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孤独の中で見出す未来への希望

【コント(conte)】
フランス語で「短い物語・童話・寸劇」を意味する言葉。 日本ではいわゆる「演芸」や「お笑い」と呼ばれるジャンルに含まれるような、笑いを目的とした寸劇を指すことが多い(Wikipediaより抜粋)

昨年、漫才か否か・コントだなんだと物議を醸すような事象があったが、これに当てはめると、彼等がやっている事は紛れもなくコントであると思う。

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男性ブランコのコントライブ『栗鼠のセンチメンタル』

2021年2月20日、「遂にこの日が来てしまった」と言った方が、自分の中の感情としては正しい。
場所は新宿にある【紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA】…申し訳ないが、男性ブランコは吉本以外の劇場が途轍もなく似合うコント師だと思っている。『ねてもさめても宇宙人』の終わりに聞いたその報せが本当に嬉しく、この日の為に仕事も即休暇を申請した。

単独までの間、彼等もYouTubeで『平井か浦井か』という10分前後の配信を1月9日付で始めた…これに関しては彼等のYouTubeチャンネルを観てもらった方が早いと思う、一応リンクを貼らせてもらった(※2021年10月現在は非公開となっている)
この毎日の10分間も単独ライブへの期待値を上げてくれた。正直、毎日スマホ片手に待機するくらい楽しみだった上に、毎日コメントしちゃってたので、「なんか毎日めっちゃ即コメントしちゃってるけど、変なヤツやと思われてないかな…」という気持ちも少なからずあったが(中の人は変な人という自覚がある)、毎回興味深い話ばかりで面白かったからしゃあない。許して給れ(よくよく改めて考えたらキモいと思う)

そんなこんなで単独へのカウントダウンを、動画を観たり絵を描いたりして楽しんでいた(これを機にちょっと絵を描くことと向き合ってみようと思っている。写真の様に見える模写や肖像画、素敵イラスト描ける方、ほんと尊敬する)


さて、当日である。
先ほど単独ライブを劇場で観て、折角新宿まで出たのだからとちょっとした甘味を買い、ひとり電車に揺られ家路に着き、ノートPCを開き今に至るのだが、今までで一番言葉が出てこなくて困っている。
『栗鼠のセンチメンタル』という約90分のコントライブが途轍もなく素晴らしかったからだ。「あのコントのこの場面良かったな」とか、「このコントのこのセリフ良かったな」とか、普段ならサラサラとすぐに出てくるものなのだけど。
自宅の玄関の前に着いた瞬間が一番ヤバかった、意味が分からないくらい感情の波が急に押し寄せてきて、涙がグワァッと込み上げてきた。「あ、これヤバいわ」と思い、そそくさと家に入った。
言葉にしようとすればするほど、代わりに涙が溢れてくる。言葉にしようとすればするほど、言葉に詰まる。キーボードで文字を打っては消してを繰り返している。

なのでちょっと脱線させて欲しい。別の舞台の話を持ち出すのは至極失礼な話ではあるのだが、感覚的に同じだったので許して欲しい。
数年前、草彅剛さんと松尾愉さん主演の舞台『バリーターク』という作品を観た事がある。当時、観た直後は放心状態、言葉が出ず涙が溢れたという事があるが、今回の『栗鼠セン』を観た後の自分は、その時の自分とほぼ同じ様な状態なのである。甘味を買う為に待っていた時、実はちょっと放心状態だった。


閑話休題。
脱線してみたらちょっとずつでも言葉が出てきそうな感じがしてきたので、ほんとにちょっとずつ書いていこうと思う。アーカイブも一週間あり、これから観る方もいらっしゃると思うので、あまりネタバレのような事はしたくないし、今ぐらいふわっとした状態がちょうどいいのかもしれない。アーカイブ観ながら思い出しつつ、つらつらと書いていくので、お時間あったりお付き合い頂ける方はどうぞ。

音楽はもう公式さんがツイートしてるし、エンディングVTRもアップされているので書いてしまうが、前回に続きトニーフランクさん…『ねてさめ』の時も思ったが、男性ブランコの世界観との相性が本当に良すぎる。
「前回めちゃくちゃ良かったし、配信も入るで音楽困ってて、試行錯誤してるっぽいけど…今回単独でふたりだけやし、無いやろうなぁ」と思っていた。なので音楽でトニーさんが加わったことは本当に嬉しかったし、エンドロールを観ながらかなりグッと来た。
最後のコント直後にあの歌声を流すのは本当にずるい。泣きのツボを抑えられていると思わざるを得ない。「Color World」…平井さんの詞がトニーさんの歌声とマッチしていて、涙が零れそうになった。

そしてプロローグ的なふたりのコミカルなやりとりからオープニング映像が流れるまでのあの刹那を刮目して欲しいと思う。普段見せる温和なふたりからは想像できない疾走感、めちゃくちゃ好きだ。そして音楽と映像も言わずもがなオシャレかつ、ノスタルジー溢れてて堪らない(OP・幕間映像がオシャレなのは男性ブランコのコントライブの魅力のひとつでもある)
音楽に関しては『平井か浦井か』の中でも触れられていたが、それは杞憂に終わった。良い公演になる予感しかなかった。とりあえず各コントもアーカイブを観ながら会場で観た時の心情を思い出してきたので、感想を書いていこうと思う。

最初のコント…これ繋がってないようでやっぱり繋がってるよな…って最後のコントを観ながら思った。辛抱強く待つ描写の、よくアニメーションで観る様な演出がクスッと笑えて好きだ(観た方に何処のこと言ってるか伝わるだろうか…)、彼の『見たことのない景色』というのが、時が流れるにつれ変わっていったのか、はたまたハナからそうだったのかは、彼だけが知っているんだろう。

次のコントはちょっとファンタジーな世界線。何故か人間味あふれる謎の怪物・ゼゼが憎めない。そして友人だという亀山の寛容さに、自分が抱えるメランコリックな部分も、『怪物のメランコリー』と共に浄化してもらえたような気もする。それにしても、彼らの世界ではあの言葉がまさかソレにあたるのか、言語というのは時に面白い。

多分察するに、少し未来のお話。
荒廃した世界なのだろうか。はたまたどこか別の惑星か…そこは『花のない世界』らしい。浦井さん演じるフラーが登場した瞬間が面白すぎたので観て欲しい(次第に慣れてくると思うので安心して欲しい)、このコントはラストでそんな彼もビックリする展開が待っている。そしてそれは、この先へと繋がっていく。そして多分、『平井か浦井か』で話していた浦井さん作であろう小道具も登場すると思われる。カギはツーステップ、太陽の光は元気が出るね。

明転直後の平井さんのビジュアルが個人的には好きだった。あのビジュアル、結構こだわった形なんじゃないかと勝手に思う。そして、めっちゃお父ちゃんビジュアルな浦井さんを目にした瞬間、亡き父親を思い出し、少し涙ぐんでしまった。あんなにご陽気ではなかったが、家族に見せない『父のプライド』は同じぐらいのものを持っていただろうと思う。ウチの父親も同じくらい優しかったんだろうが、怒られてた記憶しか浮かばないのが申し訳ない。

素っ頓狂な店員が接客する、妖刀村正感ある店名の『犬のペットショップ』、そしてあの展開再来…あの演出、何度見ても秀逸でほんとに大好きだ。あっそうそう…ペットショップのお客さん、観てるこちら側が店員さんに対して思ってたことを代弁してくれてありがとう。

最後のコント。博士がほぼ定位置であること、休憩の仕方など最初観ているとちょっと不可解な部分があるのだけれど、次第にそれも合点がいく。我が子の如くデルタに注がれる『博士の純情な愛情』は未来の希望へと繋がる。
博士の愛情によりユーモアを得たデルタのシーンが好きだが、クライマックスに感情の波が突如押し寄せる。あの演出は劇場で観た時、音楽も相まってあまりに壮大だったので目に焼き付いている。あの光景は忘れる事は無いだろう。

だがしかし、これだけは忘れてはならない。これは演劇ではなくコントライブである。しっかりとオチはある。

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アーカイブで何度も観て欲しいと思った上で、極力ネタバレをしていないつもりではあるが、ここネタバレやんとか感じてしまったら許して欲しい。ただ、ちょっと好きなセリフがあったので、それだけはこの後に書かせて欲しい。とにかく余韻が凄い。最初のあの場面からデルタまでは確実に物語が繋がっている。
ただ、ゼゼや亀山・えっちゃんとお父ちゃん、ペットショップの二人が存在するのは、もしかすると別の世界線なのかもしれないし、はたまた別の星でのお話なのかもしれないし、あるいはアルファ博士が存在している頃のお話なのかもしれない。それはすべてを書いた平井さんのみが知っていることなのかもしれない。

「見た目がどうとか、種族がどうとか、生まれがどうとか、そんな動かしようのないもの、猫だって遊んでくれへん」という亀山の言葉と感性、
「『その感情』とは友達になっておいた方がいい」というアルファ博士の言葉は、心に携えてこれからも生きていくと思う。
そういえばエンドロールの時だったか、ネタ中だったかは忘れてしまったのだが、鼻を啜っている人が居る様子だった。その方がもし泣いていたのならば、その気持ちが分かりすぎるほどに分かる。

余談だが、『平井か浦井か』内、単独密着の最後で「賞レースに使えるネタが無い…」とふたりが嘆いていたのを観て、そんな賞レースで使えないけれど、観た人たちの心が感動に打ち震えたり涙したりするようなネタを作り続けられるという事が、男性ブランコの最大の武器なのかもしれないと思ってしまったのは、ここだけの秘密(嘆いていたご本人達からしたらマジで不本意だと思います、ごめんなさい)

最後に、前回∞ホールにて行われたコントライブ『ねてもさめても宇宙人』が終わり二週間ほど経った頃、誰も(ご本人すら)見ていないであろう深夜に書いたラブレターの様なツイートを唐突にした事があるのだが、それをそのまま晒して終わろうと思う(ある意味ちょうどリンクするコントやってくれたし)、『来年』という表記があるが、昨年書いたものをそのまま引用しているので、そこは勘弁してほしい(一応、2021年とだけは追記しておく)
改めて読んでも、自分にしては柄になさ過ぎて気持ちが悪いなと思ってしまうが、残念ながらこの時に抱いた気持ちは今も、そして多分これからもずっと変わらないのだ。

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わたしの好きな方達は、『ネタの世界観が独特』と言われたり、『見た目が地味』というカテゴライズをされてしまいがちなお笑い芸人さんではありますが、『素晴らしい』という一言では片付けたく無いくらい時に突飛で、時に温かなものが胸に灯るような物語を紡ぐ、やさしい心を持ったキツネさんと、人に興味が無いとは聞くものの、穏やかで時に優しく、時に色々な感情が込み上げてくる程の人間味溢れた芝居をする、変幻自在なタヌキさんの様な、そんなふたりです。
来年(2021年)以降、賞レースやメディアに出てバンバン名が知られて欲しいという気持ちは勿論あるのだけれど、たとえそれが叶わずとも、彼等のネタや人間的な魅力が漣(さざなみ)の様に沢山の人に広がり、あわよくば演劇の舞台など、お笑いの枠を飛び越えた分野含めて、幅広くそして永く活躍して欲しい。そう思っています。
これからもふたりが織りなす物語を陰ながらずっと観ていたい…彼ら男性ブランコっていうコンビなんですけどね。

【追記:3/1】
コントの内容に触れた感想記事を更新

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