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「死」についてどう思います?~読書感想『その日のまえに』~

 こんばんは。お久しぶりです。
誰に対して久しぶりと言っているのかわかりませんが、ものの見事に1か月以上投稿しませんでした。こんなもんですかね。笑
もし。もし、いるとは思いませんが、前回の自己紹介で続き気になるなって思っていてくれていた方には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
意外と「スキ」が多くて、ピコピコ来る通知がうれしかったんですけどね。

 さて、今回書こうと思いましたのは、或る小説を読んだためです。

『その日のまえに』重松清

 読書は昔から結構好きでして。ただすごく波があるので読むときはすごく読むけど、読まないときはさっぱりって感じです。
先日たまたま書店に立ち寄ってふらふらと本を探していました。すると、帯にこんな宣伝文句がある一冊が目に入りました。

『極上の一冊!!これは泣く!!』

 病んでいるのでしょうか。思わずその重松の本を手に取ってしまいました。笑  重松清は学生の頃の国語の試験問題でよく出てきた印象があります。小説の文章題で出てくるんですが、読み終えた後、ほっこりしたり、悲しくなったり、喪失感があったりして、問題どころではなくなっていた覚えがあります。学生の私でさえそんな気持ちにさせるのですから、やはり重松清の心理描写や情景描写はさぞ素晴らしいのでしょう。読後感のぼわーっとした感じは本当に言葉で言い尽くせませんし、何というか、自分事のように感じさせる力がある気がします。

 今回の『その日のまえに』。これは全7作品の連作短編集となっており、表題にもなっている『その日のまえに』は、『その日』『その日のあとで』と共に三部作になっています。

 全てのお話のテーマは「死」。それぞれの作品で、登場人物が死と向き合うことになります。普段、死を身近に意識しているという人は多くはないのではないでしょうか。この作品の登場人物たちも大方そうです。何気なく生活していると、起きて仕事や学校に行き、誰かと他愛もない話をしたりしなかったり、そして何かを食べたり食べなかったりして、眠りにつく。そしてまた目を覚まして、、。こんな毎日が繰り返され、平穏に幸せに、そして永遠に続くのかと錯覚してしまいそうになります。少なくとも私はそうです。
 しかし、この本の主人公たちは、「死」が突然意識の範疇に入ってくるのです。絶望、喪失感、不安、寂しさ、恨み、悔しさ、運命、永遠。様々な感情、そしてキーワードが意識の周りをぐるぐると周り、飛び交い、ちらつくのです。
 私は自分に置き換えて考えようと思ってもなかなか実感が湧きません。でも、この登場人物たちの心になって疑似体験は十二分にできました。本当にぽろぽろ泣いてしまいました。お話ごとに「そうかぁ、そうだよなぁ。」て考えてしまいます。何を「そう」と思っているのかはわかりません。でも、確実に自分の体感として、「死」や「命」を感じることができました。

 私には、「死」について一つ考えがあります。それは、「死」というものは、波の立っていない水面に石のようなものが投げ入れられることと似ているということです。人々は、その投げ入れられた石の大きさと石との距離に影響されます。石の大きさは亡くなった人の知名度。距離はそのまま身近さです。有名人が亡くなるとその石は大きな波紋をつくり、遠くの人の心の水面さえ揺らしてしまいます。芸能人や有名人でない人の死はそう遠くまで波紋を作らないでしょう。でも、身近でそれを「受ける」人は石の大きさなんて関係ありません。水面は大きく動揺してしまうのです。それでも波紋は徐々に小さくなっていき、次第に元の穏やかな水面に戻っていくのです。

 少々暗くなってしまいましたが、この小説は最後に喪失感と、そして希望も与えてくれます。大切に生きようと思わせてくれます。そして、考えさせてくれます。あえて何をとは言いませんが。

 泣きたいな、とか、人生楽しくないな、とか思っている人は是非。

極上の一冊です。これは泣きます。

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