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「カレーにウィスキーを入れたらおいしかった」ことへの考察

カレーにライウィスキーを入れた瞬間、何かが変わった。

スパイスが一瞬で立ち上がり、まるで眠っていた風景が突然色づくように。カレーの湯気が立ち昇るそのキッチンで、何度も繰り返して作ってきたはずの家庭料理が、急に別の次元を持ち始めた。ウィスキーの濃密な香りがカレーの辛さと複雑に絡み合い、食材一つ一つが過去の記憶を呼び覚ますようだった。

思い出したのは、あの古びたバー。テーブルの上に置かれたグラスの底に残った琥珀色の液体。昔、二人で静かに語り合った夜のことを。お互いに言わずにすれ違った気持ちが、今、カレーをかき混ぜるたびにこぼれ出る。ライウィスキーは、その夜のように重く、そしてどこか後を引くような深みを与えている。

味は確かに変わった。まろやかで深く、少しビターな後味が残る。しかし、それ以上に変わったのは、カレーを作っているこの瞬間だ。すべてが淡々と過ぎていく日常の中で、ほんの一滴のライウィスキーがその全てを歪ませた。

その変化が嬉しかったのか、悲しかったのか、それはわからない。ただ、今この瞬間に感じることは、何か新しいものが、失われた何かと共に、そこにあるということだけだ。