久しぶりにカラヴァッジョの話を~〈キリストの埋葬〉メモ
昨年から楽しみにしていた展覧会はいくつかある。中でもとりわけ思い入れが強いのが、秋に開催予定の「キリストの埋葬」展だ。
カラヴァッジョがローマ時代に手掛け、当時から高く評価された祭壇画〈キリストの埋葬〉が、日本に来る!
知った時には、ゾクゾクした。
十字架から下ろされたキリストの遺体が、今弟子たちの手で運ばれ、葬られようとしている。
だらりと下がった腕に、太く浮き上がった血管が、生々しい。(カラヴァッジョらしい点の一つ)
その体つきは、まるで彫刻のように逞しく、下から見上げる構図もあって、見る者にもその重さが伝わってくるかのよう。
舞台を示すのは、登場人物が踏みしめる墓石の角のみ。背景など、余計なものは一切排除され、「死」という出来事、そして悲しみが、くっきりとストレートに伝わってくる。
その約80年前にフィレンツェで描かれたポントルモの〈十字架降架〉とは、実に対照的だ。
この通り、雰囲気は対照的だが、両作品ともに、キリストの描写には、ミケランジェロの〈ピエタ〉が影響を与えていると言われる。
そもそも、キリストはなぜ死んだ、いや、死ななければならなかったのだろう。
それは、人々の罪を贖うため、それも、磔刑という、当時もっとも過酷で苦しい刑でなければ、つりあわなかった。
絵の前で祈る人々は、その事を思い起こしていたのではないだろうか。
祭壇画は、イメージを通して、信仰を掻き立てる装置でもある。
カラヴァッジョ作品の、時に忌避されるほどのリアルさは、今回は目的に合致したと見なされたーーーそう言えるだろう。
人として死んで葬られたキリストは、3日後に復活する。
明日はその「復活祭(イースター)」だ。
大事な祝日のはずなのだが、この状況である。ホームページをチェックしたら、教会は信徒の立ち入りを既に禁止していた。
仕方あるまい。
神様の方でも、わかってくれよう。
どうか1日も早く、騒ぎが終息することを。
クリスマスにはちゃんとミサに行けるように。
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