【トピックスレポート:第5回】 「ワークアウト」プレイリストって結局何なの!?
こんにちは!B.O.Mの竹内です。
B.O.M(ボム)は音楽ストリーミングサービスの楽曲URLなどを一つのリンクで管理・分析できるサービスです。
B.O.Mのnoteでは、月に2本程度音楽やマーケティングについてのトピックスを紹介しています。
第五回は「『ワークアウト』プレイリストって結局何なの!?」です。
突然ですが、まずこれらの楽曲をお聴きください。
ピョートル・チャイコフスキー『Piano Concert No.1 in B-Flat Minor, Op. 23, TH.55』
Polo G『RAPSTAR』
優河『灯火』
お聞きいただいた曲にはある共通点があります。わかりましたか…?
答えはどの曲もストリーミングサービス上で「ワークアウト」カテゴリ内のプレイリストに選ばれているということです。
(それぞれ、Spotifyより「Workout Cooldown」「Beast Mode」「アコースティック・チル」に収録)
1875年に制作されたクラシックの名曲からBillboard Hot 100で初登場一位を収めたヒップホップの名曲、そして日本で放送された金曜ドラマの主題歌…実は現在「ワークアウト」カテゴリはこれらの楽曲すべてを包括する非常に巨大かつ多様なものとなっているのです。
今回はそんな巨大な「ワークアウト」カテゴリのプレイリストの現状について、特にSpotifyにフォーカスして見ていきます。
記事末尾にはSpotify上の主なワークアウトプレイリストについてまとめた一覧を記載しました。
運動する際のお供に、またはプレイリストピッチの参考になれば幸いです。
「ワークアウト」とは
言葉自体の意味
「ワークアウト」という語をWikipediaに入れると「フィジカル・トレーニング」という項目に飛ばされます。そこによれば「体力の強化と健康状態を維持する目的で実施する身体活動の一種」と定義されてあります。
それでは、この意味はストリーミングサービス上ではどのように扱われ、どこまで拡張されているのでしょうか。
Spotifyにおける「ワークアウト」
実際にプレイリストを覗いてみましょう。
Spotifyでは検索画面の「すべてのジャンル」のなかで既に「Workout」が入っており、すぐにカテゴリ画面へ飛ぶことができました。
また、カテゴリ内ではさらに「ランニング」と「ヨガ」に細分化されており、ひと画面に計75個ものプレイリストが一挙に表示されます。
しかし、ここに表示されるものが全てではないため、実際には更に多くの公式プレイリストが存在します。(記事末尾「おまけ」を参照)
プレイリストの特徴
Spotify上の「ワークアウト」プレイリストにはどのような広がりがあるのでしょうか。一部を抜粋して見てみます。
Beast Mode
『Beast Mode』はワークアウトカテゴリ全体において最もフォロワーが多いプレイリストです。
収録されているアーティストはビヨンセ、ケンドリック・ラマー、Lil Babyといったヒップホップ寄りのアーティストと、デッド・マウス、ゼッド、ザ・チェインスモーカーズといったダンスミュージック寄りのアーティストの二種類に大きく分けることができます。
収録楽曲も新譜、話題作が中心で、際立ってトレンドを見据えたつくりになっていることがわかります。
Adrenaline Workout
つぎに筋骨隆々の男性がものすごい表情でダンベルを持ち上げている姿がカバーになっている、その名も「Adrenaline Workout」について見ていきましょう。
リンプ・ビズキット、パンテラ、リンキン・パーク…、こちらは打って変わってロック、またはメタルがほとんどを占めています。大まかな定義としてはBPM100以上の、主に90年代以降のロック、メタルの楽曲といった感じでしょうか。なんにせよ、「Beast Mode」とは明らかに違ったターゲットとシーンが想定されていることが見てとれます。
Acoustic Pilates
さらにもう一つ、「Acoustic Pilates」を見ていきましょう。
こちらに並ぶのはフリートウッド・マック、ジャック・ジョンソン、ジェイムズ・アーサーといったまさに「アコースティック」な、そしてチルアウト系の楽曲を多くリリースしているアーティスト達です。
上の二つとはまったく重なっていない領域の楽曲をカバーしている、非常に個性的なプレイリストになっています。
プレイリスト一覧
ここからは2022年11月現在の「ワークアウト」カテゴリに収録されているプレイリストを一覧にまとめ、それぞれの特徴を記載していきます。
ワークアウト系
Workout
・4,737,480
・新譜中心
・ポップス
・BPM 110-150台が中心
Workout Latino
・119,799
・新譜中心
・ラテン系ダンスミュージック/ヒップホップ
・BPM 90-130台が中心
Rap Workout
・1,830,367
・新譜中心だが90年代のヒット曲も収録されている。
・ヒップホップ
・BPM 60-90台が中心
Workout Mix: J-Hip-Hop
・7,518
・新譜中心だが2017年のリリースもあり幅が広め。
・J-Hip-Hop
・BPM は70前後が多いが、振れ幅が大きい。
Power Workout
・4,072,523
・新譜中心
・ヒップホップ
・BPM 70-100台が中心
Workout Twerkout
・1,743,978
・新譜中心
・ヒップホップ
・BPM70-100台が中心だが、比較的BPMが高いトラップが多め。
・Twerk(トゥワーク)、あるいはそれを活かしたエクササイズ向け。
Beast Mode
・9,437,204
・新譜中心
・ヒップホップ/ダンスミュージック
・BPM 120-150台が中心(トラップはBPM 70前後)
Beast Mode Dance
・399,822
・新譜中心
・ダンスミュージック
・BPM 120-130台が中心
Beast Mode Hip-Hop
・1,392,010
・新譜中心
・ヒップホップ
・BPM 70-100台が中心
Beast Mode Christian
・79,515
・新譜中心
・ヒップホップ
・BPM 70-90台が中心
・宗教色が強い「Beast Mode」
Beast Mode Latin
・122,926
・新譜中心
・ヒップホップ
・BPM 70-90台が中心
・ラテン版「Beast Mode」
Motivation Mix
・6,563,744
・新譜中心
・ダンスミュージック
・BPM 130-160台が中心
Hype
・2,471,545
・新譜中心
・ヒップホップ/エレクトロニック/ベースミュージック
・BPM 60-100台が中心
・ドロップがある曲が多い。
Cardio
・3,655,106
・新譜中心だが、2-3年前のヒット曲も収録。
・ダンスミュージック
・BPM 130-160台が中心
・Motivation Mixよりもポップスからインディまで、セレクトの幅が若干広い。
Latin Cardio
・1,312,535
・新譜中心
・ラテン系ヒップホップ/ポップス
・BPM 90-130台が中心
Locked In
・1,555,357
・新譜中心
・ヒップホップ
・BPM 70-80台が中心
・小休憩用のプレイリスト。
Body & Soul
・265,514
・60年代以降の楽曲
・ソウル/R&B/ファンク
・BPM100-120台が中心
Rock Your Body
・115,376
・新譜・90年代以降の楽曲をミックス
・ロック
・BPM 70-150台と幅広い
Punk Rock Workout
・521,395
・新譜・00年代以降の楽曲をミックス
・パンクロック
・BPM 100-150台と幅広い
Country Workout
・884,148
・新譜・90年代以降の楽曲をミックス
・カントリー
・BPM 70-80台が中心
Techno Workout
・63,250
・新譜中心
・テクノ/ハウス
・BPM 120-130台が中心
Trap Workout Beats
・161,926
・新譜中心
・インストゥルメンタルヒップホップ(トラップ)
・BPM 70-80台が中心
90’s Workout
・135,150
・90年代の楽曲
・ポップス
・BPM 100-120台が中心
ヘビー・ワークアウト系
Adrenaline Workout
・2,053,445
・00年代以降の楽曲中心
・メタル中心
・BPM 70台から170台まで幅広い
Extreme Metal Workout
・496,353
・新譜・10年代の楽曲をミックス
・メタル
・BPM 70-80台が中心(トラップはBPM 70前後)
ランニング・サイクリング系
Fun Run
・1,434,887
・00年代以降のヒット曲
・ポップス/ダンスミュージック
・BPM 120-140 台が中心
Power Hour
・2,254,230
・新譜中心
・ダンスミュージック
・BPM 120-140台が中心
・ポジティブな曲調が多い
Fast Pop Run
・273,912
・00年代以降のヒット曲
・ポップス
・BPM 100-120台が中心
Electronic Running
・108,217
・新譜中心
・ハウス
・BPM 100-120台が中心
Running x Remix
・445,727
・新譜・00年代以降の楽曲をミックス
・リミックス楽曲
Classical Running
・72,548
・年代問わず収録
・クラシック音楽
Run ‘N’ Bass 170-175 BPM
・466,242
・新譜中心
・ドラムンベース
・BPM170-180台が中心
90th Pop Run
・404,474
・90年代のヒット曲
・ポップス
・BPM 100-120台が中心
00th Pop Run
・923,057
・00年代のヒット曲
・ポップス
・BPM 90-130台が中心
10th Pop Run
・358,935
・10年代のヒット曲
・ポップス
・BPM 120-140台が中心
Born To Run 150 BPM
・811,804
・80年代の楽曲
・ロック
・BPM 120-150台が中心
・「150 BPM」とあるが、120台はおろか90台とかも割とある。
Morning Run
・221,642
・新譜・10年代以降の楽曲をミックス
・ハウス/エレクトロニック
・BPM 90-120台が中心
Metal Charge
・426,376
・90年代以降のヒット曲
・メタル
・BPM 70-100台が中心
Run This Town
・635,722
・新譜中心
・ヒップホップ
・BPM 70-90台が中心
・ワークアウトカテゴリの中では珍しいブームバップ中心のプレイリスト。
Running To Rock
・929,360
・00年代以降のヒット曲
・ロック/メタル
・BPM 140-180台が中心
・前半はBPM120-140台の楽曲が多く、中盤から160以上の楽曲が多くなってくる
Pop Rock Run
・164,950
・新譜・00年代以降のヒット曲をミックス
・ポップス/ロック
・BPM 100-130台が中心
Retro Running
・422,009
・70-80年代のヒット曲
・ポップス
・BPM 70-140台まで幅広い
ROCK ‘N’ RUN
・504,002
・80年代以降のヒット曲
・ロック
・BPM 140-160台が中心
Run Wild
・2,424,836
・新譜・00年代以降のヒット曲をミックス
・ポップス/フォーク/ソウル/ルーツ・ロック
・BPM 110-140台が中心
Lactic Acid Run
・132,798
・新譜・00年代以降の楽曲をミックス
・ドラムンベース
・BPM 150-180台が中心
Indie x Running
・220,145
・新譜・00年代以降の楽曲をミックス
・インディポップ/ロック
・BPM 100-130台が中心
ウォーキング系
Powerwalk!
・490,031
・直近2-3年以内のヒット曲中心
・ダンスミュージック
・BPM 100-120台が中心
ヨガ&ピラティス系
Acoustic Pilates
・71,165
・新譜・70年代以降の楽曲をミックス
・フォーク/ポップス
・BPM70-90台が中心
Yoga & Meditation
・1,763,567
・新譜中心
・ニューエイジ/アンビエント
Sunrise Yoga
・283,395
・新譜中心
・ニューエイジ/アンビエント
・ピアノが入った楽曲が若干多い。
Piano Yoga
・69,866
・新譜中心
・ピアノジャズ/アンビエント
Pilates Lounge
・77,421
・新譜中心
・ハウス
・BPM 100-120台が中心
Vinyasa Flow
・153,646
・新譜中心
・Lo-Fi/インストゥルメンタルヒップホップ(ブームバップ)
・BPM60-80台が中心
Hatha Yoga
・101,033
・新譜中心
・アンビエント
・民族楽器が使われている楽曲が若干多い
ヨガ+瞑想
・19,187
・ジャズ/ニューエイジ/クラシック
その他
Zumba Beats
・1,846,551
・新譜中心
・ラテン系のポップス/ダンスミュージック
・BPM 70台から170台まで幅広い
・Zumba(エクササイズの一種)用のプレイリスト。
Cool Down
・163,996
・新譜中心
・ニューエイジ/アンビエント
・クールダウン用のプレイリスト。アンビエント多めだがヨガ・ピラティスカテゴリには区分されていない。
Michelle Obama’s Workout Playlist
・66,564
・ミシェル・オバマ氏によるセレクト。
Locker Room
・1,880
・NATIVE誌とガーナのサッカー選手Kofi Kyereh氏によるセレクト。
おわりに
「ワークアウト」というカテゴリはいまや非常に多様な意味合いを持つものになってきており、あらゆる楽曲がプレイリストに入る可能性を秘めています。
今回は分析のためにSpotify上で「ワークアウト」カテゴリに収録されている主なプレイリストの一覧を作成しました。
皆さんも運動の場面や聴きたい楽曲のテイストからプレイリストを探してみてはいかがでしょうか?また、プレイリストごとの特徴や傾向をつかむことで、アーティスト側にとっては自分の楽曲とムードをマッチさせてリスナーの拡大を図ることができるかもしれません。
今後もB.O.Mのnoteでは、本件のような音楽・マーケティング業界におけるトピックスについての発信を行っていく予定ですので、ぜひフォローしていただけますと幸いです!
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おまけ
検索しないと出てこない「隠し」プレイリストの一例。
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