Bs 大卒社会人の歴史
大卒社会人とは
高校、大学を経由して社会人入りした選手のこと。入団時に23歳以上のため、「即戦力」として期待される。
高卒で社会人入りした選手も多いため、このような表現がされることが多い。
例えば..…
吉田一将投手(青森山田→日本大→JR東日本)は大卒社会人であるが
田嶋大樹投手(佐野日大→JR東日本)は、大卒社会人でなく高卒社会人である。
この記事では、大卒社会人にスッポトライトを当てて紹介していく。
(補足)
現役選手は2020シーズン時点での在籍年数を記載
移籍した選手の通産成績は移籍後も込み
自由枠があったドラフト期間内に指名された選手
光原逸裕 2005~10途(6年)
報徳学園→京産大→JR東海 2004年2位
背番号45
松坂世代の1人。オリックス・バファローズとして迎えた初のドラフトで指名された選手。自由枠で入団した金子千尋(※現在は弌大)の怪我が癒えていなかったこともあり即戦力としての期待が大きかった。
1年目から7勝を記録するも、後半に肩を故障して離脱。以降は指5本の靭帯を断裂する大怪我を経験するなど、故障に苦しみ1勝のみ。
2010年途中に斉藤俊雄とのトレードでロッテに移籍、2012年までプレーした。
(通算成績)28試合8勝12敗6.88 120.1回
高卒・大社分離ドラフトの指名選手
岸田護
2006~19(14年)
履正社高→東北福祉大→NTT西日本 2005年大・社3位
背番号14(2006~09)→18(2010~19)
"マモさん"の愛称でファンに愛された右腕
独特の首を傾けるフォームはファンなら誰もが1度は真似したことだろう。
ずば抜けたスタミナを誇り、1年目からローテの一角として期待された。2009年に10勝を挙げるも、故障の多さ故に規定投球回到達とはならなかった。
2010年に岡田監督が就任したことが転機となり、その年のシーズン中に抑えへ配置転換。翌年はオールスターにも出場。
以降も、定期的に先発転向を挟みながら投手陣の柱として長く活躍。
2020年からは二軍で投手コーチを務める。
(通算成績)443試合44勝30敗63H63S 2.99 786.2回
中山慎也 2006~15(10年)
桐生南校→城西大→JR東海 2005年大・社5位
背番号49(2006~11)→34(2012~15)
先発、中継ぎで活躍した貴重なサウスポー
制球はアバウトだが、スタミナは群を抜いており148球を投げ完投したこともあった。また、死球になる程変化するカーブも武器であり左打者に強かった。
2011年に初めて規定投球回に到達、以降は不振に喘ぎ中継ぎへ配置転換となったが、2012年には53登板、2014年には35登板し、優勝争いに貢献した。
(通算成績)178試合18勝32敗17H1S 3.82 511回
妹尾軒作 2006~7(2年)
大体大浪商高→大体大→一光 2005年大・社6位
背番号00
松坂世代。一光硬式野球部の活動中にプロ入りした最後の選手
入団早々サイドスローに挑戦し、2年目はコリンズ監督の秘密兵器と期待されたが、一軍登板はなし。
登録名は「軒作」
小松聖 2007~16(10年)
勿来工高→国士舘大→JR九州 2006年希望枠
背番号28
「キター!」でおなじみの男は2年目の2008年に大ブレーク、15勝を記録し球団初のCS出場に貢献。そして、現時点では球団最後の新人王に。オフにはWBC日本代表の一員として世界一に輝くなど次世代のエースとして「活躍間違いなし!」と思われたが..…
以降は不振や故障で出番が激減、晩年には130キロ台の直球とスプリットで抑える軟投派として活路を見出すなど試行錯誤を続けた。
コーチとしては山田修義にスライダーを伝授し、ブレイクのきっかけを作った。
彼が行った寄付活動のONEアウトドネーション(小松式ドネーション)は、選手の貢献度を図る指標として、今なお重宝されている。
(通算成績)159試合25勝26敗11H1S 4.38 482.2回
(獲得タイトル)新人王
2部ドラフト廃止後の指名選手
比嘉幹貴
2010~(11年目)
コザ高→国際武道大→日立製作所 2009年2位
背番号35
ドラフトの隠し玉としてオリックスが指名した、入団時点で27歳のオールドルーキー。サイドハンドからキレのあるスライダーとスローカーブで打者を翻弄する投球術は今なお健在
2014年には、火消しの達人として62試合で防御率0.79と圧巻の数字
2015年に右肩を手術するも、2018年に43登板し、完全復活。
2020シーズンも勝ちパターンに入り9ホールドをマークした。
(通算成績)320試合18勝11敗71H2S 2.79 274.1回
阿南徹 2010~12(3年)
柏原高→城西大→日本通運 2009年5位
背番号43
全員投手、比嘉を除いた4人全てが左腕という謎ドラフトで指名された1人
1年目から中継ぎで一軍を経験するも史上3人目の「1イニング2回の満塁弾被弾」
2012年オフに香月良太と東野、山本とのトレードで巨人に移籍、移籍1年目にプロ初勝利を挙げた
余談だが入団1年目は両打ち登録
(通算成績)28試合1勝2H 6.56 35.2回
佐藤達也
2012~18(7年)
大宮武蔵野高→東海大北海道キャンパス→Honda 2011年3位
背番号15(※入団当初は25だったがイデホ加入に伴い変更)
「サトタツ」の愛称で親しまれた剛腕。練習の虫としても有名
西本コーチのもとで2013年に覚醒すると、一気にセットアッパーに成長
2014年には7回馬原8回佐藤達9回平野の方程式で「7回時点でリードしている試合は100連勝」という大記録に大きく貢献
2年連続最優秀中継ぎにオールスター出場と、圧巻の成績を残した。
しかし、以降は股関節の故障や勤続疲労もあり出番が減少
ストレートとスライダーの2球で打者を制圧した"あの頃のサトタツ"は戻ってくることはなく、2018年限りでユニフォームを脱いだ。現在は球団広報
(通算成績)262試合11勝21敗109H14S 2.71 285.2回
(獲得タイトル)最優秀中継ぎ2013,2014
海田智行 2012~(9年)
賀茂高→駒大→日本生命 11年4位
背番号47
貴重な即戦力左腕として、1年目から先発中継ぎ両にらみの便利屋で一軍定着
2014年からは中継ぎに専任し、2016年には自身初の50登板
2017年に左肘を手術して以降は出番が減少していたが、2019年にキャリアハイの55登板で防御率は1点台、22ホールドとブルペン陣の救世主に
今季は出番が激減したため、2021年は再び正念場を迎える。
(通算成績)260試合6勝19敗56H 3.61 307回
戸田亮 2013~15(3年※支配下)16~18(3年※育成)
大成高→高千穂大→JR東日本 12年6位
背番号58(13~15)→125(16~18)
十亀剣の西武入団後にJR東日本の主力として活躍した速球派右腕
1年目に5試合に投げたが、以降は一軍登板なし
育成契約になって以降はサイドスローにフォームを変えた。支配下の期間と育成期間が同じという珍しいケース
フレッシュオールスターでチームメイトである堤のユニが届かず、戸田が増殖。好みのタイプがマスコットのバファローベル、山本由伸に登場曲で「すべてが僕の力になる」の使用を勧めるなどプレー以外でも多くの話題を提供した。
(通算成績)5試合 6.75 5.1回
吉田一将
2014~(7年)
青森山田高→日本大→JR東日本 2013年1位
背番号14
競合必須と言われていた「社会人ナンバーワン」がまさかの一本釣りでオリックス入り!
ポスト金子の期待が高く1年目に5勝も2年目は1勝に終わり、同期の東明(後述)に大きくリードを許す形に。
3年目にリリーフへ配置転換されると、フォークを絶対的決め球に確立しブレーク、翌年には先発で初完封、その翌年には再び方程式入り...とチーム事情に応じた起用法にも適応する能力に長けている。
今季もブルペンデーの先発など、様々な起用法に応えた。
(通算成績)226試合18勝20敗55H2S 3.74 341.1回
東明大貴 2014~20(7年)
富田高→桐蔭横浜大→富士重工
背番号26
独特のテークバックからMAX153キロのストレートを投じる右腕
ドラ1候補としても名前が挙がっており、オリックスは社会人トップクラスの実力者2名の獲得に成功
1年目から後半はローテ入りを果たすなど、即戦力にふさわしい活躍を見せ、2年目には規定投球回に到達し10勝
しかし、3年目は10連敗でシーズンを終えると2年連続右肘の手術
以降は140キロ前半のストレートでコーナーを攻める技巧派に転身、2019年にはオープン戦最優秀防御率で開幕ローテ入りも、完全復活とはならなかった。
(通算成績)94試合18勝30敗1H 3.97 458.1回
大山暁史 2014~18(5年)
別府青山高→亜細亜大→セガサミー 13年8位
背番号40(2014~15)→69(16~18)
168センチと小柄な体格から強気に打者の内角をえぐる投球が持ち味
1年目から開幕一軍入りも、1試合登板のみに終わり2年目でサイドスローに転向するが、2016年5月24日に22失点を喫した試合では1人で8失点(自責は1)と大爆発。翌年にはフォームを戻すと海田の離脱もあり出番を確保
この年はプロ初勝利を達成し、10を超える奪三振率を記録した。また、一軍では無敗、被本塁打0で現役生活を終えた。
(通算成績)42試合1勝6H 3.47 36.1回
髙木伴 2015~17(3年)
川口高→東農大→NTT東日本 2014年4位
背番号36
社会人代表で侍ジャパンにも選出された右のスリークォーター
即戦力リリーフとして期待も、制球に苦しみ2年目でサイドスロー転向
二軍では圧倒的な成績を残すも一軍に上がると制球が定まらず打ち込まれるシーンが目立った。
坂寄晴一 2015~17(2年)
鉾田一高→国士舘大→JR東日本 14年6位
背番号43
球速は最速140前半だが、多彩な球種と制球力を高く評価された。
1年目は1軍で1試合登板のみ、2年目にサイドスロー転向も一軍登板はゼロだった。
登板の際はゴーグルをつけることが多い。引退後は警察官に。
近藤大亮
2016~(5年)
浪速高→大商大→パナソニック 2015年2位
背番号20
大阪生まれ、大阪育ち、入団チームも大阪の生粋の大阪人
1年目から開幕ローテ入りし、2戦目を任されたが右肩腱板炎で離脱
2年目からはリリーフとして起用され、3年連続50登板
7割以上がストレートの組み立てで、高い奪三振率を誇る。また、追い込むと高め勝負を好む傾向がある。
2020年は開幕前から行方不明状態であり、一度ファームで復帰したが再び姿を消し、トミー・ジョン手術を行ったため来季から育成契約(背番号124)
(通算成績)160試合8勝10敗56H2S 3.22 162.1回
角屋龍太 2016~17(2年 ※17年は育成)
富田高→名城大→ジェイプロジェクト 15年8位
背番号58(16)→123(17)
ジェイプロジェクトからプロ入りした初の投手。都市対抗で一気に株を上げポスト・サトタツ候補としての期待が大きかった。
ベンツ入寮で大きな話題を呼んだが、それ以降はとくに大きく取り上げられることはなく、故障もあり1年で育成契約に。2年目は独立リーグに派遣され、まずまずの成績を残したがオリックスへの復帰日が8月だったため支配下に復帰できず、オフに自由契約となった。
(通算成績)2試合11.57 2.1回
赤間謙 2016~18途(3年)
東海大山形高→東海大→鷺宮製作所 2015年9位
背番号60
ワインドアップから繰り出すストレートとチェンジアップのコンビネーションが魅力の愛されキャラ
1年目から開幕一軍入りし、前半こそ打ち込まれたものの後半は立て直し、ロングリリーフを中心に防御率3.09
2年目は初勝利を達成するも、一軍ベンチに放置され"約一か月登板なし"の不運もあり、出番が減少。ロングリリーフでは金田や小林に押し出される形となった。
3年目に伊藤光とともに、白崎、高城とのトレードでDeNAへ。2020年限りでの現役引退を表明。
(通算成績)38試合1勝1敗1H 4.34 56回
小林慶祐 2017~20途(4年)
八千代松陰高→東京情報大→日本生命 2016年5位
背番号39
長身から繰り出すストレートに落差のあるフォークを組み合わせる
1年目から中継ぎで10点台を超える奪三振率を記録、先発への適応力も高く3年目にはローテ争いに最後まで加わった。
2020年途中に飯田優とのトレードで阪神へ、阪神はドラフト前に小林調査の記事が出た球団でもあった。
(通算成績)71試合2勝3敗5H 5.05 76.2回
鈴木康平 2018~(3年)
千葉明徳高→国際武道大→日立製作所 2017年2位
背番号30
チーム内に鈴木昂平(同姓同名)がいるため、登録名は奪三振を表す"K"と康平をかけて「Kー鈴木」
2年目にローテ入りし、100イニングを超える活躍を見せたが、昨年は制球難に苦しみ未勝利。
MAX153キロの馬力と決め球のスライダーは一級品だけに、逆襲に期待
(通算成績)31試合4勝8敗1H 5.25 123.1回
左澤優 2019~20(2年)
横浜隼人→横浜商科大→JX-ENEOS 2018年6位
背番号60
右肘の脱臼をきっかけに左投げとなった「左投げの左澤」
1年目から中継ぎで4試合無失点も、2年目は二軍で回跨ぎも精力的にこなし、一軍昇格も2登板目で大炎上
これ以降は不運も重なり一軍登板はなし。2年間で失点した試合は1試合だけに、なんとも(ファンとしては)残念な結果に終わってしまった。
来季から打撃投手に。
(通算成績)6試合6.23 4.1回
阿部翔太 2020~
酒田南高→成美大→日本生命 2020年6位
背番号45
MAX151キロ。28歳でプロの門を叩いたオールドルーキーは即戦力として手薄なブルペン陣の救世主となれるか?
在籍年数から見るオリックスの大卒社会人
支配下登録年数のみでの在籍年数の平均は5.57、中央値は5となった
また、育成契約の年数を加算すると平均値は5.76に変化する
育成込みだと、来季6年目の近藤がこの数値に1番近いこととなる。
輩出先ランキングベスト5
1.日本生命(海田、小林、阿部)
1.JR東日本(吉田一、戸田、坂寄)
3.日立製作所(比嘉、Kー鈴木)
3.JR東海(中山、光原)
5.その他
まとめ
合併から発足したオリックスは、足りない部分を即戦力の社会人で補おうとする傾向が強く、高卒選手が育つまでに有するの5.6年の間は即戦力がチームを支える体制を目指していたとも捉えられる。
しかし、高卒選手がなかなか育たなかったこともあり、うまく循環が出来ず、加えて外部への選手流出なども起きたため、その穴も補う必要があり、大卒社会人の指名数が相対的に増えたように感じる。
寺原、木佐貫が退団し、裏ローテに苦労した2013年オフは吉田一と東明を2015年に佐藤、比嘉、平野が相次いで離脱し、リリーフに脆弱性があったオフには3人の大卒社会人を指名するなど、足りない部分を大卒社会人で補おうとする動きが顕著に出ているのではないか。
大卒社会人がドラフトで占める割合が大きくなると、数年後に年齢層の偏りが生まれ苦戦するのは、今のオリックスを見ればなんとなくわかるだろう。
それでも、数年しかないチャンスをつかみ取り主力の座に上り詰めた選手も多いだけに、高卒中心の指名にシフトしたオリックスが今後どのようなドラフトを展開するのか?期待しかない!