見出し画像

【書評】財務3表だけではつかめないビジネスモデルを視る技術

著者の村上さんから献本された書籍を読みました。

今回出版された書籍は、約400ページ超えと膨大な情報量であるものの、2,420円とページ数の割に安く、中身も気合が入った情報量と分析の内容、図表があり大変価値があり、コスパ最強の書籍です。

著者の村上さんを読書会等で知っておりますが、ビジネス・インサイダーの連載等の媒体の情報発信に加え、読書会等にて、いつも幅広く情報と深く考え抜かれた知恵を出し惜しみなく情報提供して下さり、個人的に楽しく学ばせていただいております。
筆者のこれまでの実績・経験のすべて書くことができないため、それを濃縮され重要な部分に絞られており、濃度の濃い内容に触れることができ、貴重な知見を得る学びとなりました。

〇今回の書籍の見どころ
財務諸表はビジネスの結果です。今回は、書籍のタイトルにあるビジネスモデルを見る技術についてですが、結果である財務諸表から、会社がどんなビジネスを読み解く書籍です。
その財務諸表は、1次情報から取れる有価証券報告書報告書を主な情報源として、その情報から何を読み取り、読み取った情報からビジネスモデルをどう推測するかを掲載しており、基本的に誰でも活用することが可能な内容となっております。

様々な企業の貸借対照表(以下、BS)、損益計算書(以下、PL)、キャッシュフロー計算書(以下、CF)の財務諸表の事例が見れます。
特に、同業界でも収益・資産の内容(流動資産と固定資産の比率が違うなど)がかなり違っており、「なぜ?」って疑問になることばかりで、普段このような企業比較をしておらず、その理由を知れて非常に楽しく、読ませていただきました。

ただ、BS、PL、CFでは企業の本来の資産・収益すべてが計上・把握することができません。財務諸表だけでは説明が困難であり、非財務情報やファイナンスの理論の説明が不可欠だと注目されています。
非財務情報は、知的資本である知的財産権や人的資本である従業員の能力など様々な無形資産が主な内容であり、それを可視化したものが注目され続けている統合報告書です。
また、ファイナンスの部分も必要となります。特によく目にする事例として、PER・PBRが挙げられており、それらの指数が高いということは投資家等が将来のキャッシュフローを期待しているファイナンスの考えがあります。

PER・PBRでは投資家の期待として捉えている部分もありますが、すべての投資家が均一の情報を持っているわけでもなく、すべての情報を見ることができないことから、非財務情報の価値を見極めることが困難です。

PBR=PER × ROE

つい数年前にPBRが1倍割れの企業が多数存在していたことから、(海外)投資家や取引所から上昇圧力がかかっている状況でした。
企業がPBRを直接動かすことができず、できるとすれば、ROEを高めることです。
なお、ROEは下記のデュポン分析として3つに分解できます。
ROE: 当期純利益÷総資産
①     当期純利益÷売上高(売上高当期純利益率)
②     総資産÷自己資本(財務レバレッジ)
③     売上高÷総資産(総資産回転率)

基本的に企業は、上記3つのどれかの比率を上昇させるとROEが上昇します。売上高当期純利益率を上昇できれば一番良いのですが、現状のビジネスの延長だと、業界の競合他社や買い手・売り手等の圧力により、高く上昇させることが非常に困難です。
一番簡単にできるのは、②で借入金を増やすことにより、財務レバレッジが上がりますが、財務状況の安全性の観点からあまり借入金が増えると有利子負債が増え、倒産リスクが上昇するという欠点があります。③はファブレス経営を行うなど固定資産を売却し、外注政策に事業・財務の大幅な転換をすることにより、高めることができますが、これも経営戦略から変える必要があり、大きな企業ほど転換が困難で、当該比率を上昇させることが困難だと考えます。
以上のように、それぞれの比率の特徴が表現されており、ROEが上昇した場合、この3点の比率を確認し、ビジネスモデルを考えることができると理解しました。

〇個人的に良かったところ
個人的には、10章のNTTとドコモのTOBについて、公開情報で出ているのですが、莫大な情報を読む必要があり、それが関係図として各関係者がまとまって把握しやすかったです。TOBにおいて、いかに外部専門家が英知を結集して取引に関わっているかが一目でわかります。

同業業界の企業同士でも違いが多々あり、企業のサプライチェーン(開発→調達→生産→物流→販売など消費者に届くまでのプロセス)をすべて内製化しているわけではなく、一部外製化しているプロセスの企業もあるためです(逆に、ほとんど外製化している企業もあります)。同じSAP、ファブレスでのビジネス形態でも、比べると中身が違っており、その理由も掲載されていることから、学びになりました。

くどいですが、初心者から専門家の方でも、様々な気づきや学びが得られる一冊となっており、この400ページの情報量で、2,420円は安く、自己投資の元が取れるものだと考えます。

これまで、読んでいただき、ありがとうございました。

では、では

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?