足したアーヴィンはニコルが止めるのも聞かず吹雪きの中外へ行ってしまった。
一人ホテルに残されてしまったニコル。
そんな彼女の背後に何者かが忍び寄る。

※中2階

なぜクレアがニコルに「中2階を閉めろ」と言ったのか作中で明かされてはいないが、

・中2階が殺害現場でそこから遺体を運び出すのに、両手が塞がっていたため閉めることができなかった
・遺体を車に積みこむのにニコルを遠ざける必要があった
・または上記の両方

…などの理由が考えられる。

※アーヴィンの真意

本編で語っている通り、アーヴィンは復讐等ではなく純粋に「ニコルとレイチェルの死の真相を解き明かしたかった」のだろう。

アーヴィン視点でのレイチェルは唯一分かり合える存在のレナードに出会い、幸せの真っ只中だった。
彼が真っ先に自殺を疑ったのは言うまでもない。

何故クレアがポートランドへ持っていった車の鍵をアーヴィンが持っていたのかはわからないが、車の毛布を見つけたアーヴィンはレイチェルが殺害されたことを確信。
更にレイチェルの遺体は当日ホッケーの試合でミズーラにいたニコルとクレアの近くで発見されている。
しかし、この事実だけでは犯人がクレアであるかニコルであるか、またレイチェルとその二人の間で何があったのかまでアーヴィンには知るよしもなかった。

クレアが非協力的であったこともあり、ニコルにはレイチェルの死に対して自身の意志で向き合って欲しいという意向があったのだろう。
それで、本編であの様な行動を取ったと思われる。

エンディング


排ガス自殺の準備が整った車内で目覚めたニコル。
奇しくも今日はレイチェルの命日である12月27日。
怒りや憎しみに身を任せ死を取るか、愛を持ってそれを制するか、ニコルは選択を迫られる。

※ニコルの自殺行為

この作品は随所にシャイニング(映画/小説)リスペクトが見られるが、シャイニングにおける幽霊はホテルに染み付き、やってきた管理人をそそのかしては家族を殺させるという存在だ。

このホテル「Timberline」にもレイチェルの霊が染み付いている。
おそらく彼女はやってきた関係者に無意識に自殺をさせるようそそのかす様な存在となっていたのだろう。
レナード流に言うなれば、レイチェルは「見捨てた者、それに気付かなかった者を憎んでいる」状態だったということだ。
それに真摯に向き合い、愛することで解決できるか…がニコルに課せられた課題だったと思われる。

また、小説版シャイニングのラストでは、幽霊にそそのかされた管理人が息子を手に掛けようとするも、ギリギリのところで本来の自分に戻り息子を逃している。

車中のニコルの様子を見ると、エンジンをかける前は死を肯定しているように見えるが、エンジンをかけた後は死を恐れているように見える。
つまり、あの時ニコルの中には、レイチェルの意志に添うニコルと本来のニコルがいたのだろう。

しかし、どちらにせよ何かに縛られることに変わりはなく、ニコルにとってそれが幸せであるとは言えない。

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