「実は3年前にお会いしてるんです」を振り返る
対話のコミュニティのオフ会で、ライター業にチャレンジしたいと思ってる子たちと「名乗っちゃおう」「いいんですか」「もちろん」と、さんざん盛り上がった。
そのうちのひとり、あゆさんと帰り道に「LINE交換しよ~~」と話してるときに言われた。
「今さら言うことじゃないんですけど、実は……3年前にお会いしてるんです」
ええ!?
高円寺にある老舗銭湯・小杉湯の隣にあるコワーキングスペース「小杉湯となり」。そこの書道イベントがあった。あゆさんは書道を教えてくれる先生、私は教わる参加者としてこの日、会ってた。
えー!
めちゃくちゃ楽しいイベントだった。いろんな字体を教えてもらったり、好きな文章を書き写したり、手紙を書いたり。
あんまり楽しくて、この日教えてもらった筆ペンを速攻で買ったりもしてた。のちに、アートワークに興味を持ったときも活躍することになる、ぺんてるの「カラー筆ペン アートブラッシュ18色セット)。
さらに、この日イベントのおまけとしてもらった「共通入浴券」がきっかけで、私は銭湯で働くことになる。
壁に貼られていた小杉湯店主(のちに、三代目・佑介さんだと知る)からのメッセージをぼんやり眺め、気づいたら泣いてた。
コロナ禍になったからといって、何が変わるわけではない。フリーランスだからもともと出勤はないし、オンライン取材がしやすくなったのはむしろ僥倖。そう自分に言い聞かせて、不安を押し殺してきたのだと気づいてしまった。そうか私は怖がってたのか。パチンとほどけて泣けてきて、でも、それは苦しい涙ではなく、気がラクになるようなものだった。
土曜夕方の静かな銭湯で、思い切り泣くだけ泣いて、のびのびすごした。それが2022年2月26日のこと。それから半年後、土日勤務の女性番頭アルバイトの【ゆる募】投稿がタイムラインに流れてきた。
30分たっぷり迷ってDMを送った。「興味あります!」「会いましょう」の後、「まずは試しにやってみましょうか」で番頭・番台になった。
スタッフとして働いたのは、2022年9月から2023年11月までの1年ちょっと。でも毎週、決まった曜日・時間帯に銭湯に通う生活はたくさんのものを私にくれた。数えきれないぐらい、たくさん。
例えば、赤坂で月イチでやってるスナックママも、あの銭湯での経験がなかったら、最初の一歩を踏み出せなかったかもなーと思う。
そんな私にとって、あの書道イベントは「今」のはじまりの地のひとつだ。そこに、あゆさんはいた。
どこかで会ったような気はしてた。だって、見覚えあるんだもん。でも、そんなことをノーヒントで言われてな~~~と思い、言えずにいた。他人の空似かもしれないし、となりの会員さんと元スタッフなら、どこかですれ違ったり、挨拶ぐらいはしてても、全然不思議じゃない。
でも、想像してたよりもはるかに、しっかり会ってた。
「まなみさんと出会った書道イベントのことnoteに書いていました」
そう言って、あゆさんがnoteのリンクを送ってくれた。
あの日の私はそう言って、いちばん目をキラキラさせていたらしい(あゆさん談)。やたらと楽しかったことは覚えてる。でも、自分が何を言ったのかは忘れてしまっていた。でも、言いそう! わははははは。
そして私も少しずつ思い出す。
すごくすごく楽しくて、教えてくれた先生(あゆさん)と、また会えたらいいなと思ったけど、「連絡先、交換しません?」は言えなかった。なんか唐突すぎるし、そんなこと言われても困るよなーって。
今の私はあの頃の私よりも、カジュアルに連絡先交換を申し出るようになった。たぶん、それも1年間の銭湯暮らしのお土産。いろんな意味で考えないようにもなったし、考えるようになった。気に病むことは減った。
おかげで今回は「LINE交換しません?」と声をかけることができて、その結果、「実は……」と3年前のことを聞けた。びっくり! びっくり! 鳩が豆鉄砲だった自分を思い出して、思い出し笑いを繰り返してる。
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