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私は撮る。彼は、それが嫌いみたい。

彼との付き合いはもう3年だ。

「3年という月日は長いか短いか」と言えば、私にとっては長い。もう20代も後半に差し掛かっている。所謂結婚という文脈で捉えるならば、”年頃の女”というのは、まさに私に違いない。

彼が結婚の意思がないわけではない、むしろ私よりも真剣に考えている。なんたって私より先に『ゼクシィ』を買ってきたのだから。

そうそう、私達は今同棲している。それも1年程度。お互いに結婚を意識した同棲というやつだ。

同棲生活が順調かどうかと聞かれれば順調と答える私だが、彼にとってはそうでないらしい。一年も一緒に暮らしてみれば、そりゃお互いに嫌なところなんてたくさん見えてしまうだろう。

彼は特に私が写真を撮ることが嫌いなようだ。

私の普段の生活にカメラは欠かせない。小さな1LDKの部屋の中での、どんな些細な出来事だって、それはかけがないのない一瞬だから撮っている。

もちろん、普段仕事に出かける時も首からカメラをぶら下げて外にでる。

写真を撮ることは私にとって息をするような行為だ。崇高な行為でもなければ自傷行為でもない、ごく自然な行為。

彼は写真を撮られることはどうやら嫌いで、家の中でぐーたらしている可愛い彼氏を撮ろうとしようともすればすぐに近づいてきて、最短撮影距離よりも近づいてきて撮らせてくれない。

髪の毛を整えて服を着た彼はだれよりも愛おしく、そしてカッコいいと思うが、普段のだらしない彼氏はもっともっと、さらに愛おしいのだ。

しかし、同棲をはじめて、思うように彼を撮れない私は次第にストレスが溜まっていく。それもそうだ、写真を撮ることが自由にできないから、低酸素状態になっているのだもの。

だから私は次第にインスタグラムやTwitterで見かけた男女問わず被写体さんに声をかけて撮らせてもらうことが増えた。

彼は人一倍嫉妬深いから最初は内緒にしていたが、まぁばれないわけがないのでバレて叱られた。

「事前に言ってくれたら撮りに行っていいよ」なんていうけれど、内心絶対嫌がっている。

だから私はまたひっそりと撮りに行くのだが、それがまたバレてしまうと修羅場の誕生である。

私は、たとえ声をかけた被写体の方が男性でも決して浮気などはしない。なぜなら、私は彼を愛しているからだ。彼と結婚したいと思うし彼の子どもも授かりたい。被写体の方が異性であれば彼がいることや同棲していることもちゃんと説明しているし、指輪をつけて撮影に挑んでいる。今の所危ない目にあったことは一度もない。

単純に、彼では満たされない写真欲を外で発散しているだけなのに、どうして彼はそんな私の趣味に口を出すのだろう。

私は彼を撮りたくて、撮りたくて、撮りたくて仕方がないのにそれができないから外に行く。

恋人関係、結婚関係を、私は、言い換えれば「愛情と性の独占契約」と認識していて、それに反することは一切していない。

でも、彼にとってはそれに「写真の独占契約」の意も含んでいるかもしれない。


私は撮る。彼は、それが嫌いみたい。




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