ミッドレンジシュートを活かすには-プルアップ編-

1ヶ月ほど前ですが、Kirk Godlsberry氏による下記ツイートがちょびっと話題になってました。

話題になった理由は、3Pシュートに対するミッドレンジシュートのEFG%の低さとリム周りのレブロン・ジェームズの異次元なFG%でしたが、個人的に気になったのはミッドレンジシュートの見捨てられ方です。

昨今の風潮は3Pとリム周りのシュートを増やし、ミッドレンジシュートは減っていく傾向です。
この傾向の前提には、上述のような戦術を取ることで得点効率が高まるということがあり、これ自体には異論はないのですが、だからといってミッドレンジシュートを十把一絡げに減らすのはいただけないんじゃないかと思っています。

例えば上述の投稿ではエリア別のFG%を載せていますが、それ以外にもキャッチアンドシュート(以下C&S)かプルアップ(以下pullup)なのかといった、FG%を左右する要素はあるので*1、それらを考慮せずにミッドレンジシュートは得点効率が低いからよろしくないというのはもったいないでしょう。
ミッドレンジシュートの中でも得点効率が比較的良いセレクションや選手がいてもおかしくないですし、終盤の勝負所ではFG%の高いシュートを選択したほうが良いかもしれません。

大事なのは得点効率を最大限に高めることで、ミッドレンジシュートにそのポテンシャルがあるなら実践すべきです。
そして、ポテンシャルの有無は、ミッドレンジシュートをタイプ別に細かく分解して検討するべきです。

そこで今回はその一環として、ミッドレンジシュートを打つことで得点効率を高められそうな選手は誰なのかを見ていきます。


前提

上で触れたように、まずはミッドレンジシュートをタイプ別に分解して捉える必要があります。
今回は下記分け方を軸に検討していきます。

C&S or pullupで分ける
└今回はpullupに絞って検討します。理由は後述。

今回C&Sをスルーする理由ですが、端的に言うと分析に必要なデータが集まらないからです。

というのも、C&Sは個人的にチームのボールムーブメントで作り出すシュートと捉えていて、どこで打つのか、シュートをリリースする所要時間はどれほどなのか(短いほどチェックされにくい)、24秒の残り時間はどれくらいか、といった情報が欲しかったのですが、公式サイトだとそれらを組み合わせた情報が公開されていなかったため、断念しました*2。

逆にpullupは個人の1on1(多くても2on2)のスキルに依存する部分が大きいと考えていて、これは上述のような要素には影響されにくいと予想されるため、今回の検討対象にしています。

また、データはNBAの2018-19レギュラーシーズンを対象にしています。
対象選手は2Pのpullupを170本以上打っている選手です*3(人数は72人でした)。
(pullupのデータは下記参照)。

元データやコードは下記ページに格納しています。

分析結果

分析の前に、今回の得点効率の指標を決める必要があります。
今回は扱いやすさなどからEFG%を採用します。

まずは選手のpullupのEFG%*4と所属チームのEFG%との大小を比較したのですが、pullupのEFG%が所属チームのEFG%を上回っている選手はいませんでした

「やっぱりpullupのミッドレンジシュートはダメだなヽ(`Д´)ノプンプン」と結論づけるのは簡単ですが、より細かく見ていくのも悪くないでしょう。
例えば、24秒の残り時間ギリギリのタイミングのチームのEFG%と比較してみるのは面白いかもしれません。(pullupのミッドレンジを打つのは、クロックギリギリのタイミングが多いでしょうし。)

NBAにはショットクロックの残り時間ごとのシュートの記録があるため(下記URL)、これを利用してみます。

まずは残り時間は4~7秒のチームのEFG%との比較です*5。
下記選手がチームのEFG%を上回っていました。

画像1

対象選手が5人だけとなっており、中々少ないですね。
KDやカイリーがいるのは確かになといった印象ですが、個人的にカワイ・レナードがいないのは意外です。

残り時間0~4秒も見てみましょう。

画像2

めちゃくちゃ多いですね(43人でした)
ここまでショットクロック的に追い込まれる方が悪いといえば悪いのですが、ショットクロックギリギリの状況ではpullupも悪くない選択肢になるかもしれません

結果をまとめると下記のようになります。

・pullupのミッドレンジシュートは、トータルで見ると効率は良いとは言えない
・ただ、ショットクロックが残り少ない中では他の選択肢より得点効率が良くなる可能性はある*


*言い方はあれですが、他の選択肢よりマシというイメージですね。

今回は以上ですが、他にもC&Sだったり、試合の終盤だったりと様々なシチュエーションでミッドレンジシュートが活かせるタイミングがあるような気がしているので、継続的に分析していく予定です。乞うご期待。


Twitterアカウントです。
ちょっとした集計や分析なども載せているので、フォローしてみてください。


(敬称略)

*1
例えば2PAの中でC&Sが占める割合は20%弱ですが、3PAだと70%強でした(データは下記を組み合わせました)。
リム周りの合わせのシュートを踏まえても、2PAの方が不利な状況でシュートを打っている可能性は高いです。

*2
NBAにも問い合わせをしてみたのですが、いただくことはできませんでした。
【追記@2019/10/23】
返信をいただき、下記のようなページがあることを教えていただきました。
個々のシュートの種類や成否などが記されており、実際の映像とも結びついていて、しかもshotchartも様々なタイプが作れるのでとても面白いページです。

*3
ゴール近くのpullupもカウントされている可能性はありますが、クリント・カペラなどのFGAが極めて少ないことから、いわゆるミッドレンジシュートのpullupと仮定しています。

*4
実際はFG%と同値になります

*5
プレイヤーのpullupのEFG%に関してはデータがないため、ショットクロックごとの数値ではなく、全体の数値を利用しています。
本来はショットクロックごとの数値を持ってくるべきですが、pullupに関してはあまり影響がないと想定して、こういった形にしています。


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