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育成責任を持つマネージャーしかできない唯一のこと

この記事は Ateam Lifestyle Inc. Advent Calendar 2021 4日目の記事です。

私は執筆時点で、株式会社エイチームライフスタイルでエンジニアとデザイナー部門でマネージャーをしております。本職はエンジニアです。本記事はエンジニアに限らず様々な役割における組織のマネージャーの皆さんに向けて書いたものであり、成長に悩むチームのメンバーである皆さん全てがお読みいただいても良いように気をつけて筆を進めます。

マネージャーはみんな育成に悩んでいる

突然ですがマネージャーの皆さん、こんな悩みを抱いたことありませんか?

・メンバー(部下)の評価をどうしていいか分からない
・メンバーの成長が芳しくない。育成をどうしていいか分からない
・自身の現場ブランクが顕著になり、教えられるものが乏しくなってきた
・会社や事業の課題解決に追われ、育成のための時間や手間を取れない

乱暴に決めつけますが、悩んだことがない人などいないんじゃないかと思います。

大きな責任を負うマネージャーの皆さん、あえて簡単に言ってしまいますがメンバーの育成に集中してみてください。あなたは責任者として様々なミッションを負っている立場ではありますが、あなたのミッション遂行条件のほとんどの場合「あなた一人で遂行すること」という前提が明示されていることは非常に少ないことを、忙しい毎日であるかと思いますが少し冷静に整理してみたら、そんなシンプルなことに気づけると思います。メンバーが成長するほどに、あなたが負っている様々なミッションの達成確度は劇的に向上します。短期的にはあなた自身が主導することで成功確度は最大化するかもしれませんが、中長期で見たときにはほぼ間違いなく、メンバーが育っていることがあなた自身や組織にとってプラスに作用します。

そんなこと言っても、メンバーもマネージャーである自分自身も忙しく働いている中で、育成/成長に割ける時間なんて限られてるよ、、という考えもあるかもしれません。もし育成を捗らせる上で、時間がネックになっているのであれば、大丈夫です。気のせいです。

マネージャーにしかできない唯一のことは、挑戦機会を与えることである

あえて乱暴な言い方をしてしまいますが、メンバーを育てるためには、仕事を通して失敗や成功体験を通して、少しずつ自分の可動域や視座を向上させていくしかありません。

あなたがメンバーに任せた仕事やミッション、これまでの実績を振り返ってみてください。「そのメンバー」にとって「その仕事・ミッション」は「あなたにとって、全幅の信頼を置いて任せられるもの」だったでしょうか?
新任マネージャーの皆さんが想像するなら、自分がメンバーだった時に任された経験を思い返してみてください。

もし”そう”だとするなら、そのメンバーにとって同種のミッションは初めからそうだったのでしょうか?あなた以前に別のマネージャーが同種のミッションをそのメンバーに初めて任せた時からそうだったのでしょうか?

もし”そうではなかった”とするなら、そのミッションを遂行した後のメンバーは、結果がどうあれそのメンバーには何か変化が起こっていたのではないでしょうか?成功したなら、その種のミッションを今後メンバーに任せる上での安心感は増しているでしょうし、失敗していたとしてもそのメンバーにとってその種のミッションを遂行する上で何が不足しているか?課題が以前よりクリアになっているんじゃないでしょうか?(課題が見えていないのであれば、急いでそのメンバーと振り返りを行ってください)

メンバーにミッションを与える/任せること、これだけはマネージャーが決定することではないでしょうか?たとえメンバー自身が起案したり志願したとしても、他部署やあなたの上司からのリクエストで与えたものだとしても、最終的にあなたのメンバーにそれを任せることを決断するのは、あなたの意思決定が中心にあるはずでしょう。

だからあえて断言しますが、メンバーの成長に必須であり、マネージャーであるあなたにしかできないことは「メンバーにとっての挑戦機会を与え続けること」です。

目標と評価、フィードバック。マネージャーだけで悩まない

挑戦機会を与えることが重要と言いましたが、もちろん以下の2点は十分気をつけましょう

(1)挑戦のハードルは適度な負荷とすること
(2)任せることと丸投げは、似ていて全く違う。正しく任せる

メンバーにとっての挑戦機会は、任せる皆さんにとっても勇気がいるものですが、それ以上にメンバーにとっても大きな恐れや負担になるものです。メンバーそれぞれは別の人間ですので、全てのメンバーにとって等しく適度なハードルの高さなどありえません。そんな難しいオーダーメイド、どうやって仕立てれば良いのでしょうか?

簡単です。自分にとってのハードルは、メンバー自身にも申告してもらえばいいのです。多くの企業では、MBOなどを通してメンバーと「目標」を共に作る活動をしていると思いますので、それを利用してください。

皆さんがそこでまず伝えるべきことはシンプルに二つだけです。

会社があなた(メンバー)に期待している成長と成果
あなたにとっての挑戦ポイントが含まれているか?

ぶっつけ本番で完璧な目標など絶対にできません。とにかく初稿を書き上げてもらい、それを挟んでメンバーと向き合って、期待と自己申告のギャップを洗い出してください。ギャップが大きいとするなら、それがなぜ発生しているのかメンバーと対話してみてください。

なんとなくギャップはあるものの、どこにギャップがあるのかうまく言語化できないことがあるでしょう。そんな時は、ためらわず第三者を交えたり、メンバーに他組織のマネージャーやスペシャリストにもみてもらうよう促したり、マネージャーである皆さんだけで整理しきらない課題は組織に属する人間全てを頼ればOKです。

エンジニアであるなら、ある技術の新たな習得や、習得レベルの深化について、マネージャーであるあなたが言語化しきれないポイントは、その分野に長けた社内のスペシャリストを頼ればいいのです。

もし頼れるスペシャリストが程よくいない場合は、私はこんな問いを立てて考えます。
「その技術が解決する課題は何か?会社や組織・プロダクトや顧客にとって、どんな良い未来を招くのか?」

それに続けて、「その技術を介した課題解決は、あなたの属する会社やチームにとっての新たな挑戦になっているのか?」「課題とメンバーの力、どちらかについて実は既存の何らか取り組みと本質的に異なるものか?」
それらの問いにもYes回答ができるなら、メンバーがその挑戦に意欲を見せている限り、もう躊躇う必要はありません。その目標は、組織にとってもメンバーにとっても適度な水準になっています。

適度な負荷を未来予測するのはやめる。スタート合意と軌道修正

前述の通り、目標を作る過程でメンバーと合意の上での挑戦水準が組みあがります。しかし、果たしてここで合意した水準は適度な負荷になっているのでしょうか?

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簡単な図ですが、メンバーの能力範疇で”こなせてしまう”ようなハードルは、そもそもハードルになっておらず成長機会になりません。チームや任せるミッションの成功確度という観点ではついこのようなアサインをしたくなる気持ちは共感しますが、メンバーの為になっていないことも理解してください。

一方で判断に迷うと思われるのが、「過負荷」と「適切な負荷」の線引きでしょう。当たり前ですが、マネージャーはメンバーの心身を守る義務があります。とはいえ、メンバーのキャパシティは本人自身も含めて正しく把握するのは難しい部分もあります。

ここで陥りやすい罠は、絶対安全な挑戦水準に留めようという思考です。これは”過負荷にしないこと”を主眼におくあまり、メンバーにとっての挑戦機会を奪いかねないからです。

ここでの考え方は、「まず目標を設定する段階で、メンバーが合意した際の自己分析を信じる」ことです。スタート時点で、完璧な読みをすることに力を使いすぎるより、その挑戦がマネージャーの目から見ても負荷となっていることに加えて、メンバーがその挑戦に(緊張感を持ちつつも)意欲を見せているか?をまずは信じてスタートしてみるのです。

その上で、スタートしてからメンバーの表情や言動に目を配ったり、メンバー自身からの報告に耳を傾けながら、危険な兆候がないか注意します。
当初は問題なかったとしても、何らかミッションの状況変化やメンバーの状況変化に応じて、適度なはずの負荷が過負荷な状態になることもあります

状況の変化に感度高く反応し、挑戦の負荷水準を調整し続けることが、本当の意味で適切な負荷をかけるマネジメントとなるのではないでしょうか。

丸投げにせず任せる。マネージャーの役割は?

メンバーに任せたミッションの成否を踏まえた、成果への責任をも負うマネージャーにとって、どこまでの失敗を許容すべきか?そもそもメンバーにとっての挑戦ポイントは基礎力の向上なのか経験なのか、その挑戦にあたり組織にとってどれほど新規性のある挑戦なのか(組織の成熟度)
シチュエーションによって、マネージャー/周囲のスタッフが取るべき動作や支援は少しずつ異なります。

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組織にとってはある程度熟練度がある種の挑戦について、メンバーの基礎力の高低によって支援の形は異なります。(図の右側)

メンバーの基礎力に欠ける状況であれば、スキルを教え、定着させるなどの動作に絞って支援活動を行います。メンバーがスキルを積み上げていける実感がモチベーションに繋がります。ミッション遂行にスキルに依らない外的要因でピンチが訪れれば、組織をあげてフォローに回るようにします。
メンバーの基礎力には実は問題ないケースにおいて、組織としてのバックアップ体制も敷かれている上では放っておくと挑戦機会とならない余裕案件になってしまいます。こういったケースでは組織力としての成長機会とすべく、そのメンバーにさらなる発展の糸口を考え出すことに力を入れてもらいましょう。「他には?」「もっといい方法はない?」などの問答を繰り返しながら、さらなる進化の糸口を掴んでください。

組織としても成熟に乏しい種のミッションの場合(図の左側)においては、特にメンバーの基礎力も乏しいケースで注意が必要です。周囲の助けが自発的には期待できない為、そのまま「無茶振り」に直行する危険を孕んでいます。

こういった組織の成熟も、メンバー基礎力も乏しい状況では、もはやマネージャーや組織の他メンバーが共に働くことを適度に織り交ぜることが効果的です。組織を挙げても「何が分からないか分からない状態」から、いかに一歩ずつ前進していくかの動作を背中を見せながら掴み取ってもらうようなイメージで、協働フォーメーションを敷いてください。

メンバーの基礎力に不安がない場合の挑戦観点は「自らが組織の進化を牽引していく」という経験そのものになります。外部知識を積極的に取り入れるなどの、このフェーズにおけるふさわしい動作を適宜アドバイスしながら、組織を牽引するダイナミズムをモチベーションに源泉にしてもらえるようなコーチングを図って行きます。

ものを教えること。マネージャーだけの仕事ではない

マネージャーが抱きやすいジレンマの一つに、徐々に現場から離れていくに従い、プレイヤー側の実務経験にブランクが生まれることがあります。

ことメンバーの育成に関して言うかぎり、これを恐れることはありません。ものを教えることは、言い換えればインプットを通して知識を蓄えてもらい、技能トレーニングを介して習得させるための活動です。あなたの会社のチーム内外や、外の世界に目を向ければ、優れた書籍もインターネット上の情報も、優れたトレーナーやメンターも、あふれているはずです。

それらすべてを活用しない理由はありません。マネージャーはメンバーに、必要な知識やスキルを習得するために、あらゆる策を講じることを促し、その策を共に考えたりアドバイスしてください。一人で悩む必要はないのです。

メンバーや組織にとってのあるべき姿だけ見る

ここまで読んで、メンバーへの挑戦機会をどう設定して良いか決められないと思う人もいるのではないでしょうか?その理由が、すでに十分に担当プロジェクトにおいて貢献してくれているし、なくてはならない存在になっているから、というケースは少なくないはずです。

担当プロジェクトにとっては、おそらくあなたの見立ては間違っていないのだと思います。そのメンバーはチームにとって無くてはならない存在であり、十分に心強い存在なのでしょう。

しかし、視点をチームやプロダクト、あるいは会社全体の未来にシフトしてみてください。あなたの会社やプロダクトは、1年後も安泰でしょうか?3年後は?ほとんどの場合において、未来永劫の安定が保証されている事業など存在せず、将来の成長戦略や盤石な事業環境を手に入れる上で、理想とする姿は無数に定義可能なはずです。

そんな理想の組織やプロダクトの姿を想像した時に、今以上にメンバーに取り組んでほしい課題もまた無数に閃くものではないでしょうか?
その無数の閃きの中から、あなたが「すでに十分成長した」と見立てているメンバーにとって、さらなるチャレンジとなるテーマはないでしょうか?
それが掴めさえすれば、メンバーにとっての挑戦テーマを導き出すことは簡単なはずです。願わくば、そのより良い未来の姿はマネージャーであるあなただけでは無く、メンバー自身にも想像し言語化を試みてもらうことをお勧めします(おそらく既に心強い戦力となっているような優秀なメンバーは、言われるまでも無くそんな展望をいくつも抱いていることでしょう)

ここまで想像して、マネージャーであるあなた自身が次に抱きそうなジレンマはおそらくこうではないでしょうか?「自分ができもしないことをメンバーに求めても、何もフォローができないし教えられることがそんなに無い」などと悲観的になっているのでは?

マネージャーであるあなたのミッションは何でしょうか?総じて言えば、事業や会社をより良い姿に成長させることでは?であれば、過去にとらわれる必要はどこにありますか?

さらに言えば、メンバーが今にも増して組織にとって価値ある人材と認めるためには、組織の何らか進歩に貢献した実績を元にするしかないでしょう。組織の進歩において、マネージャーであるあなたの過去の体験が活かせることもあるでしょうが、それのみで進歩し続けることはあり得ないでしょう。組織としても、挑戦し続けないと進歩がないのです。その挑戦テーマにおいて、あなたの成功体験に基づくものでなければならない道理はどこにもありません。

メンバー自身には挑戦の中心に立ってもらい、マネージャーであるあなたはその挑戦が成功する可能性を最大限高めるために、いざという時にメンバーに変わり挑戦の先頭に立つ覚悟は持っておいてください。その上で、関係各所と進捗はきちんとすり合わせつつ、メンバーの挑戦を支援することに全力を尽くしてください。

自分を棚に上げて他者や組織の未来に集中することが、自分の挑戦機会となる

メンバーの育成に必要なあらゆる動作・支援は、マネージャー一人で行う必要はありません。マネージャーが持つ人脈や経験をフルに活用して、メンバーの事を思うが故に、自力にこだわらず力を尽くしてください。

ただし、挑戦機会を適切に与えることだけは、マネージャーの覚悟と創意工夫が何より重要です。挑戦機会のアイデアはメンバー自身も、周囲の働きかけも多分に作用しますが、挑戦機会を正式に承認し、メンバーに与えることだけはマネージャーの専任事項です。皆さんが責任を負う様々な組織・事業の課題解決をスムーズにこなすためだけに権限を無難に行使するのではなく、会社もメンバーも成長させられるようなチャレンジをご自身の手で、ぜひ生み出してください。

逆説的ですが、メンバーに挑戦機会を与え続けるために知恵をしぼり、情報収集と分析に努める一連の行動が、そのままマネージャーである皆さんの挑戦機会にも繋がっています。良い育成をできてるなと皆さんが実感できている時、皆さんもまたマネージャーとして成長しているのだと思います。

おわりに

エイチームライフスタイルのアドベントカレンダー2021は明日も続きます。エンジニアだけではなく、弊社のデザイナーやマーケターなど個性あふれるメンバーが様々な記事を投稿予定です。ぜひ一度ご覧ください。

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