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位置的頭蓋変形症を子どもの疾患として認識して医学としての対応を

 0歳からの頭のかたちクリニック東京日本橋でヘルメット矯正治療に携わっております小児科医の草川です。現在木曜日の外来を担当しています。

 私は、小児科医ですので、本来、頭の形の専門家ではありませんでした。しかし、このクリニックで診療を始めてから月日が経ち、今では、このクリニックで月曜日に担当している西巻先生とともに、最も多くのお子さんの頭の形の治療に携わっている小児科医の一人となってしまいました。

 一昨年から当クリニックで頭の形を本格的に診療し、数多くの医学的データをもとに治療を行う機会を得ていますが、実は、世界に比較すると、日本のこの現状は、30年は遅れていると言わざるを得ません。1990年代に世界は、生後3-5カ月頃の乳児が睡眠中に突然亡くなってしまう乳幼児突然死症候群(SIDS)が疾患として広く認識され、その発症に「うつぶせ寝」が関係しているということが疫学的に判明したことから、1992年には、アメリカで仰向け寝キャンペーンが始まり、それまではうつぶせ寝が多かった同国でもあおむけ寝にかわり、結果として、SIDSは劇的に減少しました。しかし、同時期に、急に増加してしまったのが、あおむけ寝による頭蓋変形でした。

 欧米ではこの出来事をきっかけに、この頭蓋変形を疾患としてとらえ、多くの研究が開始され、2000年代には疫学、診断、重症度判定、原因追及、予防法、治療法などがほぼ確立しました。そして、その後も研究は続けられ、それまでの研究結果が医学的に検証され、今では、小児科医のバイブルと言われる教科書にも、疾患として詳細が明確に記載されています。

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 しかし、一方の日本ではどのような状況だったのでしょうか?2000年代後半から一部の脳神経外科の先生、形成外科の先生により、ヘルメット治療は開始されていましたが、小児科医の認識は、自然に治るので病気ではない、というものでした。そして、あっという間に20年が経過し、ようやく、私を含め一部の小児科医が、これではいけないと動き出したのがコロナ禍の直前でした。

 そして、世の中がコロナ禍を乗り越え、通常を取り戻した近年、ようやく、頭蓋変形を疾患としてとらえるようになってきました。ただ、ここで気をつけなければならないのは、頭蓋変形はいわゆる形の問題、すなわち、美容の問題として扱い、親御さんが希望すればなんでも治療してしまったり、治療といっても、医師の診察は診断のみで、その後は医師の診察なしに治療が行われたり、とその内容には大きな差があることも否めません。

 当クリニックでは、医師の診察の元、客観的データに基づいた治療を行っています。医療として、診断、治療を行うことを考えれば当たり前のことではあります。また、日本における頭蓋変形に関するデータはまだまだ乏しいのが現状のため、今後の頭蓋変形医療のために、現在、九州の五島列島で赤ちゃんの頭の形の自然経過を調査する研究も行っています。

 当クリニックでは、ブログを見てもおわかりのように、多領域の専門家の視点を持って医師が頭の形を診療しています。頭の形が気になる時は。ぜひ、躊躇せずに当クリニックにご相談ください。

東京クリニック 顧問・医師  草川 功


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