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【トピックスレポート:第12回】新しい波となるか?「所有」されるストリーミングサービス

こんにちは!B.O.Mの竹内です。

B.O.M(ボム)は音楽ストリーミングサービスの楽曲URLなどを一つのリンクで管理・分析できるサービスです。

B.O.Mのnoteでは、月に2本程度音楽やマーケティングについてのトピックスを紹介しています。

第12回は「新しい波となるか?「所有」されるストリーミングサービス」です。

Apple MusicやSpotifyなど、これまで本noteで触れてきたストリーミングとは企業が提供するサービスとして存在するものでした。しかし、あまり注目されていないものの、実はストリーミングサーバー自体はある程度の知識と手間さえあれば利用者自らが所有、運営することも可能なのです。
そうした「所有される」ストリーミングという形式は今後音楽業界にどういった展望をもたらすのでしょうか?非常にラディカルなこのリスニングスタイルから得られる知見について考察を行なっていきます。

「所有」されるトリーミングの例

しかし、どのようにしてストリーミングサーバーを個人が所有できるのでしょうか。最もメジャーなプライベート用ストリーミングサーバーのアプリケーションのひとつである、「Koel(読み:クール)」を例に見ていきましょう。

Koel

導入まで
Koelはオープンソースのアプリケーションであり、導入にはサーバーの設定についての多少の専門知識が必要になります。しかし、細かな手順はここでは省きますが、日本語でも詳細に導入方法を解説しているサイトもあり、初心者でもスペック等の条件を満たしていれば若干の時間をかければ構築可能です。

機能
Koelでもプレイリスト、アーティストやアルバム別管理、お気に入り登録などの一般的なストリーミングサービスと同様の機能を利用可能です。

コンテンツ
Koelのストリーミングサーバーで聴けるのはむろん、そのサーバーの管理者が持っている音源のみとなります。しかし逆に考えればストリーミングが解禁されていない音源や、DJミックスなどの特殊なデータもサーバー管理者が手にしてさえいればサーバーに追加することでストリーミングが可能になります。

利用
いちどKoelを用いてストリーミングサーバーを構築すれば、あとはそのサーバーにアクセスするだけで収録されているコンテンツをどこでも楽しむことができるようになります。アプリのKoel Playerを使うとスマートフォンからも簡単に接続できるようになり、この点においても一般的なストリーミングサービスと変わりなく利用が可能になっています。

「所有」されるストリーミングが可能にすること

ここまでは個人が所有するまでの流れとその性能について見てきました。それでは、こうしたストリーミングサービスを所有するということはリスナーにどういった可能性を与えうるのでしょうか?考察を行なっていきます。

完全な独立性を有したストリーミング

一般的なストリーミングサービスは提供元の会社や組織により運営・管理されるものです。そのためユーザーの意向とは関係なく変更が行われることがあり、ある日突然音源や歌詞へのアクセスができなくなることや突然アートワークが変更されたりすることも起こり得ます。一方でKoelのような「所有」されるストリーミングサービスは管理者であるユーザーのもとにおいてほぼ完全な独立性を有するため、そのような事案は発生しません。

私有地としてのサービス

「提供」されるストリーミングサービスはそのほとんどすべてがUIやアクセシビリティ、そしてアルゴリズムといった要素でもってユーザーへの干渉を図ります。しかし「所有」されるストリーミングにはそうした干渉を受ける可能性はありません。前述した全てはユーザー次第であり、真に利用者の意思のもとでのストリーミングが行われます。

音楽そのものの「所有」へのモチベーション向上

アクセスできる音源はサーバーの管理者であるユーザーが手にしているものに限られます。したがって、こうしたストリーミングサービスを活用するほど音源を「所有」することに対するモチベーションが比例して向上していくことが考えられます。

音楽業界への影響

このような「所有」されるストリーミングサービスは未だ利用者が少なく、すぐに音楽業界に変化をもたらすものではありません。しかし先を見通せば、個人用サーバーの購入のカジュアル化や、導入におけるコーディングのハードルが低下していくことによる利用者の増加は大いにあり得ることです。ここからはそうした場合に音楽業界が受けうる影響について考えていきます。

著作権に関するトラブルのおそれ

「所有」されるストリーミングービスは管理者=利用者であるために所持している音源を聴くことができます。しかし構築されたサーバーを外部に向けて開くことも理論上可能であり、その場合には著作者などの権利を無視して音源が流通することになります。しかも、YouTubeにおけるContent IDのような自動でそれを追跡して収益を還元するような仕組みは独立したサービスという性質上、干渉が不可能になります。

統計情報の取得が困難に

各ストリーミングサービスが集計したデータからアーティストやレーベルはリスナーの情報を獲得し、それらをマーケティングに用いていくという手法が難しいものになってくる可能性が生まれます。

音楽を所有してもらうマーケティングへ

上述した理由により、リスナーはこれまでよりも音源を所有することへのモチベーションが高くなっていくことが考えられます。そのため、ストリーミングなどで聴いてもらうことのその先へ、つまり所有してもらうことの価値に重点を置いたマーケティングへと回帰していく可能性があるとも言えるでしょう。

おわりに

今回は「所有」されるストリーミングという新しい形態について考察を行ないました。現在ではまだ小さな動きに留まっているものの、技術的な拡大に伴って新しい可能性を広げていくと同時に非常に根本的な変化をもたらす可能性を抱いています。

今後もB.O.Mのnoteでは、本件のような音楽・マーケティング業界におけるトピックスについての発信を行っていく予定ですので、ぜひフォローしていただけますと幸いです!
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