「勇者たちの中学受験」を読んでの雑感

話題の本にはとりあえず飛びつく。

塾の実名も学校の実名も出ていておぉ…となったけど、まぁ、聞いたことがある話だなと思いながら読了。

1 上がらない偏差値と反比例する親の狂気

狂気、というほどではないけれど、これ、自分にも勿論覚えがある。
子供の勉強している姿を見ると、2時間集中してやればいいのに数問解いてはダラダラ、また数問解いてはフラフラ、そもそも机の前に座るまでにグダグダ。結局3時間経っても終わらない……などということが常態(うちだけではないはず)
それでいて、「遊びたい、遊べない」なーんて聞こうものなら、はい、即噴火。

「何すればいいの?」に応えて、今日の課題をリストアップしてみれば一応やってもダラダラしてるものだから、終わらなくてキレ散らかす。親子共に。
本人に任せてみれば、最低限終わっていないといけない塾の宿題くらいしかやっていないか、それすらも終わっていない。或いはものすごく雑にやってある。

一応、中学はともかく大学では受験を経験した身でどうやったら成績が上がるかも心得ているつもり。必要なことを言っているわけだが、そこは反抗期のお年頃、親が言っても聞きやしない。
だけど、このまま漫然と本番を迎えたら絶対コイツ落ちるよな…って思うので、やっぱりつい口を出してしまう。
そんな悪循環。

エピソード1はそんな親の姿として、身につまされる話だった。
尤も私はこんなに几帳面に管理できないので、まさに魔の11月の現在、プリント整理と文房具調達だけで右往左往しているのだが。

この話のお父さん、なんやかんや管理はしているけど、最後は子供に任せた時点で、この家の受験は成功じゃないかなぁと思う(おおたとしまさ氏的成功としては)
当初期待していた学校には入れなかったけれど、子供を潰したわけでもないし、最終的に受かった中から自分で進路を選んだのだし。
お父さんは子供の最終的な選択には脱力しただろうな…と思った。本当お疲れ様でした…と言いたくなる。

2 闇深い、合格実績と特待システム

我が子が通う塾には小学生の方の特待制度はないし、あったとしても取れる成績ではないので、粛々と恐ろしい金額の塾代を支払っているばかりだが、時々風の噂程度に聞く話である。

特待生として授業料その他が全額免除になる代わりに、12月から各地を巡ったり東京受験会場を利用したりで星取りをするのは、他の塾でも同じ制度がある。
因みにわたしが聞いたその話では、その子は別の塾の特待も持っていて、常時通ってはいないが冠講座とかのプリントはもらっているそうだ。
こうして、この子がどこか受かったら二つの塾が合格実績をカウントする。
大手進学塾の掛け持ちなんて、なかなかできないことのはずだが、特訓に出ずともプリントをもらうだけ、という方式もあるのかと驚いた記憶がある。
プリント出している側の塾にしてみたら、コスパ最強すぎません?

とにかく、こういう特待とその引き換えに実績稼ぎに行かせるという話は、割とよくある事なのだと思う。我が家には無縁な話だが。
塾の合格実績ダブルカウントは特待制度以上にあるあるだ。場合によってはダブルどころじゃないかもしれない。

他所様の事ながら、心配なのは受験生本人だ。
いくら最上位常連といっても、生まれてまだ12年経ったかどうかの子供だから。
自分の腕試しが好きな子なら楽しめなくもないかもしれない。それならまぁ良い。楽しいならやればいいと思う。入らなくても、繰り上がるだけのことだし。
だけど、東京と神奈川の入試は、全国の中学入試の最後の最後、2月だから、前哨戦の地方入試で心折れてその後も失敗したら本末転倒ではないか、と他人事ながら心配になる。
今の時代なら、地方遠征までして、コロナに罹りでもしたら最悪本当に行きたい学校の入試を受けることすらできなくなるかもしれない、というリスクも追加されるだろう。
まぁ他人事なんだけど。

合格実績がほしいのは、塾の都合。つまりは大人の都合である。
大人の都合のために大変だよな、と中学受験界の片隅の低みから眺めている。

エピソード2では塾名の実名つきでそれを書いたから、色々大丈夫なんだろうか、と思いながら読んでいた。
因みに先ほどの例に挙げた特待制度のある塾の何れかは、本の中で出てきた塾だったので、納得。

あとは、親の過剰な期待、というより、陳腐な言い方をすると承認欲求が子供を潰してしまった話だなと。
そして、子供にも謙虚さが足りなかったかなと。
親が天狗になってしまうと尚更子供にそれを身に付けさせるのは大変だと思う。
算数の途中式を飛ばすのは、算数できる子の一部であるあるだと思うけど、絶対に塾の先生に指摘されるはずだ。
されていないなら、その塾やめた方がいいんじゃない?って思うくらい、途中式は大事。
試験テクニックで途中点を…という以上に、どうせこの先の数学では延々と途中式を書いたり、場合によっては式で証明をしていくわけだから、書けないなんて言語道断だ。
間違えた時も、途中式があれば振り返れるけれど、なかったらイチからやり直しになる。本当は効率が悪い。
でも確かにめんどくさい。悪いことに数学系が得意な人こそ実はめんどくさがりだったりする(鬼偏見)
答えがあっているからいいって思ってしまう。
自分は算数ができるから、と。
先生の言うこと聞かなくたって正解しているからいいんだ、となると、素直に指導に従わない。
素直さがある子の方が伸びる所以であり、できる子の一部が陥る罠だ。
それに嵌ってしまったし、なまじ能力が高いだけに、壁にぶち当たって修正する機会も得ないまま本番になってしまったのかなと。

世間的には、進学先になったところだって十分すごい難関校だ。神奈川出身なので、よくわかる。
それでも、この中学受験そのものはきっと子供心にも母心にも失敗の記憶として残ってしまうんだろうな…と考えたら、切ない話だと思う。


3 地元密着小規模塾強し(だが、当たりを探すのは大変)

我が家の場合、今のところお世話になってはいないのだが、そう感じる。
ただ、選び方を間違えると大惨事でもあるので、悩ましい。
結局塾選びが大変で、とりあえず大手に…っていうのも間違いじゃないし、大外れにも大当たりにもならないんじゃないかなと思う。今の我が家もそれ。

でも、この地元で長くやっている系の塾、行きたい学校のターゲットと合っていればめちゃくちゃ強くない?というケースも見る。
主にいわゆる中堅校以下に限った話にはなるが、そういう塾は近隣の学校との個々の繋がりが強い。パンフレットに載っていない情報をご存知だったり、学校説明会みたいなものを塾独自で開催してくれたり、塾生のみの見学会をアレンジなんてこともある。コロナ禍で毎度争奪戦を潜り抜ける今日この頃ではありがたい話だ。

別に御三家みたいな上位校目指さないし、雰囲気のいい近所の学校に入れたら…という中学受験もある。
私自身、それに近い中学受験をしたクチだ。

私のゆる(すぎ)中学受験の話↓

入学後、学力レベル的にイマイチ…と子供本人は思っていた訳だが、親目線から考えると非常にコスパの良い進学になったので、こういう最初から闘わない系の受験戦略もありだろう。
特に地元公立が荒れている、学力が低い…などの公立回避や、内申点が取れそうにない不器用/音痴/運動音痴/目立たない子…などの理由で高校受験回避が目的ならば、究極中高一貫校に入れさえすれば良い。私の親はまさにそんな感じ。

ただ、私立はやっぱりその学校のカラーがあるし、昔よりは受験回数が増えていたり、方式も多様化していたりするから、受験は情報戦でもある。
そうなった時に強いのは、地元でずっとその学校を見て、継続的に生徒を送り出してきた塾だろうなと思う。

ただ、どんな人でも学校ではなく塾なら起業できてしまうから、その質は見極めが難しいのも事実で、失敗した場合、時間は戻ってこないから怖いのだ。

エピソード3では、地元系小規模塾の良い面と悪い面両方が描けていたと思う。
妹の方は良い塾を見つけたのだなと。
というか、ここで言及されていた塾は小規模だが有名なところだろう。我が家はこのエリアにないので、全く考えたことはないけれど。

地元系の塾、と一括りにしても、そのカラーは本当に多種多様だ。
諸事情あって地元系の塾を幾つか見学したことがある。
補習メインのところ、地元公立の定期テスト対策に強くて高校受験をメインとするところ、YTネット+独自教材のところ、個別指導一本のところ、チェーンの個別指導の看板を被っているけれどその中で独自路線のところなど。
正直、この中からその子にとって、我が家にとってベストなものを選ぶのはとても難しいと感じた。
何に似ているかと考えると、結局これ、志望校選びと同じなのだ。
それを入塾前にやっている。
大手塾でも勿論カラーがあって、方向性に合わせたものを選んでいくことにはなるが、情報も多いし、それぞれの塾が統一的かつ戦略的に作り上げたイメージもあるし、合格実績の傾向も数字が大きい分わかりやすいから、選びやすい。最難関目指すなら〜とか、公立一貫目指すなら〜とか、大まかに決められる。
地元系の塾は、ひとつひとつ見学して、評判も確かめて、という過程で、自分たちが何故受験をさせるのか?どんな学校に行かせたいのか?をしっかり持っていないと、適切な塾を選ぶことさえできない気がする。
通塾前の段階でそこまでする覚悟と時間がないと、合う塾には出会えないし通えないのだと思う。

エピソード3が最も満足度が高い受験、と思われるかもしれないが、その前段階の塾選びに大変な過程があると思う。この話の中では、多分上の子の塾選び失敗という犠牲を経てのこと。

下の子はおそらく地元系の塾から公立&高校受験回避目的での受験になるだろうなと思っているので、私もまだまだ模索&検討中だ。

4 中学受験の成功って結局何⁈と改めて考える

色々な成功例/失敗例を見ていて、自分の軸がブレそうになることはある。
やっぱもう少し手を出した方がいいんじゃ…と思ったり、いやいやもう少し本人に任せて…と思い直したり、日々心の中が忙しい割に成果が上がっていない気もする。

魔の11月、この周辺で毎年こういう中学受験本が出ているのだろう。
去年なら「翼の翼」が出ていたような(時期は定かではないけれど)
受験生が読むことより親が読むことを想定しているのだろうな、と思う。受験生本人はほぼ毎日塾でそれどころじゃないから。

改めて、我が家、我が子にとって、中学受験で得たいものは何か?を考え直して、いい加減ブレるのやめよ…と、来週塾に預けるようになっている子供への手紙(現在白紙)を見つめ直したのだった。

いや、note書いてないでそっち書こうね…

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