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「誘われ待ち」をやめたら世界が変わった
「まーぜーて!」が言えない子どもだった。
いきなり玄関のチャイムを鳴らして、「遊ぼうよ」と誘うのも苦手だった。できれば、向こうから誘ってほしい。でも、誘われないので勇気を振り絞って電話をかけ、先方の予定を確認する。そんな私の姿を見るたび、母はため息をついていた。
”誘われ待ち”をやめたのは、いつ頃だったのだろう。中学の途中で転校したのがきっかけだったような気がする。少なくとも、中学2年のときにはあき
らめていた。
当時、「転校生」と「いじめ」はだいたいセットで語られていて、私は絶望的な気持ちでその日を迎えた。しかも、母が「うちの子は大丈夫です。たぶん気にしないから」と入部希望を出してしまったおかげで、同学年の女子がひとりもいない剣道部への入部も決まっていた。いや、オカン、なんでやねん。そう思っていたにも関わらず、入部を取りやめる発想もなかった。選択肢が浮かばなかった。
こんな状況下では自らの意思で、付き合う相手を選び、かかわりかたを調整しなければ、生き残れない。やや中2病がかった切迫感のもと、行動軸を大きく変えた。誘われれば、適宜対応するけれど、基本は誘いたい相手を自分から誘う。断られても気にしない。気にしないって言っても、気にはなるんだけれど、ここから先は慣れだ。
結果、カジュアルに「参加したいです」が言える20代を迎え、そのままのノリで現在に至る。
オープンに募集がかかっているけれど、個別に誘われてはいないという場面で、「参加したい」と手をあげるのは勇気がいる。「本当は誘いたい人は別にいるのでは」「”呼んでないよ”と思われたらどうしよう」「ずうずうしいと思われるかもしれない」などと考え始めると、身がすくむ。
でも同時に、「それは相手の問題」だとも思う。決まった相手しか歓迎しないのであれば、クローズドで声をかければいい。運悪く「空気を読んで」「察して系」の人を引き当ててしまったとしたら、わかった時点で身を引けばいい。イヤな思いをすることにはなるだろうけど、そのズレを知ることはむしろプラスになる。
”察して”がはなはだしい人とつきあうと疲労感が半端ない。向こうも、こっちが本気にしちゃうとわかったら、社交辞令の誘い文句を言わなくなる。お互いにWin‐Winに違いない。
……と信じ込むと、手を挙げるハードルは断然下がる。
おっちょこちょいに「やりたーい」と手を挙げて、気まずい思いをしたことも、もちろんある。
気まずい選手権第1位は、つきあいはじめて間もない彼氏(現・オット)がベーシストとして参加するバンドに、コーラスとして参加したこと。ボーカルとギタリストと一緒にコンサートを見に行って、その場で盛り上がって「バンドでやろうぜ」「女性コーラスが必要だな。しまかげちゃん、やる?」「やるやるー」みたいな展開で参加が決まったんだけれど、あとから知ったオット氏から猛クレームがあった。
「勝手に決めるのはおかしい」という話だったが、それは”彼女”としての私のふるまいのことではなく、バンドのありようみたいな話だった。私は私で「そこはメンバーと話し合え!!」とブチ切れ、大喧嘩になった。「出ないって言えばいいんでしょ!」「それは違う」「はぁ⁉」と話はこじれ、険悪な時間を過ごした。若さよ……。
幸いなことに、別れ話にまでには発展しなかったし、バンドに混ぜてもらったのは最高に楽しかった。
思いがけないかたちで今につながってる「私もやりたい」はウクレレ。
もともとのきっかけは、セッションライブ。客は入れずに、演者だけで遊ぼうという企画だった。つまりは演者じゃないと参加できない。なにそれつまんない、わたしも参加したい。
セッションライブまで約1か月。なんとか抜け道はないかとググって見つけたのが「一期一会」という楽器。指一本でコードが押さえられて、複雑なコードを覚えなくていいらしい。楽器にさわったことがない人でも気軽に挑戦できるって。これならいけるんじゃね?
でも弦楽器なんて買ったことないし、音のいい・悪いもよく分からない。ギタリストの友人に頼んで、一緒に買いに行ってもらった。当日、待ち合わせた楽器店に行くとすでに友人は店内にいて「用事が早く終わったから、試し弾きしてた」という。そして勧められたのがウクレレだった。「こっちのほうが面白いよ。大丈夫。弾けるようになるって」。
彼の予言通り、1カ月後にはウクレレを持ってステージに立った。その数年後、今度は初心者だらけのウクレレ女子12人でセッションライブに参加した。購入から練習、出演まで付き合ってくれたギタリスト発案による「ウクレレ女子十二楽坊」が爆誕。このときは準備期間2カ月で、5曲弾いた。ステージの端から端まで、お揃いのアロハシャツ・ワンピースが並ぶのは壮観で大ウケだった。
そして今、三鷹で月2回、ギター&ウクレレサークルを、友人のまえさん(フリーランス介護職&ギタリスト)と一緒にやっている。
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「ウクレレ買ってみたけど、全然弾けるようにならない」
「押入れの中で眠ってたウクレレをちょっと弾いてみたくて」
という人が遊びに来てくれることが多い。
「初心者で何もわかってないんです……」と申し訳なさそうに言われる方も多いけど、超初心者大歓迎。むしろ、安価なマンツーマンレッスン的なものを求めてこられても、その期待には一ミリもおこたえできない。コードだって最低限しか覚えてないし、いまだに8ビートのストロークも危ういテイタラク。
サークル練習日は一緒にチューニングして、弾きたい曲の難易度をチェック。そこにたどりつくまでの練習曲を探し、Youtubeを見ながら一緒に弾いたり、ギターと合奏したり、おしゃべりしたり。あっという間に時間が過ぎていく。
みたかギター×ウクレレサークル練習日。初参加の方とまずはチューニングのおさらい。目標曲は「海の声」(au三太郎シリーズ)。コードを確認し、C→Am→F→G7の練習。練習曲は「雨上がりの夜空に」→「ルージュの伝言」→「日曜日よりの使者」→「真夏の果実」→「ミス・ブランニュ・ーデイ」
— 島影真奈美(まなねぇ)@老いと暮らしのデザイン (@babakikaku_s) September 1, 2022
そんな「今」があるのは、あのとき思い切って「参加したい」と言ってみたおかげ。もちろん、根気強く教えてくれた友人、一緒にステージに立ってくれた友人がいてくれたおかげでもあるんだけれど。
私たちの周りには楽しいこと、つまらないこと、心やすらぐこと、気まずいことがたくさんあふれてる。自分にとってのベストなタイミングは本人にしかわからないし、心地よい手ざわりは案外、手にとってみないとわからない。だから、やってみる。合わないなと思ったら、手放す。
その繰り返しの先に、居心地のいい世界が待ってるのかも。
お金とか時間とか遠慮とか空気とか、そのあたりの迷いの種をちょっとそこらの棚に放り投げたら、あなたは今、何がしたいですか。
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