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Midnight To Stevens (6)

新年あけましておめでとうございます。
とうとう年を跨いでしまいましたが、今回が最終回になります。     
長い間のおつきあい本当にありがとうございました。
本編最終回の最後にこの翻訳のまとめのタイトル、The Clash が ガイ・スティーヴンスに捧げた " Midnight To Stevens " の拙訳も入れています。   
他の曲の歌詞に比べて、ライムやポエトリーな方法ではなくとてもストレートなガイへの言葉が印象的でクレジットもThe Clashのメンバー全員になっています。



レコーディング中、ガイの奇行は際立っていた。
ピアノをビールまみれにし、ミック・ジョーンズに梯子を投げつけ、ミキシング機材をブッ壊し、挙句の果てには、当時のCBS社長だったモーリーン・オバースティンのリムジンの前で匍匐前進して見せたりしていた。
以前からではあったこうした奇行は、気狂いじみたものであり危険そうに見えるが、実はガイならではの作戦であり、戦略でもあった。

ジョー・ストラマーは
「ガイのこうした奇行は、オレ達バンドにレコーディングを投げ出さずに継続させる力を与えてくれた。オレ達が煮詰まってレコーディングルームに居ると、ガイがそこに居て、椅子を揺らしたり、目についた物なんでも手あたり次第にブン投げたりするんだ。レコーディング中ずっとガイはもうフル・スロットルの全開で、もう何にも気にしないで好き勝手やってるように見えた。こっちはたかが2~3曲録っている間に、やれリズムがおかしいだの誰かが何かをやらかした!とかイライラしてるのにな。
 とにかく、そんな状態の時に頭のおかしい男がさ、頭上で金属製の椅子を振り回してんのを見ると、なんだか安心したもんだよ(笑)。
 ある時、1曲録った後にオレはスタジオのコントロールルームに居たんだけど、何だか大笑いしたい気分だった。そんな時にビル(プライス、London Callingサウンドエンジニア)とガイが2人してスキップしながらはしゃいでんだ。こっちは今さっき録ったテイクを聴くのを待ってるっていうのに!ガイがミキシングのフェーダーに突進していって、それをビルが止めて、大の大人がさ、フェーダーの取り合いをして床を転げまわってんだから笑っちまうよな。それを見てさ、オレ達は『ちょっと待てよ、オレ達はワイルド・ワンだろ?お偉方を気にすんのはおかしいだろ!』って気分になったよ。

アルバム “ LONDON CALLING “ の核には、ロックンロール・R&B・ブルービート、フィル・スペクターに傾倒していたガイのテイストとバンドの音楽の幅を広げようとする意図とが反映されていた。
しかし、そこには「危険信号」が点っていた。

その頃すでに Island Records からCBSに移動していたマフ・ウィンウッドは、このアルバムのレコーディング中に訪問した際、何とも悲しい場面に遭遇している。「ある晩、帰る途中にスタジオに寄ってみたんだ。夜間のインターフォンを鳴らしても反応がない。でもドアの向こうでは人の気配と何かの騒ぎらしき音が聞こえたんだ。その瞬間、ドアがすごい勢いで開き中からバーニーとジョーに担がれたガイが出てきたんだ。
ガイは意識不明だった。      
後で聞いたところによると、ガイはパブからまっすぐスタジオに入り、デスクに座った瞬間に気を失ったらしい。これが僕が最後に見たガイ・スティーヴンスの姿だった。」

ガイの元妻ダイアンは「クラッシュのメンバーのみんなは、ガイを優しく受け入れてくれて、理解してくれていたんだと思うわ。多分、とっても努力してくれたんだと思う。でも、そこまでは他の人たちは誰もしてくれないわ。ガイは仕事を貰ってもやろうとしないから。それにガイにはもともとコミュニケーションに関する問題を抱えていて、ドラッグがそれに拍車をかけたのよ。問題自体を増大させるのではなくて、コミュニケーションを放棄させてしまったの。」

イアン・ハンターは「ガイは基本的に不幸な人だったと思う。だからガイはエキサイトできるような物事や、おかしなことに没頭していないとやっていけなかったんだと思う。ほら、もしも物事すべてが普通だったら、おのずと考えてしまうだろ?自分自身のことを。
多分ガイはそうなるのが嫌だったんじゃないかって思うんだ。」と話す。

1981年 8月 29日、ガイ・スティーヴンスはアルコール依存のために処方された薬のオーヴァードーズでこの世を去った。

この月の始めにイアン・ハンターはガイに会っていた。
「もうすぐガイがいなくなってしまうって、すぐにわかった。だってガイが何を言っているのかさっぱりわからないんだから。」

しかし、ダイアンにとってはあまりにも突然のショッキングな出来事だった。
「最後に話した時は、ガイはとても気分が良さそうで、断酒もしてドラッグとも手を切ったと言っていたの。ガイは母親と一緒に住んでいたんだけど、そこを出てコヴェントガーデン(ロンドン中心部 The Scene Club 近く)にフラットを買うつもりだって話していたの。
それにUK Sueを再リリースする予定だとも話してた。それが金曜の夜のことで、日曜にガイのお母さんから電話をもらった時は、あまりにも突然で到底信じられなかった。」

葬儀の際、ディヴィッド・ビタリッジは「なんという命の無駄遣いだ!」と思ったという。

ダイアンは続けて「ガイが輸入したレコード達、Mott The Hoople とその音楽、すべて今でも生きているのに、ガイの功績は誰からも認められていない。それが本当に悲しい。」

イアン・ハンターは「ガイはオレにとって誰よりも特別な人だった。もしガイがオレを見つけ出してくれなかったら、オレは間違いなく今でも工場で働いていたはずなんだ。」

ピート・ワッツが続けて、自分の人生においてガイがどんな存在だったかを熱っぽく語る。

「ガイの言うことはいつも正しかった。人はみんな誰でも何かしら心に持っているけど、外世界がそいつを埋もれさせてしまう。そしてそれを外に出す勇気なんて持っちゃいないんだ。ガイはオレ達に、外へと出す勇気をくれた。檻の中の引っ込み思案な虎みたいだったオレ達の為に檻の扉を開けてくれ、人の喉笛を狙うよう教えてくれたんだ。」

Midnight To Stevens   

I search through the drinkers
Each propped over the glass
I ran through each bar
Until I found Guy at last.

Guy , you’ve been to the doctor
No, I don’t think it wise
Took one of his pills
Boiled the blood in my eyes.

When you played the mastermix
To the company man
Took 3million world wide
To make him understand
You don’t work for peanuts
But they’ll push you too.

It’s that company trick
We all jumping through
Bet you ain’t had no food now
Since you last went asleep
The wild seed that was sowed
Will take forever to reap

What days and nights though
Rocking out of Ham yard
Oh skip that fandango
Bring the blues back down hard
Though Chuck would never admit it
At the door of jail
There stood GUY STEVENS
And he was waving the bail.

Guy, you’ve finished the booze
And you ran out of speed
But the wild side of life
It’s the one that we need.

グラスにもたれかかっている
酔っ払いたちを掻き分けて
ひとつひとつのバーを走り回り
ようやくガイを見つけた

ガイ、医者に行ったんだってな
あんまり賢い案とは思えないな
その薬を1錠飲んでみたけど
目の血管が沸騰したぜ

お前がレーベルのお偉いさんに
マスターミックスを聴かせた時
奴に分からせるには世界中で300万枚必要
はした金じゃ働かないけど
奴らもそう強制しようとするんだ

まあ会社によくあるトリックだ
オレ達みんなそんなのと上手くやってきたよな
最後に眠ってから何にも食うものないんだろ
発芽した野生の種は、永遠に刈り取られないだろう

Ham Yardの閉鎖から
幾日幾晩が過ぎたのだろう
おっとファンダンゴは飛ばしていいぜ
それよりブルーズをかけてくれよ
チャックがいくら認めなくても、
監獄のドアに立っていたのは手に持った保釈金を振りかざす、まぎれもないガイ・スティーヴンス

ガイ、お前が酒をやめちまってから
スピードも尽きた
だがな人生のワイルドサイド、それこそがオレ達みんなが必要なものなんだ

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