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初めての救急車

退院して5日後、その日は下半身とお腹への違和感で朝5時過ぎに起きてしまった。
何となく寝付けず、トイレで用を足そうとした時、ゾッとした。

自分の下半身が血まみれだったのだ。

すぐに旦那を叩き起こし、かかりつけの病院に電話した。
自分の置かれている状況を説明していたら、すぐに病院へとのことだったので、着替えて準備をした。

すぐさま折り返しの電話がかかってきた。
S先生であった。

「救急車で来てください。場合によってはうちの病院で応急処置して転院します。とにかく安全に来てください」

と、言われ、人生で初めて救急の番号を押した。

外は曇り。夏の朝の匂いがした。

救急車がマンションの入り口に着くまで、
永遠と感じられる不安な時間を過ごした。

救急隊員の方はとても優しく、励ましてくれた。

かかりつけの病院に許可をもらっていること、
今妊娠23週目に入りそうなこと、
そして、先日退院したばかりだということを救急の方に申し出た。

すぐさま確認をしてくれ、病院に向かった。
初めての救急車、まさか自分が乗ることになろうとは。

朝のラッシュ時間近くで、かなり交通量があったと思うが、ものの10−15分くらいで病院に着いた。

病院で出迎えてくれたのは見慣れたS先生と看護師さんだった。

「大丈夫?今すぐに確認しますね。痛みとかはない?」

などいろいろ質問されつつ、応急処置室に連れて行かれた。

すぐさま点滴ルートを取られ、NSTそしてエコーが施された。

「赤ちゃんは大丈夫!とりあえず安心してね!でもこれはもうお腹に入れておくのは難しい。手術で閉じたところがまた開いてしまった。」
と、言われた。

頭が真っ白だった。

お腹に入れて置けない?子供が23週で出てきてしまう...?
大丈夫なのか?

「ここでは対応できないので、転院になります。僕の先輩がいる病院に話がつけられたので、そちらに応急処置をしてから救急車で行くことになります。最後まで見てあげられなくて申し訳ないね。でもここよりは先輩のいる病院の方が設備が整っているから。」

S先生に申し訳なさそうに言われた。

後で聞いた話だが、S先生はその日、大事な論文の発表があったらしい。
大変な時なのにこちらにきてくれて、処置や病院への連絡をしてくれたらしい。

またしてもお腹の張り防止の点滴を入れられ、赤ちゃんの脳と肺の発達を促す筋肉注射が行われ、転院が決まった病院へ行く手筈となった。
処置が終わり、救急車の準備やカルテなどの準備中、旦那が処置室に入ってきた。

何も言わずに手を握ってくれた。

またここから永遠と感じる入院生活が待っていた。


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