十五首「腐敗はそれから」


「腐敗はそれから」

眠くなるだけでも音楽は聞かれていてそんな春を拒否する

餃子定食のお店で待ってグミなら一個あげるのにって言う

イルカ(たぶん)が生ごみ入れでジャンプしてももの名まえ ひかって

ずれた音楽が耳から指へ指からまぶたへ暗ひ陽だまり

丁寧じゃなくててーねい想像のたねを取ってスプーンで刺す

春から春を引くシンクの光。大好きなドーナツがねばつく

「空きびんにひつじが住みついて嘘みたい」ごみの宮殿からのお手紙

ごめんね 広いひなたはいきものといきもの以外が横切っている

地下鉄にひみつのはなし遮って未来都市からくじらが来ます

あまおうを食って食って食って吐いてグロい春の中央で笑ふぜ

あれだけのスコールを降らせておいて今日は鳥を愛でるときた

口づけの眼瞼のうらに無人島あるようでない水脈となり

満月を向く猫の眼に満月とその都ありわれはまれびと

海岸の岩岩岩を過ぎ 丘へ、風は冥王代を透かして

なみなみに注いで部屋は深海の呼吸降り積むそれも春の日

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