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川瀬巴水展内覧会へ

今日は、SOMPO美術館の川瀬巴水展の内覧会へ。
「新版画」については、先日、吉田博を知ったばかりであまり詳しくなかったが、それだけに余計内容の濃さに圧倒された。
新版画とは、一言で言えば、江戸時代の浮世絵技術のリバイバル。江戸時代と同じく、版元を中心に、絵師、彫師、摺師の分業で制作する。
しかし、伝統をただ守るだけではない。
絵師の方で洋画の技法を取り入れたり、摺る際には、バレンの跡をあえて残すなど、それまでにない工夫を取り入れ、表現の幅を広げている。
題材についても、巴水は伝統にとらわれることなく、自分の琴線に触れたものを選んでいる。


同じ風景版画を手掛けた画家でも、吉田博は自然の雄大さや、細部の緻密さ、質感を描きわける描写力の高さに圧倒されるような作品が多い。
対して巴水は、しっとりと染み込んでくる情感がある、と言おうか。
本当にその場に立って、風景を見ているような。
雨や雪、風の多彩な描きわけなど、広重に似ている要素もある。(本人には追随しているつもりはなかったようだが)
しかし、そのために後期には、「広重の真似」とまで叩かれてスランプに陥ってしまった時期もある。
そんな彼を、初期から支え、励まし続けた版元が「新版画」の中心人物、渡邊庄三郎だった。
関東大震災で画帖を失った巴水を励まし、旅行に行くよう勧めたのも渡邊だった。
旅行は、巴水にとっては創作のエネルギー源だった。
またやり直せば良い、と励まし、支えてくれる渡邊の存在は、どんなに大きかったことだろう。
川瀬巴水が亡くなった5年後に、渡邊もまた世を去る。
二人の結びつきを、バディ物っぽく扱うのも一つの手だろうか。

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