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【トピックスレポート:第8回】音楽マーケティングにおける"Sped Up"

こんにちは!B.O.Mの竹内です。

B.O.M(ボム)は音楽ストリーミングサービスの楽曲URLなどを一つのリンクで管理・分析できるサービスです。

B.O.Mのnoteでは、月に2本程度音楽やマーケティングについてのトピックスを紹介しています。

第8回は「音楽マーケティングにおける"Sped Up"」です。

TikTokやInstagramのリールなどのショート動画において、原曲よりも再生速度を速めた通称"Sped Up"の楽曲が使用されているのを皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。今回のレポートではそうした動きをマーケティングの観点から考察していきます。

"Sped Up"とは?

ムーブメントとして

“Sped up”とはYouTubeやTikTokなどの動画サイト・SNSで誕生した、既存の楽曲を早回しにして楽しむというムーブメントです。
もともとは動画に使われるために作成されることが多かった"Sped Up"楽曲ですが、次第に楽曲そのものにフォーカスする。2023年現在では数千万回再生を記録している非公式の"Sped Up"音源もそう少なくありません。藤井風 - 死ぬのがいいわ の世界的なヒットの背景にもユーザーの作成した"Sped Up"バージョンの存在があります。上記のようなSNSにはユーザーが既存の動画から音源を転用できる機能もあるため、リリースされている音源のみでなく、UGCとして生まれた楽曲を用いたUGCが生まれうるというのも拡大の要因のひとつであると考えられます。
ファンやユーザーが勝手にエディットしたものを使用していましたが、この動きはいまやUGCの枠組みを超えて、アーティスト自身によっても取り入れられるものになってきています

"Sped Up"のルーツ

既存の楽曲に特に変更を加えず、再生速度を変えた音源をネット上でシェアする文化には2000年代前半に生まれた音楽ジャンルである「Nightcore」が源流として存在していると考えられています。基本的に違法のコンテンツではあるものの、投稿されている動画は多いもので1億再生を超える楽曲もあり、ネット上の音楽ムーブメントとしては非常に大きなものとして存在しています。

"Sped Up"の公式リリース

大きなムーブメントとなった"Sped Up"ですが、次第にリスナーだけでなくアーティスト側もアプローチを行うようになってきています。

リリースの理由

動画SNSでバズった楽曲がストリーミングサービスでも大きく再生数を伸ばすという流れは数多く存在していますが、そのバズの発生が”Sped up”バージョンであった場合は結果が変わってきます。
ストリーミングサービス上にはそのバージョンの音源は存在していないことから、元の楽曲に遷移してもそれはユーザーが求めているものと異なっており再生回数の伸びには繋がりづらくなってしまいます
そのため、バズを受けてリリースされる公式バージョンの"Sped Up"も数多く見られるようになってきました


リリースから間もなくして”Sped up”バージョンがバズったものもあれば、リリースから数十年が経過してリバイバルヒットに繋がったものもあります。
いくつか例を見てみましょう。

リリースされた"Sped Up"の例

Steve Lacy - Bad Habit

Bilboardチャート一位を獲得した楽曲の公式Sped Upバージョン。もとの楽曲が出てからわずか二週間で発表された。

Demi Lovato - Cool for the Summer

2015年にリリースされたヒット曲の公式Sped Upバージョン。UGCによるバズを受けてのリリース。

Michael Bublé - Sway

19年前にリリースされた楽曲がSped Upバージョンのバズを受け同様の音源をリリース。ほかにも数曲公式のSped Upを出しており、若年層の認知の拡大を図っている。

"Sped Up"のマーケティングへの活用

PRとしてのリリース

必ずしもバズ→Sped Upという順序が守らなければならないということはなく、むしろSped Upバージョンを公式でリリースしておくことでバズを誘発させるというのも大いにありえる手法です。
ゲスの極み乙女は2022年にこれまでリリースされてきた楽曲たちを早回ししたSped upバージョンの作品集を日本でいち早くリリースしました。こうした手法の活用は今後増えてくることが想定されます。

おわりに

今回はSNS上で生まれ、大きなヒットを生むまでに成長した"Sped Up"についてマーケティングの観点から考察を行いました。オリジナルの音源とは別にバズを狙うために積極的にアーティスト側が進んでSped Upバージョンをリリースを提供していくという流れも今後更に多く見られるようになってくるかもしれません。

今後もB.O.Mのnoteでは、本件のような音楽・マーケティング業界におけるトピックスについての発信を行っていく予定ですので、ぜひフォローしていただけますと幸いです!
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