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(感想)映画「さかなのこ」を観て

先日劇場で「さかなのこ」(2022年/日本/139分)を観てきました。テレビやYouTubeで大人気のさかなクンの半生を描いた沖田修一監督の作品です。
僕の高校生の娘が、何故かさかなクンのことが結構好きで、「面白いらしいよ」と言っていたのが観に行くきっかけでした。
予告編を観るとさかなクン役をなんと女優の のんがやっていて、「なるほど、そこはオタクっぽい男子を使うより、すんなり受け入れられそうだし純粋にストーリーに集中できて良いかも」と感じました。
そしてまさしくその配役がバッチリ決まって、ハートウォーミングな味わいのある作品でした。

あらすじ

大人気のさかなクン(のん)は、ミー坊と呼ばれていた小学生のころから、魚のことしか頭にない変わった子。毎日魚の絵を描いたり、新聞を作ったり我が道を突き進んでいた。周りの心配をよそに、母(井川遥)は彼の可能性を信じて応援し続ける。
やがて高校生になったミー坊は、持ち前の天然で不良グループにも動じず、理解のある先生たちにも恵まれて充実した学生時代を過ごす。卒業後に夢を持って魚関係の職につくのだが、社会とのズレを感じて苦悩することに、、
(あとはご自身でお楽しみください)

良かったところ

観終わった後に、心がほんわか温かくなって、希望が持てる内容に仕上がっています。それは、わかりやすいストーリー構成と登場人物のおかげだと思うので、それぞれ分けて書いてみようと思います。

ストーリー

後で知ったのですが、さかなクン本人による自叙伝「さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!」(2016)をベースに、フィクションを織り交ぜて構成されています。
大きく、小学生時代、高校時代、卒業後の苦節と、3つの時代が時系列に丁寧に描かれているのでわかりやすいですし、鑑賞している者全員がしっかりミー坊を好きになり応援する気持ちになれます。
家族旅行での父の行動、少年時代の変なおじさん(さかなクン本人)との遭遇、不良グループ同士の喧嘩の中での幼馴染との再開、、色々楽しいエピソードがあり、ミー坊は常に普通と違い変わっているので、それぞれの会話のやりとりや、知り合った人々の反応が笑えます。実際、劇場で多くの人が声を出して笑っていました。
そういう意味ではコメディーのジャンルといってもいいのかもしれないけれど、さかなクンの人生を旅に例えたらロードムービーとも言えるかもしれません。旅の中で色々な成功、失敗、喜び、悲しみを繰り返しながら、少しずつ成長していくという。。
僕の解釈で言うと、魚 x 変 x 夢と現実 x 絆 = ハートウォーミング な作品に仕上がっていて、「ほんわか」とか「ほのぼの」といった優しいワードが全体を包んでいると思いました。

また、
普通って何?
好きなことを追求するのは変なの?
といったメッセージが込められていて、考えさせられました。
僕は第2次ベビーブームでいわゆる「団塊ジュニア」なので、競争社会の中、いかに上手く学校・社会のシステムに適応するかを求められてきたように思います。さかなクンも、年齢は同じようなものなので、実際結構苦労したんじゃないでしょうか?
今の時代は多様性を尊重しているし、人生の選択肢もインターネットで調べたり、自己表現する手段がいっぱいあるので、まさしく今、さかなクンのような生き方が認められるだろうし、むしろ応援される世の中なのかと思います。
だから、是非、夢を追っている/探している若い人に観て欲しいな、と思いました。実際僕の娘も大満足のようでした。

登場人物

全体のストーリーを厚みのある味わい深いものにしているのが、素晴らしい登場人物たちですので、そちらの観点でも語っていきたいと思います。

さかなクン=ミー坊を演じる のん は、男性役を見事に演じ切っていました。冒頭に「男か女か関係ない」というようなテロップが出るのですが、確かに普段からメイクの印象もなく、つるっとした顔立ちで、中性的なので、学ランを来ていても全然違和感がなく、劇中も性別のことは全然気になりませんでした。
キャラとして、天然の感じを出すのが重要なのですが、そこは演技じゃなく素で表現していたのではないか?と、思うくらい自然でしたね。また、何事にも動じない、いつも飄々としている感じが、のん本人のマイペースな口ぶりとマッチしていて、ハマり役だと感じました。
子役の西村瑞季ちゃん(こちらも女の子)も、あどけなさとマッシュルームカット的な髪がとても可愛く(自分も子供の頃そんな髪型でした)とっても愛嬌があって良かったですね!

そして幼馴染ヒヨを演じる柳楽優弥。大好きなドラマ「ゆとりですがなにか」(2016)にも出ていて好きな俳優さんなのですが、彼のちょっとツッパリながらも隠しきれない優しさ、細かい気配りなど、印象的な目や眉で上手く表現していて良かったです。

幼馴染といえば、モモヨ(夏帆)も、同世代の生き方の対比として、心からの笑顔が出せない、疲れている感じがよく表現できていたし、恋愛とかないミー坊の人生に、少しでも家庭とか父親とか意識させるアクセントにもなっていて良かったと思います。

そしてミー坊の母を演じる井川遥。彼女がデビューした頃から好きなので、それだけでも演技を観られて良かったのですが、役回りとして、子供がいくら変わっていようと、先生に「普通って何ですか?」とたてついたりと、子供が好きを追求する姿勢に、どんなことでも無条件に応援する育て方が感動しました。
確かに子供は可能性の塊です。放っておけば「好き」に夢中に邁進するのに、制限をかけてしまうのはいつでも親や周りの大人です。自分の都合や好みよりも、子供の夢を応援する姿勢は親の鑑だと思ったし、子供を見守る優しい目がとても素敵でした。

最後に、ミー坊が小学生時代に遭遇する、魚に異様に詳しい変なおじさんを演じているさかなクン本人について。この役は他のリアリティのあるキャストや設定に対して、どうなんだろう?と思うような異次元的な存在ではありますが、「本当に好きだけを追いかけて、周りに仲間や支援者をつけないと、ただの変質者になっちゃうよ」と言う、反面教師的なメッセージなのだと思います。
これが最初の方にあることで、ミー坊が社会と調和できない変わり者に向かうか、魚博士に向かうかと言う人生の布石にもなるので良かったと思いました。

まとめ

書いてみると結構長い感想になりましたね。
ただほんわか系の後味の良い作品と言う捉え方もできるけど、メッセージ性にも注目して、観終わってからも自分の日常や人生の参考にするのがいいのではないかと思いました。
つまり、
純粋さ・誠実さが共感を呼び、応援してくれる仲間を作る
とか、
人生、好きなこと x 得意なこと x 人のためになること(人が喜んでくれること) x  お金が稼げること ができれば最高の幸せを手に入れられるよ
とか、
それは誰でも可能なんだよ。社会の見えない制限・慣習・常識の壁を自ら越えていけばね
とかですね。

いい作品を観たと思います。そして僕もさかなクンが好きになってしまいました。まだ観ていない方は、是非劇場にレッツ、ギョー!(笑)

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