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【腰痛の原因!腰方形筋はただ緩めるだけじゃダメ!!】


腰痛の約85%が、神経症状や重篤な基礎疾患がなく、画像診断と一致しないからといって非特異的腰痛という分類になっています。

しかし、運動機能から見ると、非特異的腰痛のほとんどは原因を解明できます。

今回は腰痛の原因と言われることが多い「腰方形筋」に焦点を当て、文献情報と解剖学/機能解剖学の視点に現場での活用方法について紹介していきます。


臨床において腰方形筋 は過活動や硬さを呈し,トリガーポイントである

Janda ら

健常者において腰方形筋は脊柱の安定性 に重要な役割を果たす

McGill ら

上記2つの文献から、脊柱の動的・静的機能を有しており、
腰痛群では腰方形筋内側線維の機能が低下し,脊柱の分節的コントロールに影響を与えることが予測できます。

このことについて、超音波診断装置を用いて、腰方形筋活動が著明であった脚組および殿部挙上動作におけるWBI(体重支持指数weight bearing index)と腰方形筋厚との関係、および 2 群間での検討を行なった文献を紹介します。

WBIと腰方形筋厚との関係について

対象は健常者 9 名、非特異的腰痛患者 8 名の計 17 名とし、筋厚測定には ALOKA 社製超音波診断装置を用いられました。
測定部位は
上後腸骨棘からの垂線、第 3 腰椎高の交点

測定肢位は
静止立位・静止座位・脚組座位・脚組座位骨盤挙上

測定値は mm 単位で同機器にて画像確認し画像処理ソフトを用いて 0.1mm 単位にて計測し安静時筋厚を100%としてその変化率を算出。

WBI測定はハンドヘルドダイナモメーターを用い、最大値を体重比百分率(%)に換算して行います。
測定には膝伸展筋力を用い、下腿下垂した端坐位、体幹垂直位で 5 秒間の最大等尺性収縮筋力を2回測定し、数値の高い方を採用。
統計処理にはSPSSを使用し、群間の比較には対応のない t 検定を、群内比較には 一元配置分散分析を用い、その後多重比較検定を行いました。
WBIとの関係にはpeasonの相関係数を用い、有意水準はいずれも5%未満とする。

結果

2 群間の比較では、脚組座位、脚組座位骨盤挙上において健常群内側線維で有意に高値を示した(p<0.05)。
肢位別筋厚変化に有意差は認めなられなかった。
非特異的腰痛群WBIと健常群WBIで有意差を認めた(p<0.05)。
さらにWBIと脚組殿部挙上における内側・外側線維比で両群とも負の相関を認めた(p<0.05)。

結論

この実験結果から、非特異的腰痛群では内側線維の機能が低下し、脊柱の分節的コントロールに影響を与えている可能性が示唆されました。
また、WBIとの関係から、腰方形筋内側線維が筋出力に影響を及ぼしていることが示された。 

文献を臨床に活かす

腰方形筋は、姿勢保持筋としての機能がメインのLocal Muscleと動的な機能がメインのGlobal Muscleが入り混じっている筋肉です。


内側の線維は脊柱に付着していて、姿勢の保持/安定性に関与するLocal Muscle、外側の線維は第12肋骨〜腸骨稜に付着するGlobal Muscle。

外側線維は、表層に起始部分の広背筋(広背筋は停止部分に比べて起始部分の方が筋腹が薄い)と腹筋群が数層覆うだけに対して、内側は広背筋、胸腰筋膜に加えて脊柱起立筋群に覆われています。

現場での考え方として
外側線維に関しては、徒手療法やダイレクトストレッチのアプローチで狙うことが出来ますが、内側線維に対しては厚い背筋群が覆い被さっているため、徒手やリラクゼーションでは深くて狙うのが難しい。
その為、持続的な伸張でのアプローチが有効です。

内側繊維に対する具体的な運動としては、脊柱の屈曲運動がベストです。

ここで注意したいのが、姿勢保持筋としての作用も持っているため緩めるだけではダメということ。
筋肉が緊張するということは別な要因があるはずなので、包括的に身体を見ることが大切です。

人間の関節構造:Joint by joint 理論

Joint by joint理論とは、人体の関節が「安定性が重要な関節」と「可動性が重要な関節」の2つの役割に分けられ、それぞれが交互に並んでいるという理論のこと。

ここからもわかるように、問題が見られる局所のみをアプローチするのではなく、問題のある部分の上下の関節の役割が十分に発揮できているのかを、全身の協働を包括的に評価する必要があります。

特に腰痛の場合、まず問題のある関節の上下にある”胸椎”と”股関節”の動きを見ていきましょう。

腰方形筋のある腰椎は安定性が重要な「スタビリティ関節」です。
安定性が重要な関節が安定できない要因としては
動くことが重要な上下の関節が”動かない”ことによっておこる腰椎のモビリティ代償作用が起こります。
よって、腰椎が不安定な状態になり、その周辺の筋肉や靭帯に負担がかかります。

その場合、胸椎と股関節の可動性を出すような施術・エクササイズから行いましょう。
下記に一例を載せて起きますので、ご参考にしてください。

●腰椎のスタビリティと股関節のモビリティを出すエクササイズ

●胸椎のモビリティ(回旋)


まとめ

腰方形筋へのアプローチは
外側線維→徒手療法やダイレクトストレッチでの介入
内側線維→エクササイズ等で持続的伸張での介入

これに加えて、緊張する原因を上下の関節から探り、協働的に関節が働いているかを判断していくことが重要です。

ぜひ、皆様の現場で活かしていただければと思います!

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