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とある国の話(創作)


ある国にブログというものができた頃、王様は言いました。

「ブログというものはな、誰かの問題を解決することが大事なのじゃ。もっと他人の役に立てい。ブログを書いて他人の役に立てた者にはほうびをやろう。我が国民たちよ、この国を助け合いの精神あふれる素晴らしい国にするのじゃ」

国民たちは歓喜しました。次の日からみんなブログを立ち上げ、それぞれ記事を書き始めました。周りの人や、知らない誰かが悩んでいることを想像し、どのような解決策があるかを自分の知識や経験を元に考えていくのです。最初はとてもたいへんで、まったく手につかない人もいましたが、徐々にできあがる人がでてきました。そしてついに一人完成! さあ後は公開するだけだ。緊張とワクワクで胸がいっぱいの中、記事をアップしました。

結果は大反響でした。ある人は記事を見た人たちから「助かったよ。聞きたかったんだけど、誰に聞いたらいいかわからなくて困ってたんだ」と感謝の言葉をもらいました。とても嬉しく思いました。これなら記事を書いた甲斐があるってもんです。

そのことを早速、王様に報告に行くと「よくやった、よくやった。そなたにほうびを与えよう」とたくさんの食べ物とお金と洋服をもらいました。まるで夢のようでした。子供は今まで見たことがないような美しい笑顔を見せ、妻は大泣きして喜びました。記事を書いた人は「今まで貧乏でつらい想いをさせてごめんよ、これからはみんなで幸せに暮らそうね」ゆっくりと三人で肩を寄せ合いました。こうして一つの家族に灯りがともるのでした。

めでたしめでたし

とはいきません。この話には続きがあります。

先ほどの家族がすっかりお金持ちになったいう噂はすぐに国中に広まりました。他に記事を書いていた人たちは俄然やる気になりました。自分もあのようになりたい、そう思って第一号さん(と呼んでおきましょう)の元にたくさんの人が集まってきました。「いったいどうやればいいんだ、教えてくれ」

「もちろんいいですよ」第一号さんは快く教えました。たくさんの人に教えたので自身の時間は減ってしまいましたが、その結果第二号さん、第三号さんと生まれていったので嬉しさでいっぱいになりました。他人のために何かをするってこんなにいいことなんだ! さあみんなでこの喜びを分かち合おう! 誰かの問題解決をすることで、王様からごほうびをもらい、ますますこの国で他人の役に立とうという人、つまりはブログを書く人が増えていきました。

みんな真剣にやりました。真剣にやったおかげで徐々に悩みを持つ人の数は減っていきました。みんなはとても喜びました。盛大にお祭り騒ぎではっちゃけました。これからもみんなで仲良く楽しく生きていこうね。この国をつくった偉大なる王様に感謝! みんなは王様への感謝のしるしに王様の銅像をつくりました。みんなの絆は強固でした。

幸せな日々がしばらく続いたある日のこと、とある悩みを抱えた人がブログを調べ、無事解決できたので、記事を書いた人にお礼を言いにいきました。お礼はしたのですが、近くにいた人が言ってきました。「それならオレも同じ記事を書いたよ。解決方法も君が話したのとまったく同じさ」

後からわかったことですが、他にも同じ解決方法が書いてあるブログが複数あったのです。これはいったい誰の手柄なのか、みんなで話し合いました。「記事を一番初めに書いたのは私だ」とある人が言えば、またある人は「見られたのは私の記事だ」と言い、またある人は「それを書けるようにしたのは私だ」と話がまとまりません。

結局どうなったか申し上げますと、王様に相談した結果、記事はみんなのものとなり、ごほうびは全員で均等に分け合うことになりました。これによって確かにその場は収まりましたが、当人たちの関係は徐々にギクシャクしていきました。今までと同様にごほうびをもらうには、みんながまだ書いていない記事を作り、問題解決をしなければならないのですが、それができる人は少数でした。なぜならほとんどの人は、誰かの1つの記事をまねることで、記事を作っていたのです。いざ新しいものをと思っても作ることができないのです。そして、たとえ違う記事を作れたとしても、その悩みを解決したいという人は、前の分野に比べて少なく、さらにそこには別の問題が起こっていました。

それは、悩みを相談する人自体が減ってしまっていたのです。これは、悩みを相談するだけではごほうびがもらえないので、たとえ悩みがあったとしても、それを隠して悩みを解決する側に回っていたからなのです。つまり

問題を解決するブログが大量に発生するという問題が起こってしまったのです。

これによってみんなはお互いのことを信じられなくなってしまいました。悩みを解決する側のフリをして本当は相談したいことがあるんだろう。もし悩みがあるなどと正直に言ってしまうと、その人の元へ大量のお悩み解決人が来てしまうのです。それぞれがお互いをさぐりあうといった状況が続いた後、こんな現象が起こりました。

問題を解決するブログが増えているという問題を解決するというブログが誕生したのです。

しかし、これによってどうなったか。もうおわかりでしょう。すなわち

問題を解決するブログが増えているという問題を解決するブログが増えてしまったのです。

それによって、さらに……(以下省略) もうわけわかりません。

結局、国民全員がブログを書き、悩みを相談する人がいなくなってしまいました。

結果、誰もごほうびをもらうことができなくなり、既にお金持ちになっていた人たちは、ねたまれ、財産を奪われてしまいました。

そして、みんなの不満は王様へと向かいました。

「こんな国になったのは誰の責任だ! こんな王様はいらない!」

「わしはただ……みんなの役に……」王様の言葉に耳を傾ける者は誰もいませんでした。こうして王様は国を追放されました。

その後、その国はどうなったか。

追放された王様は、ブログで他国に相談をしました。自分を追放したあの国を滅ぼして欲しい。それに対し相手国は、王様の財産と引き換えにこれを了承、王様の悩みは無事解決されたのです。

その後の王様の行方は誰も知りません。

ただ王様の銅像ならば、今でもまだここに残っています。

ぼろぼろに朽ち果てているその様は死んでいるようでもあり、生きているようでもあります。

この国のことを思い出させてくれるの唯一の物です。

今では、この場所に来る人は誰もいません。私は時折ここに来ては当時の記憶に浸っています。当時を知っている生き残りの一人として。

初めてブログを完成させた第一号である父の子供として。














確実に続けていますので、もしよろしければ!