【トピックスレポート:第13回】NewJeansの躍進を後押ししたマーケティング
こんにちは!B.O.Mの竹内です。
B.O.M(ボム)は音楽ストリーミングサービスの楽曲URLなどを一つのリンクで管理・分析できるサービスです。
B.O.Mのnoteでは、月に2本程度音楽やマーケティングについてのトピックスを紹介しています。
第13回は「NewJeansの躍進を後押ししたマーケティング」です。
時代はBTS、Twice、BlackPinkなどが人気を集めた所謂K-POP第3世代から第4世代と移行し、新たな世代のKPOPアイドルが次々とデビューしているなかで最も勢いのあるガールズグループの1組として注目されているNew Jeans。
彼女たちの大きな躍進の背景にはどのような戦略が存在していたのでしょうか。今回は実際の事例を参照しつつ、彼女たちを成功へと導いたマーケティングを紐解いていきます。
NewJeansとは
グループについて
NewJeansは、2022年8月1日にBTSなどのマネジメントを行うK-POP最大手事務所HYBEからデビューした5人組ガールズグループです。
Y2Kなどのレトロカルチャーを参照したコンセプトを打ち出したデビューミニアルバムから急速に人気を集めています。
チャートでの躍進
昨年夏にデビューしたばかりのNewJeansですが、昨年12月にリリースしたDitto、そして今年1月にリリースしたOMGが史上初となるデビュー6ヶ月でのグローバルビルボードチャート100へのランクインを達成するなど、世界的な人気を獲得しています。
また、ストリーミングのみにおいても第4世代のアイドルの中でSpotifyで月間1000万リスナーを獲得しているグループはまだほとんどいないなか、デビューから半年強、6曲のリリースのみでBlackPinkに並ぶ月間2170万リスナーという大記録をSpotify上で打ち立てています。
マーケティング戦略の源泉
ここからはNewJeansのマーケティング戦略を構築する源泉となっている要素を見ていき、そこからマーケティングについての考察を行なっていきます。
楽曲
KPOPの近年の音楽的特徴として、複雑なトラック作りやコード進行、ビートドロップなどHyper-producedと呼ばれるようなトレンドがありました。
・aespa - Black Mamba
対照的にNewJeansの楽曲は、単調なビートにR&Bやハウスミュージックのグルーブの要素を取り入れた楽曲が多く、そのシンプルさから“Easy listening” と呼ばれています。
・NewJeans - OMG
シンプルながらも耳馴染みがよくキャッチーなメロディーと、彼女たちの透明感のある歌声がファンの心を掴んでいると考えられます。
コンセプト
近年のK-POPアイドルでは、セクシー、クールビューティーなどがプッシュされる、媚びない力強さを表したいわゆる”女性が惚れる女”のことを指すGirl Crushと呼ばれるコンセプトを採用するグループが多くデビューしていました。
しかしGirl Crushは海外市場でのウケが良いものの、類似したプレイヤーが増えすぎたことで現在では新規参入するグループにとっては市場は飽和気味になってしまっているという点もあります。
そうした中でNewJeansはあえてGirl Crushをコンセプトに選ばず、Natural, Youthful, Freshをベースにしています。
このコンセプトのもとで彼女たちは強くてかっこいい女性アイドルとしての姿ではなくカラフル、ヒップ、z世代らしさといった要素をミックスしたナチュラルなティーンの姿を表現しています。
このように自然体でありながらも近年の新しいテクノロジーを用いつつ、2010年代のトレンドやY2Kなどの少しレトロな要素を取り入れた彼女たちのコンセプトはNewretroと呼ばれることもあります。
Viralness
マーケティングにおける他のグループとの大きな違いは、継続的な人気の維持のみでなく楽曲のリリース毎にネット上でバズを生み出すことに成功している点です。
その成功を支えている最も大きな要素のひとつが独特なTikTokの運営スタイルです。
TikTok
カバーダンスやミームなど楽曲を用いたトレンドをアーティスト側から非常に積極的に発信しUGCを促しています。
そのアカウント運営の特徴は以下のとおりです。
・楽曲ごとに動画プレイリストを作成しEpisodeとして発信
1つの楽曲につき平均20本以上の動画がアップされており、膨大な量のコンテンツをプロフィール上にてシリーズとして閲覧していくことができるようになっています。
・簡単なものから難易度の高いものまで誰もが真似できるダンスチャレンジの提案
無闇にターゲットを広げていくのではなく、スキルや熱量に応じて区分(=ターゲティング)したファンに対し、それぞれに応じた動画を投稿しています。また、そもそもNewJeansのダンスの振り付けはバズを生み出しやすい(真似しやすい)=Viral friendlyに作られているものが多く、こうしたアプローチを可能にする要因にもなっています。
・動画トレンドの積極的な採用
オリジナルコンテンツのみでなく、TikTok上にすでにあるダンスチャレンジやVLOGといったトレンドやミームを取り入れた動画も頻繁に投稿しています。
その他のアプローチ
Phoning
NewJeansのファン向けアプリ、Phoningではメンバーの写真をはじめ、電話やチャット風の画面から聴けるボイスメッセージなど多様なオリジナルコンテンツが提供されており、また会費の支払いによって機能の拡張が可能になっています。
スマホが普及し始めた当時の少し粗めなグラフィックや昔のPC画面のようなレイアウトがモチーフになっており、ファンクラブとしての帰属感、カルチャーにおける結束感をより強化する働きを持っていると考えられます。
CD・グッズ展開
デビューEPは2種類の形態で発売されており、彼女たちのコンセプトを踏まえて作られた優れたデザインのものになっています。
TYPE-A
Bluebook(学校のテストで用いられる用紙)をモチーフとしたメンバーのフォトカードやブックレット、メンバーがデコレーションしたCD、パッケージのデザインなどがランダムで梱包されたボックスセット。
TYPE-B
曲名が刺繍された丸型のポシェットにCDやフォトカードが入っているもの。
ユニークなアイデアとレトロ調なデザインが人気を集めました。
ポップアップストア
個性的なデザインのケーキで知られる、NUDAKEというスイーツ店とコラボしメンバーをイメージしたケーキを中心に販売するポップアップストアを期間限定でオープンしました。
見た目だけでなく中身までかわいらしい、NewJeansのモチーフとなっているウサギを模ったケーキなど、SNSでシェアしたくなるようなデザインがそこかしこに散りばめられています。
店内の2mを超える巨大ウサギケーキのオブジェはフォトスポットとしても人気を集めました。
おわりに
今回はいま最も勢いのあるK-POPガールズグループ、NewJeansの躍進を後押ししたマーケティングについて考察を行いました。
そのマーケティング戦略を要素に分解して見ていくと、市場を俯瞰で見たうえで独自の立ち位置を設けることのできるポジショニングに成功したことと、そこに基づいたコンセプトによる一貫したコンテンツ設計によって着実にグループを前進させていることがわかります。
こうした王道ではありながらも難しさもあるマーケティング戦略がHYBEの培ってきた市場に対する知識とノウハウ、リソースのもとで見事に花開いたものと考えることができるでしょう。
今後もB.O.Mのnoteでは、本件のような音楽・マーケティング業界におけるトピックスについての発信を行っていく予定ですので、ぜひフォローしていただけますと幸いです!
Twitter(@BOM_twjp)のフォローもよろしくお願いいたします!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?