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息が止まるほど笑われたパイ

お菓子作りをすると何となく良い女になったような気持ちになる。実際にどうかはさておき、わたしはこのように 何かしらをしただけで何かしらになれたような気になる、この瞬間が非常にすきである。母親の真似をしてデタラメに紅をさした日と似たような高揚感があるのだ。

前回の記事で、その気になれば出来そうなのに何だかんだ出来ていない、をテーマにやりたい事100個を書き殴ったのだが、今回「とにかく可愛いお菓子を作る」を早速実行した。
見た目が可愛いお菓子がすきだ。子供の頃、祇園祭で賑わう京都で金平糖の屋台を見て、カラフルでビーズみたいに色んな形があって、それぞれから「わたしを見て これが可愛いってこと」という声が聞こえそうな気さえした。ここまで言ってしまうとお菓子職人になりたかったのか?と誤解されるかもしれないが、不特定多数のために何かを生み出すことは責任が重すぎる。お金があれば何の責任も負わずに眺め食べることが出来るのだ。平凡な人間で良かった。お菓子とは胃に入れることが出来るアートだ。そんなアートをたまには自分の手で生み出したいという願望、とても自然だと思いませんか?

一人暮らしをする際にオーブン兼レンジ兼トースターを買った。深夜3時に思い付きでケーキを焼けるからである。人生において深夜3時にケーキを焼きたくなる衝動が何度か訪れ、オーブンがないため実現できず、悔しい思いをしたことがあった。もうあんな痛みを感じずに済むのだ。しかし実際買ったところで社会人のわたしは深夜3時には深く深く眠っており、ほとんどオーブンを使う機会などなく、もはや電子レンジとしての人生を歩ませてしまっている。電子レンジという名前すらほとんど呼ばず、チンと呼んでいる。オーブンなのにチンとしか呼ばれない、そんな屈辱的なことがあって良いのだろうか。こいつは恐らく相当にプライドが高いだろう、何と言っても電子レンジとトースターなんてオマケですよと言わんばかりに自分の体にくっつけている。電子レンジは凍ったものを溶かせる上に出来立てを提供することが出来る。まるでお母さんだ。メカお母さん。次にトースター。パンを焼くだけではない。クラッカーにチーズを乗せて焼けば腹ペコ坊や達も大喜び、一瞬でおうちはパーティー会場だ。そしてこいつ。メインのオーブンだ。芋も魚も肉もいける。そのうえケーキだって焼ける。クリスマスには高級レストランに行かずともこいつが居てくれれば全てまかなえるだろう。書けば書くほどオーブンの魅力に圧倒されるばかりだ。もはや野球選手と結婚するアナウンサーだ。そういう立ち位置である。なのにあだ名はチンだ。チンは主であるわたしが憎くてたまらないだろう。

今回お菓子作りをするに至ったのには他にも理由があり、仕事で撮影や動画編集をしている友人がおり、勉強のために料理している場面を撮影させてほしいと申し出があったからだ。わたしもお菓子作りをしたいと思っていたので意気投合、ゼロ日婚ばりにとにかく猪突猛進、日程を決めた後はときめきだけを握りしめて楽しみだね~ほんと楽しみ~と言い合うだけの時間が過ぎていった。

いよいよ迎えた当日。
作るものはミルフィーユに決定。友人の撮りたい工程にクリームを絞る、粉をふるう場面があったこと、わたしが冷凍パイシートを使ったら簡単そうだと思ったことで意見が一致したからだ。

材料はシンプルに以下の通り。
小麦粉、グラニュー糖、卵黄、生クリーム(七分立て)、牛乳、バター、冷凍のパイ生地、乗せたい果物とパッション。

ざっくり説明すると、
①パイを焼く
(a)卵黄とグラニュー糖を混ぜる
②膨れたパイを潰して重りを乗せて再度焼く
(b)混ぜ終わったaに牛乳を混ぜて火にかける
③グラニュー糖をまぶしてパイを再度焼く
(c)生クリームを七分立てする。
④パイを粉糖でキャラメリゼ(再度オーブンにin)する
(d)小麦粉をふるい、b~cを混ぜたものに小麦粉を加える
⑤パイを切りクリームを絞り粉糖をまぶし各々の芸術を爆発させる
★完成★
という流れである。

正直ナメてました。お菓子作りの大変さ。
パイを焼いている作る間に色々と作業を入れ込んでいかないといけない。
途中でキャラメリゼの加減が分からず焦げてしまい、友人と焦げを削いだりもした。化石の発掘みたいで楽しかった。友人が焼きたてジャパンで同じようなシーンあってなぁ!割ったらなあ!ピカーって綺麗な面が出てくんねん!とか言ってた気がするが、疲れていたのでほとんど拾わず、へえ~とかふうんとか言いながらスルーしてしまった。

化石の発掘

さて、組み立て一発目!
クリームなんかほとんど絞ったことがないのでTVで見た感じでイメージしながら絞る。

食いしん坊のお化けみたいになっちゃった

う~ん、失敗!
クリームを絞れば絞るほどにヘナヘナになってしまい、アートには程遠い。


気を取り直して、二発目!
失敗を活かし今回はクリームを少なめに絞る。
これが功を奏し、なんとも奥ゆかしくラブリーに。
フルーツを乗せる場面は緊張感のあまり呼吸を忘れるほど。

良いのでは?


大変良いのでは??


最後にもう一つ作れそうだということで、友人にどういうものを撮影したいか聞く。今回練習したいからという理由で材料費も出してくれて、わざわざ我が家まで出向いてくれているのでせめて友人の役に立ちたかった。サイズはあまり小さくせず、大きいままドーンと最後に1つ作って終わりにしたいとのこと。OK、任せろ!





友人の意見を聞き、ついに集大成が完成した。





??



お互い真剣なので、部屋には呼吸の音しか聞こえない。友人が一言。
・・・何?これ




???????




これ何の時間???何撮ってるん???





見れば見るほどミルフィーユになり損ねたこれが一体何なのか分からず、笑いをこらえられなくなり、二人で息が出来なくなるくらい笑う。



もう一度じっくり見る。

何かに似てる





あれ?これ何かに似てない?

あれやん、

似てるぞ………





あれやん!!!!!!!!!!!

人生ゲームのあれやん!!!!!!!!!!!

人生ゲームのアレ


という気付きを得て、再度息が出来なくなるくらい笑う。もう笑いをねぶり尽くしましたね。




最後に味見タイム!!
苦労した甲斐あって、めちゃくちゃ美味しかったです。我が家のオールスター達にも見せてあげました。

美味そうだな



食べちゃうぞ~!!!



はい、ただ本当に大変でした。
生クリーム七分立てのところとかもう手動だったんで汗だく、舌打ちしそうになりました。
何と我が家には、「ないと思って買ったらあった!」の連続で泡立て器が3つもあるのですが、今回は3つ全部使う機会があったため、過去のアホな自分に感謝の気持ちが溢れ出しました。
教訓、泡だて器は何個あっても良いゼ!!!!!!!!!!!!


最後まで読んで頂き有難うございました。



コーラ