中絶を経験して気づいた、現代社会に不足していること
過去の記事にも書きましたが、中絶を経験した上で、日本社会が抱えている様々な課題に直面しました。
これらは、あくまでも私の持論であり、またそれに対する具体的な解決策は自身の中でも模索中なので結論まで書くことはできないのですが、紹介します。
中絶経験者が直面する課題の、3つのフェーズ
私は、自分の気持ちを整理するためにも、この中絶はどのようにしたら避けられたのか、そして今からできることは何かを考えました。すると、中絶経験者が感じる、3つのフェーズに気づきました。
1.妊娠
ここでいう妊娠は「予期せぬ」妊娠です。
※あえて”望まない”とは書きません。
今振り返ると無知で恥ずかしくなりますが、私自身、妊娠をした時は避妊をしていませんでした。理由は”注意すればそんな簡単に妊娠なんてしないだろう”と思っていたからです。
私は正直、21歳まで性行為未経験でした。避妊の仕方や人間の体の構造について中学校の保健体育の授業で習ったはずでしたが、あまり深く興味がなく恥ずかしいものだとも思っていたので真剣にも聞かず、記憶にありませんでした。
なので当時も、特に最初はすべて相手任せでした。
ここで怖いのは私のように、日本では性別関係なく、性行為に関して他人任せな人が多いこと。ろくに性教育を受けていない日本人の大半は、しっかりと「命の大切さ」について専門家からの教えがないまま、AV含むインターネットや友人・先輩からの口コミで性行為をしている事実があります。
もっと性教育を受けていればよかった、と感じたし、予期せぬ妊娠を防ぐ1歩としてこれからしっかりと性教育制度を整える必要があると思っています。
2.中絶
私は簡単に中絶という決断をしたわけではありません。
もちろん「産みたい」前提で頭がおかしくなるくらい、たくさんのことを調べて考えました。その結果、諦める形で「中絶」を決断しました。
その決断は大きく2つの理由からです。
それは、自身のキャリアと経済力。
私は学生の頃から、自立した働く女性になって親孝行をしたいと思っていました。特に当時は新卒1年目で、やっと初めての海外出張の予定が決まった時期でもありました。今まで大学や旅を通して学んできたことをこれから人生で生かしていく一歩を踏み出した時。私は自分のやりたいことをやる未来をとっても楽しみにしていました。
しかし新卒1年目でまだ試用期間であった私の立場では、キャリアと子育ての両立は難しい状況でした。会社の産休は勤続1年経過してからしか適用されなかったし、会社をやめざるを得ないことは明らかでした。
なぜ女性はキャリアかお腹の中の命かを選ばなければならないのか、こんな社会で暮らしていることが本当に怖くなったことを覚えています。
また、経済力に関しても同じ。社会人として働き始めたばかりの私と就活生だった当時のパートナーに1人の子供を養えるほどの経済力はありませんでした。
国の支援金等を調べましたが、私はそれだけでは子供を満足に育てることが難しいと思いました。今思うと、私は理想が高かったのかもしれませんが、自分の稼いだお金で、しっかりと計画した上で子育てをしたいと思っていたために、始めは親の支援と国からの補助金でやりくりしなければいけないとわかりきっていた当時は、自分が母親になる上でのプライドが許さなかったのだと感じています。
もっと女性のキャリアを支援する制度と、経済的な補助があれば、産むことを諦めずに済んだのではないかと感じたこともありました。
3.社会復帰
私は中絶を経験して3年経ちます。
「時間が解決する」という言葉があるように、私は自分に対する罪悪感と怒りを抱えながら、手術直後は心のどこかで、何年も早く時が過ぎればいいのに、と考えていました。しかし、中絶という経験は3年経った今でも私を苦しめ続けています。
でもここでいう、「苦しめる」というワードも実は自分の中でしっくりきていません。
自分が自分の意思で、1つの命を諦め、自分自身を傷つけているのに、あたかも外部要因で”苦められている”というニュアンスに聞こえてしまうからです。
自分で決めたことなら普通は納得できるはずなのに、こればかりは自分を一生責め続けるのだろうと思っています。
このままだとこの経験が本当に”ただただ1つの命を諦めた”という結果でしか無くなってしまう事実に耐えきれずに自分がダメになってしまうと感じたので、このような活動を始めました。
中絶という経験は自分でもびっくりするくらい、時間は解決しません。もちろん、時間が経つにつれて自分の気持ちに整理がつき、冷静にその過去に向き合うことはできるかもしれません。
でも、ふと街で赤ちゃんを見た時、あの時生んでいれば自分の子供は●歳なのかなとか、将来子供を生んだ時ほど過去に諦めた命に罪悪感を感じて育てていけないのではないかとか、色んなことが頭の中を巡ります。これは3年経った今でも同じです。
そしてこのような経験を周りに話せないこと、どうやってこの罪悪感と付き合っていくのかのロールモデルがないこと、が私をより孤独にしました。これは手術前にも言えることです。
もちろん精神科で専門医にかかることも一つの手段だと思います。でももっと、身近な人や同い年くらいで同じ経験をしている人と、オープンに話せたら、私の気持ちはどれだけ楽だったかと思いました。
日本では7人に1人が経験しているのに、その事実を知られていない。”良いこと”ではないからオープンにしてはならないというカルチャーが、この事実をより大きな社会問題にし、またもっと多くの人を苦しめるのだと思いました。
これら大きな3つ課題フェーズは、中絶経験者の多くが感じていることだと思います。もちろん私の活動を通して全てにポジティブな影響があればいいと思いますが、直近では「性教育」と「社会復帰サポート」に取り組みたいと思っています。
そしてこれらには、共感できる中絶経験者のみが携わっても意味がありません。いつでも誰でも当事者になり得るのです。性行為をする限り、興味を持って理解をしてもらえればと思います。