ギャル

わたしは高校を2回留年したのちに中退してるんですが、きちんと卒業をしていないことで当時の記憶がこんなに鮮明に蘇るんだなと驚いています。何にせよ、終わりって大切です。ここからは関西弁のイントネーションで読んでみてください。

高校に入学してすぐギャルの友達が出来ました。モロに浜崎あゆみの影響を受けたであろう彼女は色白金髪で、まだ文化として根付いてないカラコンをつけ、鼻と背が高く、見せるための丈やろと言わんばかりのスカートを履いて、ブランドバッグを持ち、まつ毛はいつもバチバチで、(ほんまに同い年か?)(水商売してるやろ)(ヤンキー?なんなん?)等といつも思ってました。

入学してすぐに隣の席の女の子が、後ろの席の女の子に「中学どこ?わたし〇〇やねん。あ、そうなん?え、てかさー」みたいに話しかけてるのを見るのがすごく苦手でした。嘘臭いにも程があるやん、と思ってたし、自分を守るのに必死な感じというか、女の子特有のひとりになりたくなくて味方作っていく感じというか、あれがほんとに嫌いで。違和感を感じるというか。

そんなこんなで、1匹狼な感じのギャル1、1匹狼な感じのギャル2、天然なお嬢様、わたしという謎のチームが出来ました。全員群れるのが嫌いというマインドが一致してた、ただそれだけでした。

わたしは雨の日に学校に行くのが嫌いでした。服も靴も濡れるし。傘って7割は頑張るけどあとの3割って意味無くないですか?2020年やで?何でずっとあのスタイル貫いてるん?もっと上手いこと出来やんかったん?ギャル1も同じく巻き髪が崩れてダルい、とのことでよく2人で学校をサボりました。ギャル2もまた全盛期の浜崎あゆみみたいなビジュアルで、入学式に金髪のグリングリンのバッチバチで歩いてるのを見て絶対に交わることはない人種や、と思った記憶がありますが、実際相当なヤンキーだったらしく、6月頃にはほとんど学校に来てませんでした。天然なお嬢様には手鏡を借りた時にじゃがりこの油がついてた事が不快だったということを真顔で指摘された記憶しかありません。

雨が降るとギャル1は授業など関係なしに、マクドいこや!恋バナしよー!とよく誘ってきました。マクドで恋バナ8時間💮って落書きをプリクラにしました。いや学校行け。恋バナ8時間もすな。そんだけ何喋るねん。わたしが親だったらボコボコにしばき倒してると思います。マクドの店員だったら通報して出禁にしてると思います。当時付き合ってた彼氏、ゆうきくんが飴を作ってくれたって話をめちゃくちゃ嬉しそうにしてくれました。高校からマクドナルドは近かったし、わたしたちは制服で白昼堂々とサボり、ギャルは大人に注意されると決めゼリフのように「コスプレやし!」と反抗してました。最悪すぎる。月日が流れてゆうきくんにフラれ、「これからのわたしを見て!」って言ったにも関わらず結果が変わらなかったことものちにマクドで聞きました。

ギャルは他のクラスのギャル達とも仲良くしていて、それを見る度にちょっと寂しい女心が顔を出したりもしましたが、ヤンキーならではのウチの友達はみんなの友達★的思想でよく一緒に遊ぼうと誘ってくれました。ギャル達とカラオケに行くと浜崎あゆみのオンパレードでした。当時そんなに聴かなかった浜崎あゆみに詳しいのはそのせいだと思います。

ギャルは何のメリットもない嘘を頻繁についてきました。景色が良い感じの場所に行くと、「ここ、うちのパパが作ってん!ぜーんぶ!」と響き渡るようなでっかい声で言ったり。元気の良さにはアッパレとしか言いようがありませんが、がっつりと羞恥心を育てたわたしは静かに微笑むことしか言えませんでした。他にもしきりに自分はロシア人だとアピールしてきたり。好きな人と上手くいかず落ち込んでると朝からメールがきて、そうかと思えば今日は魚座のあなたは1位★すきなひとから連絡がきます★★★みたいなこと書いてたり。全部わたしを愉快な気持ちにさせてくれたので良しとしましょう。

ギャルはパックのレモンティーをよく飲んでました。レモンティーを思い浮かべたことで彼女の口紅の味を思い出したので、よく飲みさしを飲ませてくれてたんだと思います。レモンティー片手に歩くギャルの体操服の白から真っ赤な下着が透けてて、16歳のわたしにとっては割と衝撃的でした。これがファッションやと言ってはジーンズのボタンとチャックを閉めずに下着を見せて歩いたり、半裸のネグリジェみたいな格好で近所をうろついたり、暴力的な程に露出してました。妖怪ビッチとあだ名を付けると、何故か嬉しそうにしていました。

そんな日々が数ヶ月続き、ギャルは電話をかけてきました。

「うちらさ、仲良くなって結構経つやん。でも距離感じんねん。あんたあんまり心開いてへんやろ?分かるねん。壁感じる。だからなぁ、とっておきの秘密教えたるわ。あたしなぁ、小学校の時履いてたパンツまだ履いてるねん。もう高一やで?小学校のパンツ。キティちゃんの。お尻ぜんぜん入らん。常(つね※)ハンケツ。まじやで。」と、ある日突然教えてくれました。
※常にの意味です

いやどんな暴露?てかそれで仲良くなれると思たん?何で?わたしも実は履いてるねん、みたいな展開予想してたん???え???てか何???まじで何????ハンケツなら捨てれば????入らんのに何で履き続けてるん??心の距離の埋め方のそれ何????と、ただただ思いました。

不本意ながらそれキッカケで距離がグンと縮まり、二人でよく遊んだんですが、当然学校には行かなくなり、あんた行かんねやったら行かんわ、みたいな日々が続き、ギャルは禁止されてるにも関わらずエクステを付けてマラソンの授業に出たところ、先生にバチギレされて、先生だってオシャレでパンチパーマあててるやん!と謎の逆ギレをかましてそのまま学校を辞めました。

毎日一緒に寝たし、お風呂にもよく入ったし、仲が良すぎてお互いにこれはもしかして恋???と悩む時期もあったり、でも触りたいとは思わんよな、と秒で解決をし、お前とおったらおもろいわ どこのどいつもかなわんわ という感じでした。ギャルの家には食べ物が沢山あって、うちには全くなくて、マジで米すらなくて死にかけてた時におにぎりを握って遊びに来てくれて、「痩せたい時はあんたんち来るねん。食べるもんないやん、だから帰る頃には痩せてるし」と言ってデート前によく遊びに来てたけど、思い返せば失礼すぎる。ひとの家をなんだと思ってる。

しばらくは二人で早朝の公園でセミの真似をしたり、SMを見に行ったり、クリスマスに繁華街をスキップで散歩したり、噛み砕いたグミを手のひらに出したのを眺めて爆笑したり、何だかんだで充実した日を過ごしたのですが今はもう二度と会えない感じになってしまいました。それはまた機会があれば。

読んでいただきありがとうございました。


コーラ