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栗鼠センのアーカイブが終わりまして(ガッツリ感想をば)

男性ブランコのコントライブ『栗鼠のセンチメンタル』、アーカイブ視聴も含めて終了。

いやもう、まじでおセンチ…かと思いきや、実はそれ程でもなく。
どちらかと言うとスッキリした気持ちでいられてます。しばらくしたら「もう観られない」という空虚がズシンと来るやもだけど。
それにしても、単独までの時間、単独終わってアーカイブの間というのが本当に楽しいばかりの日々だったし(直近でも即興コントライブがあったしね)、本当にこれから先も寄り添ってくれるような、自分の中にずっと残る単独公演だったなと改めて思う。

今回は各コントの感想を書いていこうかなと思い、筆を執りました。
仕事終わりに電子台本を購入しまして、これがまたもう…本当に凄い。帰りしな電車の中で一気読みして、本気で泣きそうになって、電車の中でずっと鼻啜っておりました…花粉症の時期で良かった。
電子台本、気になる方は是非買って読んでみてください。内容がとても素晴らしいので、台本としてだけでなく、物語として読んでも感動します。そして読み終わったらこちらのエンディングテーマも併せてどうぞどうぞ。

因みに、公演直後に書いた”中の人の気持ち悪い爆弾”もとい、具体的ネタバレを控えた栗鼠センの感想記事は一応書いてあります。これに関しては別に気になる方が気が向いたら読んでいただく感じで大丈夫です(というのも、改めて読み返すと自分の気持ち悪いところが余すところなく出てるからです)



では、開幕から順番に感想書いていきます。完全主観なので異論は大歓迎です。

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『オープニング』
平井さん曰く、『コントのリスト』というタイトルらしい。
いつもの舞台衣装(チクベス)に身を包んでふたりが登場したかと思いきや、ひたすら床をコロコロ…サイレントで行われるコミカルなやりとりがめちゃ可愛い。コロコロの紙がほとんど破れなかった時の浦井さんのリアクション、素っぽかったけどどうなんだろう。
コントのリストを駆け足で紹介した直後にオープニング映像が流れ始めた時の、映像の光に一瞬照らされるふたりも含めてめちゃくちゃ格好良かった。その後の映像の疾走感と、パンキッシュな曲が「そろそろお楽しみが始まるよ」って言ってくれてるような感じ。アーカイブを観ながら、映像の中で幹じゃないんだけど、こちら側になにかが伸びてくるような描写があって、「アレ、樹かな…」なんて。
タイトルが出る直前の、ディレイさせたスネアの音、本当に痺れる。トニーさんいい仕事なさってる。

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『見たことのない景色』
「ノウハウ」のくだりも好きだけど、マリコの「クソが」のくだりが何度観ても面白すぎる、喉に引っかかった「クソがぁ」がほんと好き…自分、性格悪いのかな…。
珍しくサスペンスな展開に広がるかと思いきや、でっかいそら豆で結果やさしい世界。「それにしても、でっかいそら豆。」でこっちを見るひろのりがツボ。思えば、最後のコントでここに植えてたと思われるそら豆が芽吹いて、大樹になったのかなって考えるとグッと来るものがある。昔はここに彼ら一家の家があって、火を焚いて生活を営んでいたことになるのだから。
ひろのりがそら豆の上に待機する時の演出、ほんとアニメ的で好きだし、「結婚しました」の、テンポの良い動きが最高だった。
最後にひろのりの言葉に、暖炉に照らされるマリコのミカついてる顔が照れ臭さも交じっててまた良い。

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『怪物のメランコリー』
とにかく、ゼゼが可愛い…いや、かぁいい。
”盛岡冷麺”が人間の言葉でどのレベルの下ネタなのかが気になる。こんなに無邪気なゼゼと遊んだら、楽しい時間が過ごせそうだ。
亀山という男は、もしかすると日常で爪弾きにされていたりする中でゼゼと出会ったりとかしたのかなぁ…とか、もしくはゼゼが懸念していた『僕<即ち怪物>と遊ぶ』ことで爪弾きにされている、とか…ちょっとネガティブな考えだけど思ってしまう。でも、ゼゼとのやりとりを見ている感じ、彼は一本芯が通ってるような感じもするから、人間関係は良好な方なんじゃないかって気はする…なんとなくだけど…。
「ゼゼと一緒に居て楽しいっていう、本当を信じる」っていう友達思いで穏やかに真っ直ぐな亀山、わたしは好きだけど、「真実」や「事実」という言葉を使わず「本当」という言葉を選んでるのは、「嘘」の対義から来てるものなのかな。はたまた嘘が好きじゃないとか…?
コントの最後、劇場で観てる時は猫の登場でゼゼの方に目が向いてたけど、アーカイブで観たら猫を視覚で捕捉した瞬間、ちゃんと亀山が後ずさりしてて細かいなぁって思った。

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『花のない世界』
…いや君の名前、【デルタ】やなくて【デル太】やったんかい。って、台本見ながら思った。
初っ端、フラーのインパクトが強すぎて笑ってしまった。妖精のイメージを覆す程にべらんめぇ口調で、花のない世界にひとつだけ存在する蕾の行く末が心配になったあまり、思わずデル太に世話を焼いちゃう、なんだかんだで優しいフラー。
はじめの段階で、デル太は変な子なのかなと思ったけど、ロボットだと分かれば合点がいくね。デル太のあどけなさ残るツーステップがグッと来る。
アーカイブで見返して、ツーステップや、フラーが蕾に力を与える為に覚悟の様なものを見せたあの場面が、こんなにエモくなるとは思わなかった。この時のデル太は、アルファ博士との『別れ』を経験した後だもの。せっかく出会えたフラーとお別れしちゃうかもしれないって、不安だっただろうね。
蕾が傷付いた場面でデル太が歩いてくる時の画角、彼のやさしさや哀しさが伝わってきて凄く好き。
そういえば、アルファ博士は何ていう花の蕾を作ったのだろう?

あと、浦井さんが声張るとなんであんな面白いんだろうか。何回観ても「ロボットかぇーーーーーー!!」で笑ってしまう。

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『父のプライド』
”えっちゃん”ことエイコのビジュアルが本当に好き。
そんな氷の女帝と呼ばれる実の娘を見つけて、ぴょんこぴょんこ飛び跳ねながらブンブン手を振ってはしゃぐお父ちゃんが、愛嬌あって可愛すぎる。時々テレビのインタビューとかで見かける可愛いおじいちゃんとか居るけど、ほんとそんな感じ。モデルさん達もお父ちゃんの事、可愛いと思ってるんじゃないかな。
でも、えっちゃん…小6で将来の夢が”ソフトクリーム”なのはさすがにちょっとアレかもしれんな…(ちゃんと将来見据えてるお年頃でもおかしくないもの)

タイトルの『父のプライド』っていうの、なんとなくだけど一番最後の場面に凝縮されているんじゃないかって気がする。そう思うのは実体験というか、単に家族から聞いた話を思い出したからなんだけど。えっちゃんの呼びかけに振り向かずに返事したり、暗転のタイミングとかも引っかかるものがあったし…お父ちゃん、ほんまにイボ痔だけなんか…?

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『犬のペットショップ』
狸と狐、ふたたび。本当にラストのあの演出、最高すぎる。
(全く関係ないけど、ねてさめ以降『タヌキとキツネ』を見る度に男ブラさんが浮かぶようになってる中の人)
最初めちゃくちゃシュッとしてるのに、お腹を『ポンッ!』って叩く直前、顔が一瞬にして狸の感じ醸し出してくるのに、何のことやらさっぱりな店員さんヤバい。「ウォーミングアップがてら、わたくしの顔からどうぞ」ってサラッと爽やかに言う感じと、「イズレニセヨ~」の弱々しい対比がお気に入り。
あと、平井さん扮するお客さんの衣装と小物遣いが好き。やっぱり彼女は狐だからあの色合いなのか…鞄が可愛いなって思いながら観てた。怒りが蓄積されて段々と口が悪くなっていく上に、セリフとかツッコミの間とかが本当に絶妙。

さえずるな、小童。

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『博士の純情な愛情』
目ェ回るくらい昔の話で、ゲェ出るくらい未来の話。で、結局ゲェ出ちゃうふたり。
ロボットもゲェ出るんかな…電子台本内、コントのリスト部分で漢字が『愽士』になっているのが洒落てて好き。
それにしても浦井さんが声張るとなんでこんn(2回目)
…男女のおかしみのくだり笑っちゃうし、反抗期のデル太とアルファ博士のやりとりがめちゃくちゃ愛らしい。絵本を読んで欲しいデル太、抱きしめたくなる。この話の中で出てくる『怪物が出る絵本』の”怪物”って、ゼゼの事かなとも思ったり。
アルファ博士がAIロボットに対し我が子のように愛情を注ぎ、感情を得させる事に固執していたのには、生前のアルファ博士になんらかの出来事があったのではないかと、ついつい斜めな見方をしてしまう。あの愛情の注ぎ方はもう…そして、何度観ても別れの直前にデル太がアルファ博士に逆にムカつきを教える場面、博士の想いが伝わるかの如く、デル太の成長が見えて本当に大好きなシーンだし、この場面以降、ラストシーンまでずっと目頭が熱い。
ざんない(漢字だと『慚無い』って書くみたいですね)消え方をした後、穏やかで優しく、そして温かく包み込むように、「…デル太」と呼びかけるアルファ博士の声に胸がギュッとなって泣きそうだった。

「世界の様子が変わっても、何も無くなっても、1から始めようやないか」

この言葉に一瞬、『デス・ストランディング』を思い出した。
もしかすると、デル太とアルファ博士の物語は破壊と再生の話なのかもしれない(多分違う)

ラストシーンはまるで映画を観てるようだったなぁ。あれは忘れたくても忘れられない名シーンですわ。

Twitterにもちょっと書いたけど、『栗鼠のセンチメンタル』というタイトルは、デル太の掌に栗鼠と思われる生物が乗った瞬間が見えた時、自分の中に湧く感情なのかなって思ったり。この時のデル太のマイム、凄く栗鼠が見えるし、その後に中幕が開いて花吹雪が舞う演出も本当にずるい、泣かないわけがない。

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オチが終わった直後、暗転してタイトルが映し出された時に、宙に舞った花吹雪がキラキラしてるのがフィルム動画を回しているかの様な風情があって凄く良かった。そこからのエンディングテーマ…夢が終わってしまったかの様な、あっという間の100分間だった。スタンディングオベーションしたかった。

叶うならば今回の栗鼠セン、パッケージ化や再演など、何らかの形でこの先の未来に残る事を切に願う公演です。トニーフランクさんの音楽も配信して頂きたい程の良曲ばかり。このまま一週間だけで目にする機会が終わってしまうのは、酷く勿体ない話だと思っています。

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