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アンチ勢と呼ばれる人

私はサッカーやモータースポーツを見るのが好きで、ネット等で好きなチームや選手の動向を追うことがよくあります。
また音楽のアーティストも同じように情報を見ています。

そうすると必ず出会うのが、「アンチ○○」という存在です。

私が応援するあるサッカーチームはかなりアンチが多いようで、一時期特に強かった時はアンチと思われる人のコメントや記事等が目立っていて、内容も言いがかりが多く、正直言って不快な印象を持ちました。

またよく聴く音楽のアーティストに関しても、何か悪いトピックがあれば必ずバッシングが起こり、それはたいてい音楽とは関係のない内容なので、「音関係ないやん…」という何とも表現しづらい微妙な気分になります。

私がそういうことがあるたびに思うのは、彼らがそこまでの熱意を保ちながら「アンチ」として存在し続けるモチベーションは何か?ということです。


コスパの悪すぎる存在


アンチになる人はどんな人なのか?とネットで5分も調べれば、「劣等感の裏返しに優越感を持ちたい人で、リアルでは孤独で周りに相手してくれる人がいなくて、承認欲求の鬼で歪んだ愛情の持ち主だ」などという解説が出てきます。

それはその通りなんでしょうが、そういった説明では私は納得できません。

なぜ彼らは嫌った相手を叩くためならマイナーな趣味の人しか集まらない掲示板のような場所にまで深夜出没し、妙に熱意のあるコメントを残しつつ、結局見事にその場の全員に嫌われ続けるのか、その理由が分かりません。

はっきり言ってかけた手間に対して得られるものが少なすぎると思います。


ごく少数の本当に変わった考えの持ち主ならそういった奇行に走ることもあるでしょうし、世の中には本当にいろんな人がいるのは確かです。

しかし私が複数のファンコミュニティやメディアでかなりの頻度でアンチ的な存在に遭遇することから考えると、彼らはごく少数の変わり者ではなくある程度一般的な普通の人々だと考えたほうが自然です。

でもどうしてそんなに明らかに無駄で無意味なアンチ的行動を、彼らは各所で自発的に行っているのでしょうか。


実は多数派なのか


そこで思考実験的な話をします。

私が想像する現在のネット社会とは、一般社会と同様に平和な普通の人々が多数であり、ごく一部の突出した少数派の人がエキセントリックな行動をして悪目立ちをしている、というものです。

しかしそれは実は違っていて、多くの人々がネットの匿名世界では普通のふるまいをしておらず、誰もが気分のままに罵詈雑言を投げつけ合っている、としたらどうでしょう?

現実の顔の見える社会で、他人に対して悪口や嫌味を直接言い放つ人はほとんどいません。
それこそ夜の繁華街のような場所以外でそういった姿を目にすることはほぼないですし、それが当然です。

でも、匿名化した瞬間に多くの人が暴力性をむき出しにするのが実は当たり前だとしたら、ネットの世界でアンチ勢が至る所に現れ荒らしていく現状に、むしろ納得がいきます。

あまり信じたくないことですが、もしかしたらそれが現実なのでしょうか。


彼らにとっての本気


私はやったことがありませんが、ネットのゲームではリアルな属性が一切無効になるので、小学生のゲーム上級者が大人のゲーム初心者を下手くそと罵倒するのは普通の光景だと聞きます。

「それってゲームだけの特殊な世界だよね」という笑い話になりますが、その小学生が真剣であればあるほど、一切冗談ではなく本気でその参加者を罵倒していると思います。

それとまったく同じ論理で、匿名のネットコミュニティでアンチ勢が本気で嫌いな相手をこき下ろしその場を圧倒して溜飲を下げている、というのは十分にあり得る話ではないでしょうか。

最近、SNS等で執拗なバッシングを受けた若い有名人が自ら命を絶つという非常に悲しい事件が続いていますが、そのバッシングを行う人も本気で彼らを憎み、言葉で殺しにかかっていると考えれば、本当に恐ろしいことですがつじつまが合います。


思考実験という形で考え始めたこの話ですが、考えれば考えるほどこの考えは当たっているんじゃないかと思い始め、否定できなくなってきました。

匿名のネット世界というのはいまだに非常に暴力的で何の抑制も効かない未開の荒野のような場なのかもしれません。

IT化が完全に浸透して、人のコミュニケーション総量に占める匿名率がリアルより高まったとき、リアル社会での規範がネット内で通用しなくなり独自のルールが生まれるか、またはリアル側が徐々に浸食され無法地帯が広がる恐れがあると思います。

かつての匿名の2chは本当にひどくて面白い場所でしたが、それはあくまで隠れた狭い世界だったからであり、それが表に出てくるのは悪夢でしかありません。

そろそろそういったリスクを管理するためのちゃんとしたルール作りが必要になってきているのではないでしょうか。




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