見出し画像

おふたりとも要介護1とれました!!(別居嫁介護日誌 #31)

待ちに待った「要介護認定の結果通知」がやってきた。義父母が通知書類と新たに届いた介護保険証を紛失する前に、ケアマネ・鈴木さん(仮名)がすみやかに回収。「届きました!」と電話をくれた。

「こちらで開封してしまってよろしいでしょうか」
「お願いします!!!」

ほとんど合格発表である。

「真奈美さん、要介護1です! おふたりとも要介護1とれました!!」
「ありがとうございます! ありがとうございます!!」

電話口で鈴木さんと大盛り上がり。気分は「当確!」だった。これで想定通りの介護体制が組める。幸い、
一足先に暫定的として導入していた「週2回の訪問看護」に対して、義父母からは文句らしい文句は出ていなかった。ここでさらに、「週2回の訪問介護(ヘルパー)」に、地方自治体がやっている「ゴミの個別回収」が加われば、生活環境はまた改善されるはず! と期待も高かった。

介護サービスを利用するにはそれが公的なものであれ、民間企業が提供しているものであれ、その都度、契約手続きが発生する。そのたびに時間を調整し、夫の実家まで出向くのは地味に面倒ではあった。

たいてい、契約書の読み合わせをし、署名・捺印というステップを踏むのだが、たいてい、義父母から途中で質問が飛ぶ。
「この字が小さくて読めないんだけど、なんて読むのかしら?」
「この契約不履行というのは、どういったケースを指すんですかな」

そして、じっくりと契約所を読み込み、ゆっくりていねいにそれぞれが名前を書く。時には先方の担当者に「お嫁さんに代筆していただいても構いませんよ」と言われることもあったが、義父母は自分たちでサインすることを好んだ。

本音を言えば、じれったい。とりとめもない質問につきあっているより、さっさと終わらせて帰りたい。ただ、「自分たちで話を聞いてサインをした」という時間を持ったほうが、納得感につながるような気もしていた。だからこそ、まだるっこしい! と内心ジリジリしながらも、歯を食いしばって待機した。義父母よりも先に、息子である夫や嫁である私に説明しようとする担当者には「説明はおとうさんとおかあさんに……」とお願いした。

そして迎えた、ヘルパーさんとの初顔合わせの日。義母は台所とリビングを右往左往しながら、お茶の準備をし、到着を待っていた。

「ヘルパーさんはお仕事だから、訪問先でお茶を出してもらっても飲めないらしいですよ……」
「だって今日はちょっと蒸し暑いもの。お茶ぐらい用意しないと申し訳ないじゃない!」

おそるおそる伝えてみたけれど、もちろん義母は聞いてくれない。そうこうしているうちにヘルパーさんが到着し、さっそく義母の「さあさあ、こちらに座ってくださいな」「お茶召し上がって」アプローチが始まった。

しつこくて本当にすみません。心のなかで手を合わせていると、ヘルパーさんがバッグから水筒を取り出し、「お気遣いありがとうございます。自分で水筒を持ってきていますので」とにっこり笑った。「あら、そう……」と義母は一瞬、不満そうな顔になったが、お茶を飲ませようとするのはあきらめた。ワザあり、一本!

さらにヘルパーさんは義母に次々と質問していく。
「掃除機をかけたいので、どこにあるか教えていただけますか」
「おトイレはこちらにおいてある洗剤で掃除をさせていただいてよろしいですか」
「お風呂は普段どんな風にお掃除されていますか。みなさん、『うちはこうなのよ』ってやりかたがあると思いますので教えてくださいますか」

義母は「たいしたことはしてないのよ」と言いながらも、うれしそうだった。義父は言えば、ヘルパーさんが訪れた直後、スーッとリビングから姿を消したかと思うと、二階にのぼる階段のところでガサゴソ。見ると、古新聞の束をまとめていた。ヘルパーさんが「お手伝いしましょうか」と声をかけると、「ぜひお願いします」と二つ返事で笑顔を見せた。

「この古新聞というやつは、どうにも重たくていけませんな。ハッハッハ」

義父が声を立てて笑うなんて珍しい。プライドも高く、「自分たちはまだできるのに」という意識も強い。そんな義父母がみるみるうちに心を開いていく。プロってすげえ!!! どうかこのまま、介護拒否が出ませんように。ヘルパーさんのいる暮らしが無事、定着しますように。祈るような気持ちで夫の実家を後にした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?