三次元に神さまを表現したのは、たくさんの人の力と優しさだった【舞台『千と千尋の神隠し』レビュー】
断続的にではあるけれど、小・中・高と、演劇畑にいた。
舞台で演じたい方だったので、あらゆるめぐりあわせでそれが叶わなかったあのときには、ちょっといじけたりもしていた。
「私を音響に追いやりよって…」と内心にがにがしく感じていた対象は、当時の同級生である演出。
そんな彼女は、本番当日、私の隣で混じりけない強い目線で舞台をにらみながら、機材のサポートをしてくれた。
今なら。彼女と同じ気持ちで、舞台をイチから一緒に創ることができるのに。
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昨日、ものすごく久しぶりに観劇した。
話題も話題、舞台『千と千尋の神隠し』である。
あまりの人気に、チケットの入手自体が困難な舞台。
とんでもないビックリなご縁で、夫とふたり分のチケットを手に入れることができた。
諸事情により公演中止となる回もある中で、私たちの回は上演されることになった。
この幸運に感謝し、残念ながら観劇の叶わなかった方の分も満喫しよう…と、並々ならぬ思いで博多座へ。
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まず、感想をひとことで述べるなら…
「千と千尋」って、実写化できるんだ。
あんなシーンや…
こんなシーンや…
そんなシーンも…
見事なまでに、再現されていた。
あんなにもファンタジーな神々の世界が、三次元で目の前に現れた…しかもライブで。
ちなみに、このシーンはあまりの表現力に泣いた。
これを可能たらしめているのは、主演の上白石萌音ちゃんをはじめとしたメインキャストの疾走感あふれる演技はもちろんのこと、「名もなき」役割のメンバーの力量。
それは、時に扉であり、時に植物であり、時にカオナシの一部であり、時にまっくろくろすけをふぁさふぁさと動かす人たちであり…
舞台の奥で生演奏しているオーケストラであり、「これでもか」という技術力を集結させた舞台のセットであり、でしゃばらずとも効果的な照明技術であり…
そして、例えば衣装をつくったり、キャストのケアをしたり、事故なく上演できるよう力を尽くす劇場スタッフのような…舞台の裏側や外側にいる、たくさんの人たち。
そのどれが欠けたところで、成り立たない。
どれだけ多くの人が、どれだけこの作品に真剣に向き合ってきたことだろうか。
頭の下がる思い…
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「演劇は総合芸術」ということばは、確か高校の演劇部の先輩が教えてくれた。
「複数の分野の芸術」の範囲をもっと広く捉えていいんだな…と感じる、圧倒的な舞台だった。
たくさんの人の力や優しさで成るものがあるのだということを、まざまざと見せつけられた気がしている。
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今回の観劇を叶えてくださったすべての人に、感謝を込めて。
どうか身体を大切に、千秋楽まで駆け抜けてください!
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